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69.国境要塞攻撃命令

前回のあらすじ:みんな大好き松竹特撮。最後救いナッシング(ギララ除く)

明朝早出のため前倒しで投稿します。後、この物語の舞台の地図を載せます。


挿絵(By みてみん)



 初夏。ミデティリア皇帝は、ダキンドン女王と連名で東国境の封鎖を宣言し、国内のボーコック出身貴族の帰国を促した。ボーコック派達は兼ねてから「我々は強制的に連行されたのだ!」と被害者意識を主張していたので「では帰れ」と宣言した。

「今帰っても生活基盤が無い」等、今更ながら見苦しく抵抗したものの、最後は一族諸共手足を縛ってノキブル川の反対側に投げ込んだ。

 奇妙な事に、その後それらの者達が消え失せても、両国とも何も困る事が無かった。


 そして4街道を抑える城を建設した。先に完成しているサミット城を中心に、同様に街道を見下ろす丘に築城した。特に丘陵の斜面に「上り石垣」と言われる石塁の防壁を築き、突破を困難にした。

 天守は三層と小型に上げられた。それは正に豊臣秀吉配下が「唐入り」の際築城した「倭城」であった。

「待たれよ」

 城塞建築計画に舞ったがかかった。ダキンドン王国で国境を預かる貴族達であった。

「護児城がいかなる性能があるかはわからぬが、あまりに低い防塁、木と土による脆弱な防壁や望楼では、まともに敵を防げるのか?」


 御尤もな意見だ。こちらの世界では、火薬がまだ無い。

 故郷の地球だったら十字軍遠征により火薬がアラブからヨーロッパに齎されたのだが、こちらのアラブ的世界はグランディア大陸より海を挟んだ南方大陸にあるため、接触が無い。そのため大砲もまだ無い。

 威力の弱い攻城兵器のお蔭で、石造りの、意外と脆弱な直立した城壁こそが守りの要なのだ。因みにある程度の火魔法なら防げる様だ。

 試しに惣構えの外れに隅櫓を建ててマギカに全力で粉砕してもらった。王宮魔術師が追放したくなる程の爆発だったが、耐えた。何故かマギカは安心し「御屋形様のお城に勝っちゃったら嫌われちゃうし!よかったわぁ~」とか言っていた。そんな事で嫌いになるもんか。


 自分達の守る城の強みも解らなければ、戦いを有利に持っていく事は出来ないだろう。

「貴公の仰せられる事にも一理あります。むしろこの城に脆い点があれば、今の内に補強すべきです。歯牙にも掛からなければ従来の城を築くべきです。一度お手合わせすべきかと」

 ニヤリと笑って強者を自負する国境の貴族を見る。

「面白い。『魔導士殿』とは一度お手合わせ願いたかったぞ」向こうもニヤリと笑う。

「計画通り」ちょっとマイク付きヘッドホンが欲しい。

「但し私ではなく、我が城の主将とお手合わせ願いたい。新進気鋭の好青年だ」

「青年…子供と戦えと仰せられるか!」

「胸をお貸し願いたい。真直ぐな若獅子故、多少世間の厳しさを教えて頂ければと」

「宜しい。そこまで仰せられるとは、このブコー、全力で叩き潰して差し上げよう!」


 相手はダキンドン東側領、ボーコックと街道で繋がる要衝を預かるブコー伯爵。対イテキバン作戦の要人である。良い関係を築きたい。


「但し、ボーコックの難民が往来している可能性があります。参加者は天然痘ワクチンの接種は受けて頂きます」

「え”?」伯爵軍は、しばし揉めた後、渋々受け入れてくれた。仕方ないからミナトナのミルクと菓子で効果を高めたら「妻にも持って帰ってやりたいんだが」だと。現金だなあ。ええ、上げましたとも。

 ダキンドンの軍神も、注射と妻には弱かった。


******


「俺が抜けたら城の守りはどうなるんだよ!」

「お前が居なくなって城の守りが成り立たなくなったら駄目なんだよ!ヤミーのご飯食べてる内はいいけど外でヘンな物食わされて寝込んだら城はお終いか?」

「確かに…国際会議のメシはイマイチだったけどさ」

 各国一流と言われる料理人が目指す方向は、必ずしも「美味」ではなかった。豪華さや珍しさで会食者を圧倒するためのものだった。

 それ故城からの魔物料理は出さなかった、各国の王宮料理人を敵に回すから。今度こっそり各国を訪問して教えてやろう。豪華料理にウンザリする被害者をなくすために。それは兎に角。


「ダンの代わりを務められるのは、ゲン位か?」

「う~ん。出城とここで交代して守ってるけど、魔物との戦いで大人数を指揮できるのはそうかな」

「じゃあ、いい勉強だ。城は私が守る。ゲンも他の連中も、一度ブコー伯爵と戦ってこい、胸を貸して貰え!」


「ぶ、ブコー伯?!」「知っているのかクッコー!」

「ああ。

 ブコー伯爵!それは古代ダキンドンより王国東の国境を守り、不埒な行為に及ぶボーコックの盗賊団や、ダキンドンに揺さぶりをかける諸侯の工作兵を一蹴し、下手な言い訳をさせぬため一人残らず狩りつくす武功をもって知られた一門!」

「古代って何だよダキンドンそんな古くないよ」

「なお、現在でも『ブッコケタ、あ、またスットンダ』という囃し言葉はブコー一門によって首をすっ飛ばされた賊を揶揄した事に由来する。ミン〇ー書房『見よ東方は赤く燃えている』より!」色々交じってんなあ。


「そのブコー伯とダン殿が戦うのか…」

「クッコ先生!そんなスゴい相手なんですか?」ダンも教練の教師には生意気な口は叩かないな。

「ダンでは勝てぬ!」ああ、率直に言ってしまうあたり率直なダンの教師だな。


「ふっ、面白れぇ!」ダン、できらぁ!とか言った後にあの伯爵と?!とかページ逆にした様な事いうなよ?

「これからやって来る敵はあの奴等だ。俺たちの大事な弟達を、妹達を疫病で殺そうとした、絶対に許しちゃならねぇ外道だ!敵はどんな手でも使ってくるだろう、俺達もどんな手を使ってでも皆殺しにしてやらあ!」


 彼の言う事は一面に於いて正しい。しかし、その反対側に於いては、そうではない。

 甘いかもしれないが、そうなって欲しくは無い。彼らには殺意に飲み込まれて欲しくは無い。殺意に染まるのは私だけで充分だ。


******


 ダキンドン王国のボーコック街道、ボーコックで言う「下り坂」。因みに連中の価値観を無視して地理的に言えは、ボーコックの方が標高が低い。そのノキブル川東の丘に完成した「一関城」。守るはダン以下200人。私はいない。

 攻めるはブコー伯爵以下1万人。

 この報せはダキンドン、ミデティリア、フロンタ、そしてドワーフの里にも伝わった。


 ボーコック街道は東西を貫く。一関城はその北の丘に位置し、街道に東西二か所の門を設ける。

 攻城側は夜陰に乗じて丘を登る作戦を取ったが、僅かな見張りに責められ撤退する。この時点で攻城側の一部は退場。


 生き延びた先遣隊の報告から、斜面に弱点を見つけた攻城側が翌朝攻撃する。しかし。

 弱点の先には石垣が1m聳え、その先から矢が…ではなく、中に青い液を詰めた袋が飛んできた。弓矢ではなく、スリングショットみたいな物で液の入った袋を結構な距離を飛ばしている。これを浴びれば退場だ。


 斜面には山上へ続く昇り石垣が築かれ、防衛線を成していた。

 更にその上に聳える二重櫓からも青液袋が投げつけられた。もしこれが岩であれば、矢であれば。

「この短期にあんな石垣とは、あの魔導士は反則過ぎる!」と悔しがるブコー勢は一時撤退する。

 そこに街道の見張りが「敵勢街道西から騎馬で東進!」と報告が入った。「来たか!」


 丘を降りた所に街道の城門を出て馬に乗ったダン以下が下山したブコー勢へ肉薄した!

 しかし下山したばかりとはいえ自らの土地に精通するブコー勢は見事な陣を敷き、籠城勢の青液攻撃を許さない。全て楯で弾かれる。


 攻城勢の見事な防戦陣地を悟ったダン達は反転し城門に戻る。

「門を落とせ!少しは風穴を開けよう!無理はするな!」ブコー勢が街道を進む。

 しかし攻城勢が見た城門は、木で作られた脆いものかと思われたが、実は意外に堅固なものだった。高麗門、そしてその先に聳える、明らかに腑射装置である窓が付いた、右手奥に横たわる櫓門だった。


 ブコー伯は、山上に見える石垣と櫓に目を奪われ、街道に建設中の高麗門に目を奪われ、屈折して聳える櫓門に注視していなかった。天守は権威の象徴であり、堀が動線であり、門は囮、櫓が砲台であった。

「一旦引け!今は引け!」しかし下山してなお勢い付いた攻城勢は前のめりになっていた。

 ブコー伯は自らが門との距離を空ける堰となり「引けー!引けー!」と絶叫した。

 そこへ、街道の奥から少年達の騎馬が襲い掛かった。門は馬出になっており、反対側の門から遊撃隊が出陣したのだ。

 数の上では圧倒的であった攻城側が、山麓の街道に封じ込められ、前と上から攻撃を受けた。

「伯爵!私が殿となります!一旦引いて指揮を!」部下が進言する。

「かたじけない!逃げるぞ!逃げろー!みんな逃げろー!」

 伯爵は、敢えて不名誉な逃げ役を宣言して乱れる友軍を反対方面へ導いた。

 緒戦は歴戦の勇者の敗退であった。


******


 一日の間に、ブコー伯は城の縄張を探った。築城計画が遡上に上がった時には、初期構想を共有していた。しかしブコー伯が異を唱えて以後、縄張図は隠され、改良された。伯爵の抗議を演習で反証しようという我等護児国側の策謀だ。小癪な、と思いつつ伯爵は縄張調査を行った。

 しかし、城内に侵入した筈の間諜は帰ってこなかった。


 同伴した者達が外部から見た図から凡その縄張図が作成され、圧倒的な戦力をぶつけた作戦が実施された。


******


 大軍で城を包囲し、なお余る軍勢で丘を登り、城の背面となる北側を攻撃した。

 しかし城の背面は解りづらい凹部になっており、攻城側は思わぬ十字砲火を受ける。

「怯むな!力で押せ!」石垣に取り着いた攻城側は、演習だと言うのに怪我人を踏み台にして城内に乱入しようとした…その時。

 そこは「低いな」と思われた、三重天守と、その左右に延びる二重の小天守の下であった。出窓の下から覗く腑射装置が攻城兵を歓迎した。


 忽ち一体は青い「負け印」の液が飛び散り、攻め入る兵と退避する兵、そして踏み台になる兵で怪我人続出となった。


 旗色の悪いブコー伯は部下に命じた。「火薬弾用意!」

 部下たちは赤い玉を取り出し、頭上の城壁に向けて投げた。地に落ちた球は激しく赤い水を飛び散らせた!

 これは演習前に「イテキバンの兵器、火薬弾です。石垣や城壁は崩せませんが、城内に投げ込む事が出来れば、籠城軍を殺傷できるものです。無論こちらも防備を怠っていませんが」と護児国勢から渡されたものだった。

「赤い水とはいえ、これがもし火炎であれば…」一瞬その威力を想像し、ブコー伯は恐れた。しかし、

「城内の敵を挫けば!行ける!!」

 攻城勢は一斉に赤い玉を投げ、それらは石垣を赤く染めた。

 しかし城内に投げ込まれた玉は…長い棒の先に、手の平の様に取り付けられた網に受け洩れられ、そして投げ返された!丁度ラクロスの棒、クロスを大きくした様な道具で投げ返されたのだ。

 攻城勢は自ら投げた赤い玉の水を浴び、リタイアする事となった。

 そして退却する勢いと攻め込む勢いの間で更に怪我人が出る事となった。


 伝令の報せを受け、ブコー伯は「演習一時中止!」と、白旗を掲げ、護児国から借りた作戦中止の花火を上げた。


「頃合いか」

 護児城を守りつつ、時間を遡って演習を眺めていた私は、山麓に降ろされた怪我人を「時間逆転チェースッ!」で治癒した。彼らは仲間となる貴重な戦力だ。ダキンドンを守る仲間だ。万が一の事も許されない。


 なお、退却軍と怪我して瞬間移動させられた兵達の先には、城から駆け下りた子フェンリルの一団が待ち構えていた。

 更に、この演習戦の中で、攻城側の歴戦の騎士は、城を守る少年達に一度も色付きの液を叩きつける事は出来なかった。


******


「無念ながら敗北を認める」

 ダキンドンきっての軍人、ブコー伯爵が敗北を認めた。

「あのまま戦っていても、我が軍はイチノセキ城を包囲して籠城戦に持ち込むしかなかった。そうなれば長期的には勝てるだろう。我等がボーコック軍であればそれも一手。しかし、もし我等がイテキバンとやらの、補給線が無い軍であれば、籠城は有り得ない。

 逆にダキンドン本国からの援軍を前に撤退を余儀なくされたであろう。

 条件的に敗北だ」聡明な判断だ。

 観戦武官として参加したクッコが唖然としていた。それを見てダンが

「クッコ先生…俺、勝ったんですか?」

「信じられないけど、ダン、あなたの勝ちです!」

「「「おおー!!!」」」城の子供、もとい若者たちが叫んだ!

「やったぜ!兄貴!」弟分で、街道防衛の遊撃隊長を務めたゲンが叫んだ。

「勝鬨だ!」「「おー!」」若者たちがいきり立つ。

「馬鹿野郎!!」


 ダンが叫んだ。周りは静まった。ダンはブコー伯爵に向かい、跪いた。

「有難き幸せ!私達若造は、歴戦の勇士たる伯爵様に認めて頂く事が出来ました」

 一同は頷いた。

「これは誇ってもいいんだ!でも!」

 城のみんなも、ブコー伯とその麾下もダンを見つめる。

「俺達の敵は、女の子も小さい子でも、容赦なく殺しに来たんだ!残酷で絶対に許しちゃいけない殺し屋の集まりだ!」

「少年よ、いくらなんでもそれは戦の法を越えた…」

「伯爵様!既に俺達は奴等に疫病をバラまかれたんです!」「何?!」

「奴等は、俺達とあまり変わらない歳の女だったのに、小さい子に咳や唾を浴びせたんです!」

「何と…護児城に攻撃を仕掛けたとは聞いていたが。

 敵は、軍同士の戦いではなく、女子供を…殺しに…護児国王のいう事は、真実だったのか」

「イテキバンは侵略者以下!人間にとっては悪魔だ!俺は敵を容赦し、俺の仲間たちを守れるほどカッコよくは出来ていない!」ダンは心の中に、怒りと憎しみの炎を燃やしていた。


 かくて、僅かな戦力で歴戦の勇者と万の大群を撃退し、華々しい戦果を挙げた筈のダンの初陣は、重く苦しい幕を上げた。

 一関城内では、上り石垣の反撃、天守下の帯郭での挟撃戦、子フェンリルによる追撃を行った部隊長集め、更に演習させる事にした。

 更には、今後ボーコックに面して築かれる城の支援として、国境の諸城に派遣する事とした。

百の単位で万の敵を守れるかの是非は兎に角。色々陽動とかすれば一時的には優勢に立てるかもです。

特撮要素よりもアニメ要素マシマシでした。


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