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52.さようなら王都 城の友人よ

前回のあらすじ:スカイもゆる~く頭おかしいサブタイだったりする

 あぶないあぶない、危うく王都の真ん中でテロ発生だった。


「御屋形様!」「もったいぶらせようて」ウェーステが駆け寄り、アンビーがニヤニヤ笑う。

「失礼します、オレンジャー公爵。我が妻が大変な狼藉を働いた事、お詫び申し上げます」

「お、おう。大丈夫だ、問題ない」大ありでしょ?

「しかし公爵様ともあろう方が、我が城の子を強制的に連れ去ろうとは、これは我が城に対する宣戦布告と看做して宜しいのでしょうか?」

「な!何を!強制などするつもりは無い!儂はただこの子達の才能が素晴らしく、全力で育てたいのだ!」

「何をこのクソジジチョンワ!」激高するマギカに再度チョップ!

「お気持ちは兎に角、お立場的には王家に準じる公爵家のお誘いは、強制に等しい。それが他国に対してであれば、いかな意味となるか…」


 公爵はハっとなり、崩れ落ちた。

「わ、悪かった。子供達、すまなかった」何と、公爵は、涙を流し、子供達に頭を下げた。

 周りの技師たち、司書さん達は唖然としつつ、公爵に倣って頭を下げた。

「え?」頭にたんこぶ作ったマギカが驚く。

「大人げなく欲張ってしまった。だが、それほどまでに君達は素晴らしい才能を持っていたんだ。いや!才能だけじゃない!自分より他人を慮る、美しい心を持っている!」

 アンビーとウェーステは得意気だ。マギカは眼前の光景に茫然としていた。

「公爵と、ルイスが…私に頭を下げてる、…うふふ。うふふふにゅ~!」「ちょっと黙っていてなマギカ」とホッペをつねった。

「その子達を金で買おうとしたと?」

「違う!ちゃんと給料を払って、学んでもらい、働いてもらい、そして教えて欲しかったんじゃ!」

「でしたらそう言えと!」

「恐れながら!」司書さんが声を上げた。

「オレンジャー公爵様は、王国内の数多くの英才を私財を投げ打って育て、王国の発展…維持に努められた功労あるお方です」

「私を王宮から追い出した癖にー!」

「そりゃはあなたが何かある度にアチコチを破壊して回ったからですよ!」

「え?そうなの?」目を逸らすなマギカ。

「さっきまたやらかしそうだったでしょーが!」

 やっぱりこいつヤベー奴だったか。

「御屋形様、とんでもない爆弾娘を娶ったもんじゃなあ」ニヤニヤしながらアンビー。こういう騒動嫌いじゃないだろ!?

「本当ですよ!城主様何でこんな危険物を妻にしたんですか?」真剣に突っ込んでくる司書さん、距離感が近いな?

「いやいや、私は彼女の夫なのでそこまで言って欲しくはないのですが…」

「マギカって子はですね!…は!大変失礼しました!何卒お許しください!」

 凄い剣幕だった司書さんが落ち着いた。よかったよかった。


「あの、御屋形様」と、このカオスにミムラタが水入りをした。

「お、僕は、公爵様の申し出に今はお答えできませんが、しかし!」彼の視線が熱を帯びて来た。

「城の技を学び、誰かの役に立つ実感が湧いたら、家づくりでも絵を描く事でも、公爵様の招きに応じたいと思います!」

 彼の一声がこのカオスを収めた。

「僕は、城で学んだ色々な事を、僕を捨てた村の様にならない為に王国で役立てたいんです。絵を描いて僕たちの苦しさや子供を捨てる罪を戒めて、俺たちみたいな子が減ってくれる様に頑張りたいんです!」


「私も、大きくなったら王都で下水と浄水槽を作りたいんです!」シリンが続いた。

「このままではモネラちゃんが言ってた通り皆病気になります!王都は全滅します!」

「「「何だってー!」」」トンデモ発言に公爵も司書さんも絶叫した。

「今、孤児院に行っているモネラ…私達の友達はきっと!下水や衛生の問題を改善している筈です」

 シリンはモネラと役割分担してここに来たんだろう。助太刀しよう。


「公爵様。私達の城の子は、これから治安が回復し、人が増える王都が清潔であって欲しいと祈っています。その為に何をすべきかを、この小さい、しかし果てしなく大きな頭で考えているのです」

「そうよそうよ!あんた達みたいに自分の利益ばっかあむむ!」叫ぶマギカのホッペを再びつねった。

「おやふぁふぁふぁまひろいれふー!」「酷いのは君の態度だ!少し大人しくしてくれ!」「むー」あ、大人しくなった。司書さんがなんか目を丸くしてビックリしている。

「シリン、君の言う通り、モネラは孤児院だけじゃなくて大聖堂をね、君のスケッチの通り綺麗にしたよ」

「えっ!」笑顔になるシリン。


******


「先ずは子供らの作った物、考えた物の権利を、絶対に守る事じゃ」

「約束しよう」

「そんな約束宛てになるもんかい。肝心なのは、破られた時どうなるかを決める事じゃよ!」

「ドワーフ相手に約束破る馬鹿者なぞ我が領に居るか!」

「さっき欲張って無様に踊って見せたのは、どこの国の者じゃったかの?」

「それはすまん!国ではなくて儂のウォンチューがフィーバーしてしまったのじゃ!」

「公爵様。余り本音を漏らしてしまっては…」

「いいのだルイス夫人。もはやこの子等、奥様方とは腹を割って話すべき時なのだ」

「その方が話が早いでな。あたしの出す条件はじゃな。

 子供達が考えた、『物の作り方』を紙に、『誰が見ても同じものを作れる様に』記録する。それを公爵殿が買う」

「それで、後は儂等が作って売ると」

「うむ。そして、売れた物の何割かを、作り方への見返りとして、子供達に配る」

「ほう…してその期間は何年?」

「15年」

「長いな。帝都の優れた産物の占有許可も10年程度と聞くが」

「申請してから、似た物がないかを調べるのに4~5年かかろう。それから技術が広まり、もっとええ技術が出来て、元の物が用をなさん様になるまで10年を足して15年じゃ」

「成程、一理あるな。して見返りの割合は?」

「物によるが、1割」

「これも高い!」

「偽物をどこまで取り締まれるかじゃよ!それに他国への影響力もじゃ!

 王国が帝国やフロンタ王国、総本山へ占有権を認めさせる事が出来れば、もっと安くてよかろう」

「では、占有権の相互条約を締結した暁には半分に」

「出来たら話そう。半分とは言わんが、減額は確約しよう」


…アンビー。流石技術で食っていくドワーフだ。一件少女にしか見えない可愛い妻が、熟練の公爵を相手に快刀乱麻の論陣を繰り広げ、主張を通していく。


「魔導士様の奥様は、凄いですね…」司書さん、もといルイス夫人が唖然としている。

「魔導士様の妻はみんな凄いんですよーだ!」

「あなたは例外でしょ?」「な!」

「イージワー伯爵夫人、私の妻はみな素敵な女性です。マギカもまた、城の子供達の健康を守り、魔法を効率よく教え育てている、なくてはならない存在です」

「子供を教える、ですって?」「はーい!教えてまーす!」

「し、信じられないわ。気に入らない事があればボンボンとあちこちを爆破していた爆弾娘が!…これも魔導士様の人徳のなせる業でしょうか?」

 マギカが何か抗議しようとしたが口を塞いで黙らせた。

「何と言う手綱の取り方。うふふ、あはは!」美しい夫人は笑い出した。あれ?結構美人?


「この子は優れた見識や非常識な力はあったのですが、何分短気で色々とぶち壊してしまっていたのです。折角公爵様にもお声掛けして頂いたと言うのに。魔導士様だからこそ、彼女を優れた医師に、教師に育てられたのかもしれませんね」

 やっぱりこの人、只の意地悪さんじゃなかったな。

「王宮魔導士の同期としてお願いします。彼女を宜しくお願いします」と、深く礼をした。

 マギカも、私に頭を下げるルイス夫人を、信じられない物を見る様な目で見ていた。君に堪え性があったら、いい友達になったかも知れないね。

 ま、これからもあるか。


「ケリ付いたでー」

「子供達の権利、確かに守ろう!」あちらも合意できた様だ。二人が握手している。

「あんたら王都で活躍したい思う子は、あたしがキッチリ目光らせちゃるでー!」

「お手柔らかに。タイム殿、あなたは本当に良い子供達と、良い奥様方をお持ちなさる!今後とも末永くお付き合い頂けます様、お願いしたい」

「こちらこそ、子供達に機会を設けて頂き、深く感謝します。私自身も、王都の復興に役立つよう努力します」

「何を言う!貴殿がおらんかったら王都など既に廃墟になっておったわ!」


 この公爵も強かだな。まあ、自領こそ最優先で、王都の愚王に立てる義理もないという事か。

「今はオーテンバー王女が復興に尽力しています。国あっての繁栄。ともに協力できればと存じます」

「オーティー姫もよき協力者を得たものだ」


 混乱を何とか収集し、一同は公爵と再会を誓い、館を去った。


******


 陽も暮れたので、孤児院組と公爵邸組は、一旦王都の市場で合流した。屋台の食事に噛り付いている。孤児院と公爵の招待を受け取った際に、二日間の晩餐会を辞退したのだが、オーティは地団駄踏んで悔しがったそうな。


「生意気な奴がいてさー!」「やっつけた?」

「そいつ、病気だったんだ。孤児院ってひでぇところでな」

「御屋形様がビューっと治したんだろ?」「そんな事してみろ!王都の皆が御屋形様を奪いに来るぞ!」

「あ…それは駄目ね」「モ姉ちゃんが俺たちに指示して、孤児院で元気だった奴と一緒に掃除したんだ」「ケンカしなかった?」

「まあ、モ姉ちゃんが黙らせてくれたよ。後は一緒に大掃除だ」「がんばったんだね!」「よくやった!」「病気の奴も、よくなったよ。そっちは?」

「王都で仕事して、新しい物を作ったらお金がもらえる様になったよ!」

「そっちもがんばったな!俺も王都に…いや、城がいいかな?」

「これ美味しいわ!」「焼き方を勉強したいわ!」

 子供達はお互いの健闘を讃えた。何人かヤミーの弟子がいるな。

「モ姉って言わないで…」モネラが恥ずかしそうだ。


「みんな良い経験をしたみたいね!」ステラが嬉しそうに言う。「偉い貴族様に捕まったりしないか心配したのよ!」

「心配すんなステラ。あたしがキッチリ守り通したで!」

「本当にアンビーさんは頼もしかったですわ、公爵様に一歩も引かずに」

「まあ、相手がよう出来た御仁じゃったお蔭じゃがなあ」

「みんなすごぉい。あたし何にもしなかったよぉ~」

「プリンだって孤児院の子を治してくれたじゃないか。亜人の君と心が触れた子達は、きっと未来の世の中を良くしてくれるさ」

「え~あたしぃ、大活躍ぅ?!」「そうか、ようやったの!」

 子供達も、妻達も、大満足だ!ああ、酒が旨い!


「ここで一曲。我らが聖なる王女、オーティ姫の活躍を讃える歌を歌います。皆さんもご一緒に!」離れた席で吟遊詩人が楽器を奏でる。半分ロックだ。

「イェーイ!」「「「ワーオ!」」」「ズンババーン!」「「「ディンダダーン!」」」「オーテンバー!オーテンバー!雄々しき命!」

 子供達も笑顔全開で熱唱する。


 聖女オーティの大活躍のお蔭で、戦争の懸念が去り作物が増産され、流通も治安が回復した。

 王都の店に笑顔と歌声が、希望が帰って来た。一仕事終えたか?…いや、これは私の仕事の成果って訳じゃない。

 聖女を心の励みに、この地で耐え忍び、頑張って来た人達の成果だ。有難い事だ。改めて、酒が旨い!


 なんか店の隅で、庶民の服着て転げまわって悶絶している、見知った顔のお姫様と、醒めた目でそれを見つめる、これまた庶民の姿の女騎士がいたが見なかったことにしよう。


******


 翌日。


 かつて王女オーテンバーと取り交わした護児城との不可侵条約を、国王の署名を加えた正式な国際条約として交付した。だがその場にすら国王は現れなかった。

 これで、護児城は、ダキンドン王国から敵視される事はなくなった。

 そして、魔の森の外の世界に、公的に独立を保証される事となった。かの横の国は兎に角。


 続いてパーティーが開かれた。私達は、オレンジャー公爵に後れを取られた貴族達に囲まれ、妻達がそれをブロックしていた。

 オーティーはひらすら王座にいた。

 オーティーも私と、妻達と、子供達と、もっともっと、話したかっただろう。城の思い出や、料理と歌を広めた思い出や、もっともっと。

 しかし、微笑を讃えた王女オーテンバー・ダキンドンは、座して語らず、太陽の様な笑顔だけを私達に向けてくれていた。

 私達のアイドル、オーティー!今度は飾る事なく、皆と一緒に、護児城で僕と握手!約束する!


******


 午後に、私達は支度を整え、王城を発つこととした。

 子供達は王女に感謝を述べた。

「王都の孤児院の子供達と友達になれました」

「オレンジャー公爵様に、絵や服のデザインを高く評価頂けました」

 何人かの貴族が悔しそうに顔を歪めた。オレンジャー公爵は満足顔だ。

「もっと一緒に過ごしたく思うが、皆も護児城で学ぶこと、働く事があると思う。

 とても寂しいが、お別れとしよう。

 帰りの度が楽しいものとなり、無事城に戻る事を神に祈る。

 そして是非また、今度は多くの友を連れ、王都に来て欲しい!」


 オーテンバー王女は、美しく穏やかな笑顔を湛え、子供達を、妻達を、私を見た。

 とても昨晩酒場でローリングバルカンしてた奴と同一人物とは思えない。


 王都の風景を楽しみたいからと、馬車による送別は断っており、徒歩で王城を旅立った。

 一応警護のために、戦闘に騎士が先導してくれることになった。

 去ってゆく王都の風景を目に、子供達の脳裏に浮かぶのは荘厳な内装であろうか、威厳ある大聖堂だろうか。


 城門も見えて来た辺り、孤児院の子供達が列をなして待っていた!これにはみんな驚いた。

 孤児院の子供達、お腹を壊していた子も元気そうにしている、一同は、声を合わせ聖典の歌を歌った。


「天つみ使い護らせ賜え 彼らの行く道示し賜え」


 合唱…というより、和音がない斉唱だ。いつか、城の子供達も通った道だ。

 城の子供も答えて歌う。


「正しき心に神宿りませ 寿ぎ歌わん御心の歌」


 道行く人も足を止め、全く合っていない様な、会っている様な合唱に、耳を傾けている。人込みの中には、オレンジャー公爵も、ルイス夫人も、平民に扮して見ている。あ、オーティとテイソさんも商人に変装して馬車で来た。


「慈しみ以て守り賜え」


 城の子供達は、孤児院の子供達に手を振りつつ、城門を出た。孤児院の子供達も、王女も公爵達も、こちらに手を振り返した。 

 子供達の、満ち足りた思い出を胸に、私達は王都を後にした。


******


 去り行く城の一行を見送りながら、ルイス夫人が呟いた。

「教育の力は恐ろしい。予想を超えて恐ろしい!」

 平和が戻って、城と外のお付き合いが始まりました。

 次はいよいよ第二部第三ラウンド、最終決戦です!


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「このネタっぽいのがわからん」

「鉄拳!モンガー叩き!」

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