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67.大爆発!捨身の少年ふたり

前回のあらすじ:「岡本喜八は特撮に入りますか?」「その予定はありません」


 今回も嵐の前のラブ話です。

 護児城の外、各国間の外交は激しく展開されていた。いい意味でも、悪い意味でも。

「こんちゃっす」「それが千年の歴史を誇る皇帝の挨拶かよ」

 城の物資を求め金貨を積んで来た列車の最後尾に皇帝、いやキオミルニさんが乗って来た。もうキオミーでいいや。こんなんで帝国大丈夫か?

 非常に残念な事に、この調子で今まで牽制しまくっていたフロンタ王国にも往来して、諸々の問題を解決して来たから大したもんだ。


「いやー、俺の息子をダキンドンの聖女様に合わせたくってさー」

「大変言い辛いが、オーティは私に懸想してしまっている」

「国王様程の徳を積まれた方であれば左様にもなりましょう」何で第一王妃様もいるんだ?

「すみませんウチの御屋形様は助平で」何でステラもいるの?

 ここは例によって覚悟亭の奥座敷、中庭の先に天守が聳える。亭主も女将も皇帝夫妻の来店にひたすら怯えている。すまないねえ。新入りと思しき少年が淡々と日本酒、純米吟醸を運んで来る。


「単刀直入に言って、オーティは自己評価がすこぶる低い。

 彼女の心を開かせるには、おべんちゃらでは駄目だ。彼女の努力や誠意を認め、尊敬する事から始める事だ。後は知らん」

「最初の所は大丈夫だ。俺の息子も中々に女を見る目はしっかりしてる。流石俺の息子だ」

「どうだか」皇妃キツイ。

「だが何であのやらかし姫がイケメンでもないアンタに懸想したんだかなあ」

「あなた!ものは言い様というものが!」何気にヒデェな第一皇妃?

「私の主人は言い様でも繕えない不細工ですが」とステラ。更にヒデェ!

「こ、これは御無礼を…でも、国王様には誰にも真似できない、愛されるお力がございます」うほ、有難い。

「それ。そのブサモテ秘術を、俺の自慢の第7皇子に授けて欲しいんだよ」

 第7皇子かあ…随分がんばったもんだ。それも皇帝の義務ってもんだな。

「ブ…ブサモテ…っぷっぷ」ステラそこはスルーしなさい受けないで。皇妃、もう笑い飛ばしていいから笑い堪えつつ頭下げないで。

 新入りの少年が一同のお銚子に冷えた純吟を注ぐ。


「オーティは真直ぐな子だ。バカが付く位真直ぐだ。

 だから誠実に接すれば、時に彼女が調子に乗ったり自分の狭い了見に捕らわれた時に、ビンタ喰らわす位に厳しく接すれば、心を通わせる事が出来ると思う。出来るかな?」

「はてさてうう~」「茶化すなって」


「まあ、接する方法とか小技云々じゃなくって、皇子がどんな人物かっていうのが一番大事だ。

 オーティは私達と一緒に、小さい子供達のおしめを替えたりするのも厭わない、素敵な女性だ。皇子はそういうのは大丈夫かな?」

「だってさ。大丈夫だよなあ~」

「はい!」奥で皿を洗っていた少年が元気よく答えた。解っちゃいたが小憎らしい仕込みだ。

 怯えていた亭主に頭を下げ、私に酒を注いで少年が頭を下げる。

「ミデティリア帝国キオミルニ31世の第七皇子、ロボシと申します。

 グランディア大陸に平和をもたらした偉大なる王の杯に酒を注げる栄誉に、感謝いたします」

 皇帝夫婦はニヤニヤ、ステラは口をパクパク、亭主夫婦はガタガタしていた。

 他の客は、我関せずと飲んでいた。皇帝が敢えて排除しなかったのだ、それが正解だ。


「皇子殿下」「ロボシとお呼び下さい」皇帝夫婦が頷いて同意する。

 席に招いて、酒を注ぐ。イケる口らしい。

「ロボシ君。君は、オーティが好きか?あれ結構バカだよ?」

「大好きです。各国の王族貴族の中でも、オーテンバー様程純粋で実直、思い遣りが深く優しい方はいません」

「ほう。どんなところが?」

「もし私が彼女であれば…

 枢機卿を制圧した時点で総本山に謝罪を求めます。

 そして総本山のクーデターを未然に鎮圧し、逆賊を処刑し領地を没収します」

「手堅いですね」と、私の杯を渡してロボシに酒を注いだ。

「手堅いかも知れませんが逆に大失敗です。

 その時点で人々の心は私から離れたでしょう」「おおう」

 キオミーがニヤニヤ満足そうに笑ってやがる。


「あの一連の騒動で一番大切な事は。

 数年来この大陸で起きている不作、それに伴う人々の不安を、いかに和らげ、暮らしを安堵させるか、です。

 それを女王と、その後ろに立たれていた国王様が成し遂げたのです」

 よく見てるなあ。その通りで、今イテキバンと対峙出来る様になったのは、教皇を、創世教会を味方につけたお蔭なんだ。

 対立したり混乱したりしてたら、そこから天然痘が蔓延して戦争準備どころではなくなっていた筈だ。


「私は、あの純粋なオーテンバー女王、いや聖女オーティの傍に立ちたいのです。子供達の手を取り、巨悪にひるまない彼女を助ける剣になりたいのです!」


 日本酒飲んでちょっと酔ったのか、顔を赤くした美少年は、オーティへの愛を熱く語った。彼の言葉には嘘は無さそうだ。親父と違って。

「素敵~」ステラも酔ってないか?

「うん。じゃあ、何だ。孤児院とか下水整備の仕事から初めて、オーティに認めてもらったら?」

「はい!」


 皇子の返答と対照的に、皇帝夫婦は難しい顔をする。「やっぱそうなるか~」

「帝都の衛生事業、ですか」「流石お見通しですね」


 各国に宣伝した防衛・防疫事業の内、やはり利益に直結しない都市衛生部門はどこも停滞していた。それはそうだ、例え金を積まれても、一番汚い仕事を誰がやるか。

「私はやります。帝都で、そしてその実績を持ってオーテンバー様の王都へ赴き、その上でお優しい王女に愛を捧げます!」

 おお。私も、ステラも、亭主夫婦も彼を応援した。


「帝国の皇子が屎尿の世話ですか…」第一皇妃が嘆いた。

「それをしないで国難が去ればそれに越した事は無いでしょう。しかし今はそれを成すべき時です。直接手を下さずとも、責任を持って指揮する事で、帝国も王国も救われるでしょう」

「母上!私は何も厭いません!」おお、いい子だ。

「その通りかもしれません。あの聖女だったら率先してやりそうですね。ロボシ、助けておやりなさい」

 諦めた様に皇妃が言い放った。

「じゃ次は国王陛下の番だ。ロボシを上手く聖女様にアピールしてくれ」

「応!」「え~」何ステラその顔。


******


 月一度のペースで行うダキンドンとの連絡会で

「王女様に婚姻の申し込みがありまして良い縁談かと」

「バロンパンチ!!」

「なじぇ~!」私がオーティーにブン殴られた。

 テイソ卿もシラーっとした目でこっち見てる。

「ほら」ステラも冷ややかに見てる。

 キオミー、ロボシ、ゴメン。


******


 顛末を皇帝親子に話すと

「やはりこういう問題は自分で臨まねば」と誠実ロボジ君は決意した。

「あの~」と第一皇妃。

「そもそも片思いの殿方から別の殿方を紹介される程の屈辱は無いのかと」最初からそう言えよ皇妃様ェ。

「ソウヨネー」あんたもよステラ!

「次の連絡会議で私がダキンドンに駐在し、都市衛生について学ぶ旨申請します」

「最初っからそうしてよ殴られ損じゃないのよ~」「あー、スマン」


 結果、オーティはロボシの駐在を渋々認め、早速彼は大聖堂の孤児院を訪れ、水廻りの実地調査を始めた。そして、子供達と生活を共にした。


「帝国の皇子で私の夫の座を狙っている奴なんて、あの子達の世話が務まるのかしら?」

「護児国王様のトンチキは兎に角」トンチキって何だよテイソ卿?!

「意外と、子供達と打ち解けていらっしゃる模様です」

 ロボシ皇子は頑張っていた。最初読み書きの教師として臨んだが、護児城譲りの教科書に目を回し、子供達と共に学ぶ側に座った。

 そして菜園の世話、幼児の世話、聖典の歌の練習に立ち会い、すっかり孤児達の一員となった。

「お前、なんか生意気なんだよ!」年長の少年が吠えた。あの、モネラを聖女と言った少年だ。

「何が、どう生意気なのかな?」

「そういうお偉く留まったところだよ!」

「では、何をどうして欲しいんだ?」

「俺と戦え!」もう完全な言いがかりである。

「いいだろう」


 少年はロボシに手も足も出ず、素手てボッコボコにされた。

「幼稚過ぎる、お前はただ怒りに任せて突っ込むだけで、動きの全てが無駄なんだ」

 ロボシ皇子の指摘は正鵠を得ている。

「畜生!お前みたいな偉そうな奴!」

「俺が偉そうだっていうならどこがどう偉そうなんだ?」

「お前は俺たちを見下している!」

「そんなつもりは無い。しかし、そうなのか?」

「そうだ!お前は全部、恵まれているんだ!」

「この孤児院の方が、俺の家より余程恵まれているぞ?綺麗なトイレに暖かい風呂。料理だって美味しいし無駄がない」

「当たり前だ!俺の愛するモネラ様が作ってくれた暮らしだ!」

「ほほ~おう?」ロボシ皇子ェ…やっぱりキオミーの子だ。

「じゃあ、そのモネラ様は、何も悪い事してない奴に殴りかかる男が好きな女なのか?」

「そ!そんな訳あるか!」

「じゃあお前のやった事をそのモネラ様にご報告申し上げてやろうじゃないか?」

「お前なんかにそんな事出来る訳」

「できるできないじゃねえ!お前が愛する女の前で、恥ずべき行為をした事を悔いろ!」

 少年の脳天に落雷の様な衝撃が落ちた。

「…その通りだ。俺は、モネラ様の名を汚しちまった。だが」

「言えよ。俺が悪けりゃ改める」

「解んねぇんだ。でもどっか偉そうに感じるんだよ」

「そっか。そりゃ仕方ねえな」ロボシは空を仰いで考えた。


「よし、お前、聖女モネラ様の騎士になるとかほざいてたんだよな」

 よく調べていらっしゃるな皇子様。真っ赤になる少年。

「そんなヘナチョコジャックで騎士なんかになれるか!俺がお前を鍛える。騎士ってのは厳しいぞ」

「くそっ!負けたまんまでいられるか!」

「よし!俺様はミデティリア帝国第七皇子、ロボシだ!」

「俺は、護児国の美しく慈愛に満ちた聖女モネラを愛する男、フラーレだ!」

 美しい男の意地がここに花開いた。頑張れ、孤児院のガキ大将。

 戦いを前に小話的なエピソードが続き、少々短めです。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みになりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「女王なのにバロンパンチ?」

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