64.イニロトナスの大予言
前回のあらすじ:宇陀の歌、熊野征伐の歌は「撃ちてし止まぬ」を入れないと歌として成立しないけど、当時の伊福部先生の心境はいかばかりだったのでしょうか。あ、本編全然関係ないや。
さて今回、スミマセン予め言っておきますが、終わりの方の長~~~い演説はほぼ元ネタ通りです。賛否あるかも知れませんが、こうさせて頂きました。
会議は終了し、決定事項を文書化し、明日、各国元首が署名する事を以て散会となる。
僅か数日で歴史的な国際条約第一号が締結される事となった。
そして、最後の晩餐会は、急遽護児国建国の祝典となった。
本丸御殿の一の間手前に、教皇と各国元首夫妻の席が設けられ、そこに私と10人の妻も並んで着席した。
ステラ、顔が真っ青だ。
「何で、子供達のお世話してる間に、私が王妃様なんて事になっちゃってんのかしら…」
王妃に相応しい盛り盛りのドレスに身を包み、ステラがパニクってる。
「こういうの嫌じゃったから故郷を抜けたんじゃが」
長身美女のベロー王妃をチラチラ見ながらアンビーが真っ赤になってる。アンビーはありがちな盛り盛りドレスではなく、結婚式同様Aラインの肩出しドレスを新調した。煽情的過ぎるので頭から長いヴェールを被っているが。背が低めのドレスも結婚式のスタイル同じ。
他の妻は盛り盛りスタイルだ。背の高いクッコやオイーダ、結構貴族夫人っぽくていいな。ドレスやジーミャ、イーナムは可愛くまとめたドレスに照れている。モエとマギカは何故か安定感がある。
中でもエルフの美貌を受け継ぐウェーステも一際輝きつつ、軽くパニクっていた。
「王家の舞踏会に夢見ていた私が…何故王家そのものになってしまったのでしょう?!」
「それはウェーステ様が決して希望を捨てず正しく生きられたからです!」「ありがとうクッコ、モエ!」「お綺麗ですう!」
「しかし貴方達も王妃なのですよ?」
「「はっ!!」」クッコとモエも硬直してしまった。
なおミナトナ達はいつものドレスで、気楽そうに飲み始めている。周囲の男たちの視線を集めて。「あの胸から疫病を守る薬が…」「しかし悪魔の様な角が」「それを言ったら牛も悪魔と同じになってしまう」「それよりあの胸から」「胸が」
「あらんまた目立っちゃってるかしらぁ」楽しそうで何より。
教皇が上段に上がり宣言する。
「我等グランディア大陸諸国は、この地イニロトナス山の護児城を、独立した国家として認める。そして、グランディア大陸に施した数多くの恩恵に深く感謝し、独立を祝い、互いに尊敬しあう事を誓う!」
すると、ドワーフ王ハンマーがこの超短時間で作ったとは思えない、魔石をちりばめたミスリルの王冠を皇帝に託した。
「我、創世教会教皇ディグニ49世は、大陸諸国の元首を代理し、貴国の独立と魔導士タイムを国王として認める」私は教皇に跪き、王冠を授かった。
御殿は再び割れんばかりの拍手に包まれた。
続いて、10人の王妃にも、枢機卿達の手によって冠が授けられた。
ステラに冠を授けたのはコンクラベ枢機卿。密にステラに「幸せになりなさい」と伝え、ステラは感極まって涙した。
アンビーは創世教徒ではなかったので、私が冠を授けた。
この夜は城の子供達も晩餐会に参加した。各部長も前列に制服着用で整列し、戴冠式を祝った。
テンポラの指揮で「収穫の歌」が演奏され、子供達が綺麗に、そして力強く合唱した。
そして私は外の空を見上げ、それに続いて参列者一同も外を見ると…
轟音が響いた。会衆は一時驚き、叫んだ。
しかし轟音と共に、空に球状の赤い光が広がった。その光は青に変わった。花火だ。
花火は続いて打ち上げられ、夜空に彩を与えた。
音楽は華やかな曲に変わり、花火とともに参列者の目と耳を奪った。なおその曲は、作品的にも興行的にも芳しくなかったけど野心的な作品だった、とあるSF映画のタイトル主題曲だったりするのは私だけの秘密だ。
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各国の元首夫妻は私に声を掛けてくれた。
「いやあ、あの光の玉には驚いたね。帝国にも売って欲しいね」「それは祝辞ではなく商談ではありませんか?」「商売が広がれば祝いの席も多くなるだろう?」「素晴らしい考え方ですね。では少々お高いですがお届けしましょう」「それが返礼なのか?」
何故かこの皇帝とは飾らない言葉で話してしまう。リベラ卿に似てるなあ。
「早々に商談を始めるとは、皇帝陛下。国王に対して失礼でしょう」と皇妃が皇帝に釘を刺す。
「いえいえ。皇帝陛下とのお話は、腑に落ちると申しますか、心を交わし合う実感が湧く、楽しい一時なのです」「心の剣を交わし合う、だね?」穏やかじゃないなあ。
「その通りです。聡明なる国王陛下との言葉の剣戟の末に、我が帝国は無用な混乱を避ける事が出来ました。今後とも、我が帝国と良しなに友誼を結ばれんことを」
皇帝がフランクな分、皇妃様がしっかりしているんだろうなあ。
皇妃は、10人の妻にも挨拶をしっかりとして、オレンジャー卿達に向かって行った。あの爺さんと、またハードな商談になるだろうな。
「先ほどは大変失礼した。今後とも貴国には決して害を成さぬ事を誓う」
「国の事を想えばの発言と理解します。いずれ、貴国の海や港を訪れたく思います」
「その時は歓迎しよう。以後、エンタと呼んでくれ」
フロンタ王、ボエジ5世はファーストネームで呼ぶ事を許してくれ、握手を交わした。
「マンナの御座所にも驚きましたが、この城は更に驚かされました。見たこともない壁画に天井、我が国にもこの様なお城があれば、どんなに素敵な事でしょう」王妃が続いて城の感想を…というかこれはおねだりだな。
「これ、今害を成さぬと言ったばかりだろう」
「いえいえ。王妃様、いずれ両国の友好の拠点としてフロンタの地に天守を上げさせて頂く事をお許し下さい」
「嗚呼素敵なお姿!やはり貴方様は王に相応しいお方!」
「貴女も、王女就任早々にこの国際会議を取り仕切られ、とても素晴らしい元首になられた。いつぞやの御無礼、平にご容赦を」
「そんなぁ~」デレデレすんな、我が国誕生早々国際的なスキャンダルになるぞ!
「あ!いえ…」持ち直したな?「あの時のお叱りがなければ、私は父諸共、いえ王国諸共亡んでいたかも知れません。愛の籠った私の体を貫いた激しい一突き、忘れた日はありませんわ!」言い方ぁ!
もうスキャンダル一直線だこれ。あ、背中が寒い。ステラ王妃が久々に冷気を発しておらせられる。空気を変えねば。いやその前に言うべき事がある。
「女王様。これから、また戦いになります」オーテンバー女王はハッとして
「また、色々な人が死ぬのですね…」
「心優しい女王。その優しさを、自国の民に向けましょう。敵への情けは勝利が見えた後で宜しいかと」
「私、貴方様とともに戦いますわ!」やめて食いついてこないでそんなに近づかないで背中が寒い!
「ステラ王妃、今日は一際ステキですわ!これからもお互い国のためにがんばりましょうね!」
「へ?あ、は、はい!」流石天然オーティ。ステラは改めて自分が王妃になった事を思い出した。そのせいか一瞬でガチガチに緊張してしまった。
お義父さんのハンマー王は…ダキンドンで生産が始まった若いウィスキーを飲んでいる。リベラ卿が潰されそうだ。助けに行かねば…と、お義母さんが王を止め、その隙にリベラ卿が逃げた、よかったよかった。あ、お義母さんが来た。彼女も注目を集めている。特に男性陣に。今日も黒を基調としたドレスだが、随所に金属や宝石の輝きが煌めく豪華なものだ。
「国王陛下、戴冠おめでとうございます」
「素晴らしい冠を頂き、心から礼を申し上げます。冠に負けない王にならなければ」
「もうすでに立派を通り越して誰も真似できない王になりょうた。娘もあたしと同じ、王妃になってしもたなあ」ステラがアンビーの肩に手を載せる。仲良しさんだな。アンビーは真っ赤だ。
「あたしゃこういうのは苦手じゃ」
「もう苦手じゃ済まないんよ。しっかり国王様を支えて、大仕事を成し遂げるお手伝いせんとな」
「そっちゃあ任せい。あたしの仕事はきっちりやり遂げるでぇ!」
「あとは、大陸の王妃に相応しい言葉を身に付けなさいな」と軽く笑った。
「どうしてこうなった!」「田舎の農夫の妻が、何でこんな立派な物頭に載せてんのかねえ」「王妃様になっちゃったよ」「信じられない!」心ここにあらずの姐さん組。もう姐さん組じゃなくて王妃様組だな。フォローしよう。
「みんな、外の席だけキリっとしていればいいよ。お城の中では、いつも通りだ。子供達のために頑張ってね!」「「「「ははははいい」」」」
彼女達がボーコック出身なのはあまり知られていないが、言葉の端々で探りを入れて来て、上げ足を取ろうとする奴もいるだろう。眼を光らせて守り、対策を講じよう。妻達の心を、二度と悪意のナイフで刻ませはしない!
城の子供達も男子は制服をビシっと決め、女子は…織り込みや染色に工夫を凝らした和服に、立体的な花の編み物を載せた簪で髪を飾り、異国情緒を周囲に振りまいていた。見たことが無い和服の美しさに、各国の首脳陣が感嘆の声を上げた。
オーリーは恐縮する事も無く、鼻が10センチ高く伸びた様なドヤ顔を決めていた。可哀想なオーリー。これから各国から仕事が殺到するぞ?男捕まえる時間なくなるぞ?
ダンは各国の武官から引っ張り凧だ。皆、騎士100人でも苦戦する魔物を一撃で葬る超弩弓を欲しがっている。高位貴族の夫人たちにも興味を持たれて四苦八苦している。
ダンと一緒だったヤミーは…あちこち色々食べてる。あれ?何か浮かない顔をしてるなあ。やっぱ素材を偏重して味付けを後回しにているスタイルが気に入らないのか。
例によって、ムジカは楽師たちに質問攻めに遭いっていた。
爆弾娘のマギカは、学者陣と話し込んでいた。
「王宮魔導士を追放されましたー!今更王妃となったわたくしに取り込もうったってもう遅い!」人気ジャンルかな?
「おま…いや王妃様ではなく、あのモネラという少女を、王宮に派遣して欲しいのだ!」「あの子は私の一番弟子よ!このお城でこれからの準備をしなくちゃいけないの!」
「この城よりも王宮の方が」
「失礼ながら」と話に割り込ませてもらった。「国王さま~!」飛びつくなってやわらかいなあ。
「マギカ王妃。派遣は出来ないが、防疫情報の交換はなるべく短時間で行える様協力体制を整えよう。学士様達にも、何卒協力願います」と取り繕う。
「国王陛下!既にオレンジャー卿に倣って、伝書鳩等で連絡を取り合える術は整えております!ただ何卒、あの類稀な才能を我が王宮に!」
「あー、それはならんぞ学士殿方」とオレンジャー卿。
「あの天才少女は己が道と信じた道しか進まぬ。むしろ教えを請いにここまで通われよ」
「そんな…」
「あの少女もそうだが、他の子供達も真直ぐだ。教えを請われて躊躇う事はなかろう」
「そうなのですか国王陛下!」
「この城の子供達がここでの国際会議を歓迎してくれたのも、大陸の平和を願っての事です。大陸の人達の幸せの為になる知識はお教えするでしょう」
「おお!」学士たちは次の言葉を期待する、が。
「但し、私は対価を求めます。勿論、天然痘の感染を防ぐための知識は無償です。
便利な魔道具、鉄道の敷設、酒や服飾品等、暮らしを楽しむための物は、取引となります」
「うむ。承知しました。是非、ご鞭撻をお願いします!」お、あっさり承諾された。
マギカとモネラの講義は、学者や医師の心に届いた。
こうして、本丸御殿の、3度目の外交戦、しかも4カ国の帝王と教皇という、歴史の教科書に載るレベルの外交戦が、最後の夜を迎えた。
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晩餐会は終り、私と妻達は子供達を世話し、子供達と一緒に寝た。
「私、何にもしてないのに、王妃様になっちゃった」
何もしていない訳がない。私が外に行っている間、心に傷を負った子供達を、あなたの心の優しさで癒し、ゆっくり寝かしつけてくれたのは、君なんだ、愛しいステラ。
「ステラは王妃になっても変わらないステラだよ。それに王妃の振舞いだって立派に出来る。どの国にも自慢できる、私の王妃だよ」
するとステラは別の事を話した。
「司教様が言ってくれたの。『あなたは幸せになりなさい』って。おかしいよね、私は死んでも御屋形さ…王様のために働かなきゃいけないのに」
教皇陛下には解っていたのか?
「司教様の言葉が正しい。君も、皆も、自分の幸せのために生きるべきだよ。ステラ。幸せになってね」
「なんか、悲しそうな顔してるよ?」
そうか。
「私、これからどうなっちゃうの?」
私は約束した。
「幸せになる。絶対に、幸せにする。辛い事があっても、君は、一杯幸せになって、最後は誰もが羨む中で、天の門に招かれるんだよ」
ぐずっていた子の頭を撫でていたステラの頭を撫でると、疲れの所為か、彼女も寝入る。「ありがとう…」ステラの小さな声が、心に刺さる。
当番を外れたオイーダ、ドレス、イナム、ジーミャは、緊張の所為でまだ寝ていなかった。私が入ると、助けを求める様な顔を向けて来た。
「お疲れ様、ゆっくり休もう」と、皆と一緒に寝た。一人一人、ゆっくり愛しんで眠りにつかせた。
アンビーは…お義父と飲んで、技術論と精神論の不毛な水掛け論を戦わせている。どっちも楽しそうなんで放って置こう。あ、お義母さんが私に気付いた。逃げろ。
3ケ国の施設をコッソリ回った。各国の宿所では、文官がようやく調印文書を完成させた。私の出現に驚き、遠慮する彼らを温泉に案内し、寝落ちしない様使用人に世話させて、少しでも快適に休める様寛いでもらった。
総本山は確認すべき項目が少ないため早々に就寝。
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翌日、元首達一行を天守へ案内し、城内を数編成の鉄道に分乗して貰い、二之丸御殿で幼児教育を、二之丸学校で青年への専門教育を、一時的に三之丸に移動した防衛部で射撃訓練を視察した。
更に三之丸の製鉄、製紙、印刷等の工場を見学し、特に要望の強かったワイナリー、サトー・ティーグを案内した。来賓のお歴々の、特に御婦人方が歓声を上げていた。
あれ?子守歌の酒蔵は行かないの?ちっ!
「『子守歌』を醸す蔵はどちらに?」おお!心の友よ!と思ったらフロンタの王妃様か!
「離れた所にありますので、近日中に、必ずや案内申し上げます!」ちょっと面倒な雰囲気がしたので時効の中断を入れた。あの人、タタミゼ(日本マニア)か?
横でエンタが済まなそ~な顔してこっちを見てる。日本酒買ってくれたら許してあげよう。
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そして。昼前。
本丸御殿一の間にて、昨日の会議の結果を、教皇始め大陸の有力諸国の元首が署名した。この一夜の間に、シン・スーパートレイン(軽便鉄道)が、各国元首に東国に関する新情報を届け、一同に疑いの余地が減ったため、署名は実にスムーズであった。
細部は後日検討とし、罰則を定めない反故にも出来るものであったが、それでも大陸初、いや、この世界初の国際協定が誕生した。
「護児国王殿、この場に祝福のお言葉を」とキオミルニ皇帝がサラっと言いやがった。
協定の締結に望み、締めのの言葉を、帝王達が求めて来た。
その時!私にタ〇バが舞い降りた!演説が長くなる!
私は、壇上に立った。
「今、大陸はここにお集まりいただいた諸国の帝王の英断により、私達は破滅に立ち向かいつつあります。
しかし、例え一か所でも、いいですか?例え一か所でも、もし一ケ所でも防疫と、敵への警戒を怠れば!」
諸国の帝王達は、たちまち広がる感染によって、疫病で死にゆく街々を、戦う前に全滅する騎士団を思い起こした。
城塞は静止し、兵は死んだ。しかし、敵国は-
「各国は滅亡しても、大陸は残るでしょう。ミデティリアン。フロンタ。総本山を擁するマンナ!ダキンドンだった所!」
皆が死体が重なる死の世界を思い起こす。美しい乙女の輝き、それはもう輝く事はない。不気味なム〇ミンの声が頭の中で囁く。
「これは、あくまでも想像です。誰も見た物は無い。しかし、この大陸に生きている人間は、そうなる危険性と一緒に生きているんです。
教皇陛下!宗教とは何でしょう?人間を人間として生存させる神の言葉を伝える責任です。
その人間の生存自体が、壊滅の急坂を今!加速度を付けて転がり落ちているんです!
神仏の心による大決断の政治を、私は総理に祈りを込めてお願い致します。」
「ブツって何だ?」「護児国王の信仰か?」あ、しまった。でもみんなスルーしてくれた。
一同が沈黙する中、私の言葉を受けた教皇が壇上に上がる。
「今、私は、大陸の各国の皆さんに向かって冷厳な事実を告げなければなりません。
大陸は今、まっしぐらに破局への道を辿っています。
この、燃え盛る疫病と侵略の業火の中で、私達は、そして大陸は、本当に滅び去っていかなければならないのか。
嘗て大陸に覇を唱えながら滅亡していった大国と同じ運命を辿らなければいけないのか」
今まで穏やかだった教皇が、険しい表情と、激しい身振りと共に叫んだ。
「断じて!!そうあってはなりません!!
我々宗教家は、長い間皆さんにこう教え続けてきました。神を信じろ、そうすれば魂は救われると教えてきました。
その上で得た物は一体何であったか!
飢餓への無力、人身売買、そして総本山の内乱だった。我々宗教家の傲慢さを深くお詫び申し上げます。
しかし、今からでも遅くないと思います。
我々に必要なのは勇気であります。見通しはあまりにも暗く絶望的でもあります。
しかしその、絶望的な戦いを戦い抜いてこそ、本当の意味での、人間賛歌の歌声を上げるのではありませんか!
後の世界の人達から、彼らは真の勇気あった人々と言われるために、人間生存の新しい戦い、この苦難の戦いを、大陸中の人々と一つになって戦い抜こうではありませんか!」
署名の場は拍手に包まれた。
私の脳内には世界のト〇タのシンセとオーケストラによる名曲が鳴り響いた。
5人の元首、いや、私を含め6人の元首が、商人を真似て、握手を交わした。
あまり公の場に似つかわしくない礼だが、教皇を始め、皆が笑顔であった。
その雰囲気に、拍手は終わる事なく響き渡った。
上手くいった。
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白金門の外、駅からシン・スーパートレイン(軽便鉄道)が各国行きの編成を出発させる。
ムジカ率いる儀典部音楽隊が、出発の笛の音に続き、旅路を祝福する典礼の歌を演奏し、子供達の合唱が続く。
車窓から、教皇が、コンクラベ様始め枢機卿達が、ハンマー義父さんとベロー義母さんが、フロンタ王エンタとおねだり奥様達が、キオミルニ帝夫妻達が、そしてぐっちょぐちょに泣きつつ必死に威厳を保とうとしている王女オーテンバーとテイソさん達が、手を振りながら去っていく。
頭に慣れない冠を被りつつ、私と妻達はひたすら手を振り、5つの列車を見送った。
子供達が各国の旗を振りつつ見送る。
「みんな帰っちゃったね」誰かが言った。
「楽しかった?」「お祭りっぽかった」
「この、魔物の森に、大陸中の王様達が来たんだぜ?」「私達、凄くない?」
「凄いのは御屋形様…じゃない、国王様よ!」
「ああ、そうだ。それを勘違いしたら俺の兄貴みたいに放り出されるぜ!」
「今度は、私達が外の国に行きたいな」
「俺はこの城でずっと米を育てるぜ」
「私はお城でドレスを縫って、王都に持っていくの」
みんなの夢は広がった。世界中の人達、王様達がここに集まり、外の空気を持ってきてくれたんだ。どこまでも夢を広げてくれ!
「ごはんつくるー」ヤミーはずっと出番なしだったなあ。御免御免。「あのクチョクチョな味付け嫌よー」同感だ。
「俺はヤミーのご飯が一番だ!」ダン、解り易いなあ。みんなニヨニヨしてるぞ?
「さて、うるさい奴等も帰りょうたし、飲み直すか!」「「「応!!!」」」
「待ちねぇ。あんたら何で帰らん?」
…ドワーフが増えとんがあ!
「儂ゃここが気に入った!ええ鉄も打てそうじゃしな!」「ウィスキーはもう無えで?」
「これから仕込むんじゃろ!儂らも手伝うで!」「帰れぇ!」「嫌じゃがあ!」
どうしよ。
「帰ってよ!」「教えてくれるって国王陛下が約束して下さったぞ!」
「そうですかそうですか。では~必殺魔法、『爆破指令』!」
「止めい!」チョップ!「ちょべし!」マギカは居残った学者達と揉めていたし。
ダキンドンから来た学者はモネラにもまとわりついて、モネラが助けを求める視線を送って来ている。
何だか城の人口は、ゲストが増えたせいでじわじわ拡大している。
これから辛い時が来るだろう。しかし、人と人の交わりを、知らなかった事を知る喜びを、皆感じて欲しい。先ずは、大陸初の国際会議の成功を祝して、打ち上げだ!
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各国に示した物語りはたんなる創造の世界ではない。
こうあってははならない-
それが我々の願いである。
第二部 完
第二章完結です。第三章再開は12月の予定です。早く書き上げられたら前倒しします。
次章こそは、タイトルで期待された方もいるかも知れませんが…
「巨大な天守が聳える城を制するのは、空飛ぶ忍者か謎の姫か?!」な「痛快時代劇!」で行きたいと思います…痛快かな?
1ケ月プロットを練り直して書き始めますので、ご意見等頂けましたら反映したく思います。
目指せ年内完結!




