53.恐れていた腐敗司教の復活宣言
前回のあらすじ:メガネ女史の最後の一言で、なんか子供達が学校で無茶苦茶流行ってる体操を踊るラストになりそうだったのを堪えました。
※昨日、単日最高のPV1000超を頂きました!ひええ!皆さま本当にありがとうございます!
「この処、この森で泣く子の声も聞こえて来ないみたいね」
ステラとミッシが、先月城に迎えた幼児を着替えさせている。チラチラと雪も降る様になった中、暖かい服に着替えた子はゴキゲンではしゃぐ。
「冬を前に、子供を捨てる程困窮している村が少くなったのと、もしそんな事があってもすぐ辺境伯へ相談できる体制が出来たお蔭だ。
領都の孤児院も私達のやり方を色々取り入れてくれている。逆にそっちがパンクしないかが気になるよ」
「リベラ様はとても良い領主よ。それに何かあればあなたに聞きに来るでしょう」
「止めてくれ。本当に来そうだ」
******
商人のマテオはこの季節最後の商隊を率い、城を発つ前夜だった。
「しばらく温泉もヴァン・ムス(スパークリングワイン)もお預けですか、残念です」
「冬の間に来てもいいんだが、魔の森入り口まで来るのも大変だしなあ」
「いっそ領都か王都にも出城を立ててしまっては如何ですか?」
「そこまで王国に入り浸りたくないなあ。貴族達の強欲に巻き込まれるのは嫌だし」
「もう争奪戦は始まってますよ?逃げられませんよ?」
マテオが城に来てすぐに始めたのは商談ではなく、王国の状況の報告だった。リベラ卿の使者も兼ねていたのだ。
孤児院、孤児の保護、そして優秀な子供の確保は領都のみならず王国直轄領、そしてオレンジャー領を皮切りに、王国各地に徐々に伝播している様だ。
王国ではオーテンバー姫の賛同を得たルイス夫人、即ち宮廷魔導士イージワー伯爵夫婦が、オレンジャー公爵領では公爵自らが、「城の子供に負けるなー!」と各地で天才神童の噂のある子を下級貴族や平民からスカウトしている様だ。
育て方を間違えると、我が故郷で最高学府と言われたところからカルト犯罪者を続々排出した、みたいな悲惨な事になるので、時々様子を見よう。
それに連動している訳ではないが、捨て子問題にもメスが入った。謎の情報源から教会孤児院が人身売買や買春に加担しているとの情報を得、「昨年みたいな教会対民衆の大擾乱になったらかなわん」と反省され改善されている様だ。
謎の情報源なんて、言わずもがなだ。
だがその一方で、今まで甘い汁を吸っていた勢力がお零れに与れない様になり、犯罪組織に変質しているとの事。教会腐敗地区を中心に、野盗や誘拐が散見され、時折騎士団が派遣され摘発されているそうだ。
外の情報は有難い。勿論自分の目で確かめるのも億劫ではないが、わざわざ提供してくれるというのが嬉しい。色々目論見があったとしてもだ。
その礼も込めて、私はマテオさんに三之丸商店街、三階櫓の物産展示場の向かいに新規開店した旅籠で、温泉三昧酒三昧の宿泊をプレゼントした。
王都に行き経験者の何人かが、商人用のホテルを開業すべきと計画し、訓練し、開業させたものだ。
今夜は、お別れ前夜の送別会だ。
「帰りたくなくなるなあ」「商人がそんな事言ったらお終いでしょ?」
「商会を後輩に譲って、私はここの支店長でいいや」
いかん、このままではこの城はダメ人間製造所になってしまう。
「君の今の優雅な宿暮らしはリベラ卿の信用あっての事だぞ?その腑抜けた様子を知られたら…」
「おっと、どうも本音が漏れてしまった様だ。商人としていけませんな、あはっはっは」大分緩くなったな、この若者は。
「でも毎年の事ながら、名残り惜しいのは事実ですよ」
「友人としてそういってもらえるのは嬉しいよ。春なんてすぐだよ」
「やっぱり王都に出城を構えて、友好国の大使館として睨みを効かせてしまっても良いのではないですか?
ここの御殿の様な異国の黄金の壁画に、大きなテルマエ。来訪者は後を絶えないでしょう?」
王国からして見れば夢の様な、こっちから見れば面倒なだけの提案を残して、翌日彼ら以下商隊は南向列車で去って行った。
******
冬の礼拝を前に、私は総本山を正面から尋ねた。もう私室前へ瞬間移動で侵入する必要もなく、正式にコンクラベ選皇枢機卿の知人としてアポ有訪問をする様になった。
「申し訳ありませんが、コンクラベ様は暫く総本山をお出になられています」
「そうですか。城の子供達も残念に思う事ですが、止むを得ません」
「それから」と代理人は声を潜めて言った。
「魔導士様も暫く総本山への出入りをお控え下さい」
「やはりそうですか」代理人が驚く。
「やはり、とは?」
「いえ、私如き田舎の魔導士をお気遣い頂き、心からお礼を申し上げます」
(見られています)と小声で代理人に伝えた。
代理人は、納得したかの様に頷いた。
「コンクラベ様にお伝え下さい。
いつも短い時間だけの滞在でしたので、数日間滞在頂ける様にお迎えしたいと。
その時は、どなたか、親しい方を、『どなたでも』お連れ頂いても、全力で歓迎いたします、と」
「どなたでも…あ、いや、有難うございます」
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10の月の頭。「キツシンジヤア キシシヤク キタル」またか。
瞬間移動で彼を迎え、城の首脳陣と本丸御殿で対峙した。
「今度は貴方か。毎度唐突だが仕方ないか。御夫人と御子息はお元気かな?」
「有難う、お蔭様で元気だ。それに、察しが早くて助かる。
今度は創世教会の総本山でクーデターが起きた」
隣で聞いていて唖然とするウェーステとマギカ、感心なさそうなアンビー、
「クーデターってなんですか?」ステラ、御尤も。
「暴力で王の地位や国を統べる権利を乗っ取るって事だ。今回は創世教会総本山の教皇が、彼に反対する連中に罪を被せられて捕まったって事だ」
「捕らえられ、裁かれていた、あのデマゴギー13世が、総本山と帝国内の内通者を駆使して自分達の罪を教皇に擦り付け、現教皇ディグニ49世の廃位を宣言した」
「インチキもええとこじゃなあ。ま、ありがちじゃあ」
屁は元から騒ぎ出すというしね。
「そして、新しい教皇は、デマゴギーを支援していた帝国貴族出身の枢機卿が担ぐ、イノセント4世。5歳の子供だ」イノセントとは皮肉な。ワガママはもとより、贅沢や奴隷への暴力暴行が大好きないかにも貴族のクソガキって奴だ。
「「「5歳!」」」妻達は唖然とした。
「は!そんなんで務まる創世教会ってのは余程どうでもええもんなんかのぉ~?」
「奥様、そんなもので務まらないから緊急事態なのです」
「それはあたしらと関係なかろ。この城に、何がして欲しいんじゃ?」
「そうです。私達だけならお話によっては協力します。しかし私たちの子供に危険な真似はさせられません!」ステラが決意して言った。
「お気持ちは尊重しますが、もしこのクーデターが成功したら、奴等はいずれ魔の森に兵を出し、例えどれだけ兵が死のうともこの城を潰そうとするでしょう。10万の兵を出しても、100万の兵を出しても!」
「100万…そんな事をしたら大陸がおかしくなってしまいますわ!」ウェーステの言う通りだが。
「欲に染まったクーデター派にとって、どれだけ人が死んでも、どれ程大陸に飢餓や疫病が蔓延しても、自分達の贅沢さえ確保出来れば、奴等は喜んでやるでしょう」
「教会だ総本山だ言うても、鬼畜外道、魑魅魍魎じゃな」吐き捨てるアンビー。
妻達は私を見る。
「ベ〇ダー魔城かデ〇トピアか知らないが、ホント悪の軍団って内部崩壊するよねえ」
「相変わらずそれがなんだか知らないが、教会がなくなったら大陸は無法地帯だ。王国が混乱を脱したのも、王女が聖女として崇拝され、秩序が保たれたからだ。
各国の王の権威が守られているのも、教会の権威有っての物だ。この秩序は守りたい」
「その教会の権威も今やガッタガタだ。どうしたものか」
「排除された、正当な教皇は御壮健だ」
「コンクラベ様の弟子の手で、か?」
「…今帝国を脱して王国内でお休み頂いている。総本山は追討軍を編成し、オーテンバー王女を異端とし抹殺するつもりだ」「だろうね」
「知っての通り、帝国は総本山と不干渉条約を結んでいるが、クーデター派は帝国に王国討伐をけしかけている。どう戦うか、知恵だけでも貸してほしい」
「知恵を貸すというより、前回同様答え合わせしたいって事だろ?」
「まあ、その通りだ」
「聖女オーティの出番かなあ」
前回は、国内の問題、彼女が責任を負うべき問題だった。
だが、今回は総本山の内輪揉めだ。いっそ総本山を壊滅させてやってもいいとも思う。
オーティは、王国の権威のために頑張り、一方で創世教会にも敬意を表している。その教会に歯向かう様な仕事、王国の権威を損なう様な戦いを、しかも余計かつ辛い仕事などさせたくない。
「私は、あの娘に、あまり嫌な仕事をして欲しくないよ」
「私が来たのも」「彼女の頼み、だろ?」レンドリーは無言で応える。
「あなたって何でも解るのね…」そんな悲しそうな顔をしていでくれ、ステラ。
「それだけ、色々辛いじゃろ。それを支えるのが、妻の務めじゃな!」
「御屋形様!御話し下さい、貴方が今の先に見えている事を!私達は全力を尽くします!」アンビー、ウェーステ、済まない。
「協力するよ。長い目で見れば、この城を、ここの子達を護る為だしなあ」
「長い目か。何が見えているのか。出来れば教えて欲しいが」
「ああ。だが信頼できる人だけに限る。事は密かに、綿密に、そして大胆にやろう!」
一同が決意し、頷いた。
対総本山陣営を募り、王城で秘密会議を行う事とした。途中、レンドリー氏とリベラ卿が交代して空間移動チェースッ!で。
******
オーティは自室で風呂上りのお着換え中だった。
「キャーっ!」「おお眼福!」リベラ卿、独身だからってあんた。
と、私はオーティに…ではなくステラにひっぱたかれた。
「あんた解ってて着替え中に出て来たでしょう!スケベ!」
「魔導士様の名誉のために申し上げますと、魔導士様に清らかな姿で接したいと、時間が押しているのに突如入浴された王女が悪いのです」
「でもあんたならわかってたんじゃないの?!」
「約束を違えたらどうなるか教えなきゃいかんだろ?」「あんたがスケベなだけよ!」
大陸の一大事に備える秘密会議が初っ端からグチャグチャだよ。で、オーティは始終顔を赤らめもじもじしてた。「ま、魔導士様なら見られても…」
「早く服を着ろ!」ここにはリベラ卿もいるんだって!
辺境伯もニヤニヤしてんなって!!
ついに第二部最終の第三ラウンド!出るかガメラのウルトラG!
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