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46.歌って料理大人気 聖女作戦よ!

前回のあらすじ:一時仲間内で「腹が減った寿司でも取れ」が挨拶代わりになった事がありました。

 枢機卿館前。

 貴族子弟と教会騎士が、言いがかりをつけて捕らえた市民-殆ど女子供と、デマゴギー一派の慰み物にされ妊娠した少女達合わせて50人程-を火刑台の柱に縛り付けていた。

 足元には薪が積まれ、周囲には松明持った兵達。遠くから市民が憎悪の眼差しを込めて見ている。

 見ているだけである。というのも、先祖代々信仰して来た神の代理人たる枢機卿に対し逆らう事は、神に背くのと同じ、と皆信じているからだ。

 彼らの無念を顕すが如く、天は暗雲に覆われた。


 欲に塗れたデマゴギー13世が、同じく欲に塗れた司教達や有力貴族達を引き連れ、枢機卿館のバルコニーから偉そうに火刑台を見下ろす。

 奴が声高らかに

「聞け、愚かなる市民よ!お前たちは魔物が変化した偽物の王女に惑わされ、神の治める大地に悪魔の呪いを広めようとした。この者たちはその手下だ!その末路が如何に哀れな物か、とくと見よ!」

 と口上を述べて部下に向けて手を挙げると、貴族子弟たちが松明を手に取って火刑台の薪に突き刺し、火が燃え盛った!女子供の泣き叫ぶ声が広場に響き、強欲で残虐な外道たちの顔が愉悦に歪んだ!!


 と、その瞬間!(に合わせて)強風が吹き(私が気圧差を発生させて湿気を含んだ風を吹かせた)火刑台の炎が消えた!


 そして広場から王城に向かう道の暗雲が左右に開け、天から一筋の光が照らした(そうなる様雨雲を左右に分けた)。

 光輝く大通りを、純白の礼拝服を纏い行進する姫一行が現れた!う~ん、ク〇コの聖女みたい。


「ええい!火を付けよ!能無しの小僧共が!」と私兵たちをけしかけ、私兵たちが火付けに躍起になるが、逆に火は私兵たちに向かって広がり、奴等のアタマに引火した。ゾ〇ィかな?。

 広場に着いた姫は「罪のない人々を救いなさい!」と女騎士達に命じる。急ぎ火刑台の縄を切る一同。周囲で見ていた市民達から歓声が上がる。姫はその歓声に向かって怒りを叫んだ。

「貴方達も見ているだけでよいのですか?!貴方達の子供ではないのですか?!

 子供達を、理不尽な暴力に踏みにじられた少女達を救いなさい!

 今こそ勇気を奮って動くのです!」

 人々は進み出て、女子供達を助け始めた。


 バルコニー上の枢機卿が怒鳴る。「神の代理人たる私に逆らう悪魔め!神の怒りを受けるであろう!」広場を照らす雲間と対照的にわずかの距離しかない館の上は、雷鳴が轟き始めた。

「神の怒りを受けるのはお前です!」と怒鳴り返す姫、カッコイイ!よし。

 私は脳内で聖典ならぬパーリ語の仏典を6チャンネル立体音響で鳴り響かせ上空の気圧をいじくった!

 その時雷光が煌めき、轟音が響き渡った!


 微動だにせず、雄々しく指を刺す姫と、その指の先は。

 巨大にして絢爛なる館に聳える尖塔が雷によって二つに裂かれ、崩れ落ちて来た!

。まるでバラモン像の様に!

 その瓦礫はバルコニーに陣取る外道共に天誅とばかり降り注いだ。


 あまりの出来事に茫然とする一同。だがデマゴギーは生きていた!

「おのれ!悪魔奴…」瓦礫から這いずり出て来た。

 そこに蹄の音が響いた。教会の旗を掲げた騎馬の集団が広場に殺到した。中には「死んだ婆ちゃんが生き返ったので」なんて言って逃げた兵達も従っていた。

 人々に、姫の周囲の女騎士達に不安が広がった。


「おお!神の僕達よ!あの悪魔を捕らえ、殺せー!」

「捕らえられるのは貴様だ!デマゴギー13世!」

「な、何を?!」疑問に思ったのは本人だけではなかった。

「貴様の数々の悪行、総本山にて明らかにされた。これより裁判を行い、正当な処罰を下す。捕らえよ!」

 教会兵達が枢機卿館に押し入り、瓦礫の中からデマゴギー達、生きている者も死んでいる者も運び出した。

 館から檻を載せた馬車に放り込まれたデマゴギーを、只々、人々は無言で見送った。


 女騎士達に庇われていた少女達が立ち上がり、たじろぐ事なく毅然と立つ姫に向かい手を合わせ、「奇跡みたい…聖女様!」と涙を流し跪いた。

「聖女様…」「聖女様!」「「聖女様!!!」」他の女子供、彼女らを助けに集まった市民達が続き、姫を中心に皆跪き、敬虔な祈りを捧げた。女騎士達も…とりあえず同調した。これは私の仕込みじゃない。


 凛々しくも美しい顔を微動だにさせない姫は…立ったまま気を失っていた。


******


 突然の姫の帰還から、その翌日に、王国は目の上の瘤を切り捨て去った。

 それは創世教会にとってももまた同じであった。


 大陸南方、大帝国の首都にある創世教会の総本山の奥。

 司教達が集まり、透明なガラスの、背の高い杯にワインが注がれ、絹糸の様な泡が…とまで行かないがそれなりの泡が立ち昇る。

「ダキンドンは救われましたな」

「あそこはそれなりに穀倉地帯を抱えております。我が教会にとっても大切な収入源の一つです。潰れてしまっては無視できない損失です」

「孤児達の奴隷売買。ありふれた話ではありますが、デマゴギーはやり過ぎましたな」

「大変なのはこれからです。総本山にいる奴の縁者も抑えてはおりますが…」

「数百年前にも、腐敗や汚職に耐えかねた民衆が蜂起して、世界を揺るがす戦争になりました。

 敵の民衆を何百万人と皆殺しにしたものの、教会も帝国もそれなりの被害を負った物です。勿論儲けさせてももらいましたがなあ」

「凶作の今そんな事になればあまり戦争による利益は得られそうに無いですな」

「これもコンクラベ選皇卿様のご報告のお蔭です。如何様にこれだけの証拠を御集めになったのか」

「ここ数年、大祭日にすらお出にならないと思っていたら、どうやら各地の孤児院を巡回されていたとか。その伝手かとは推測されます」

「あの間抜けで無能な国王は、コンクラベ様には頭が上がりませんなあ」

 談笑し、杯を空け、次々とシャトー・ティーグの瓶を空ける。


 高位の司教達の、まるで他人事の様な会話を天井から聞いていて、私は若干のイラついた。もう一発雷を落としてやろうかとも思ったが、思い留まった。お得意様でもあるしね。


 城が輸出する酒は徐々にダキンドン王国外で有名になっていた。敢えて王国内には流通させていない。愚かな国王や有力貴族に目を付けられない様控えていた。

 マテオ商会を通じて、エチケットに「護児城」と書かれた産地不明の高級酒として少数が売り出され、リベラ卿の収入源、そして情報源として活用されている。

 これからはオーティにも卸す事になり、活用の幅が広がる事だろう。


******


 ダキンドン王国の南にある大帝国の、片田舎。

 小さな礼拝堂の裏にある墓地に、老司祭が祈りを捧げていた。

 いくつかある真新しい墓に向かい、大勢の子供達も祈祷を読み上げていた。何人かは泣いていた。


「私は無力です」コンクラベ枢機卿は私に語った。

「選皇枢機卿などと言いながら、この小さな命を救う事が出来なかった。彼女達は苦しみと恐ろしさの中で殺されていったのです、私と同じ、聖職者の手で」

 悔しさに歪んだ表情で枢機卿は私に語った。

「それは違います」と私は断言した。

「あなたの御尽力で、王都では何十人もの女性や子供が理不尽な死を免れました。

 擾乱が起きれば何万人出たか分からない犠牲者も、貴方の報告書で危機を逃れました。貴方の行いは尊く、救った命は計り知れません」

「では、なぜ!目の前の子達を救えなかったのでしょう!」言葉にくやしさがにじみ出ている。

「枢機卿様。私達は王でも皇帝でも、神でもありません。目の前から摺り落ちてしまう命を全て救えると思うのは、理想ではあっても現実的ではありません。

 出来る事しか出来ない。出来る事を一生懸命やる。そう思うべきですよ」

「神様ではない、神様ではない。そうですか…」


 コンクラベ枢機卿の孤児院歴訪。

 実は孤児院の不正を聞き込んで、行方不明となった孤児達を調査する内に、奴隷として売られ、強姦され妊娠させられ死んでいった事が判明したのだ。王都で救われた少女達は、その中の一部だった。


 私は、会ったことの無い少女達のために祈った。

 強欲の犠牲となった命のために、枢機卿と一緒に祈った。


******


 城の三の丸に新築された建物から、大きな包みが鉄道駅に運ばれる。

 例によって偽洋風の二階建て、寄棟造りで中央にバルコニーと尖塔を持つ、赤壁塗の建築だ。

 建物の中、大きめの作業場では、多くの少女達が積み上げられた紙を、右から左へ、右から左へと動かしていた。

 その中央には、紙とほぼ同じ大きさの台があり、左右逆さに書かれた文字が並び、少女達はローラーでその文字に黒い墨を塗り、紙を乗せ、上から押さえつけていた。

 この屋敷は、新たに完成した「印刷所」であった。


 王国と隣国が戦争になる、戦争が飢餓を広め多くの子供達が魔の森に捨てられる様になる、そんな最悪の事態を回避するための戦い。その仕上げが、この1枚ペラの「新聞」による情報拡散だ。勿論新聞にはその上端に「ダキンドン情報・王国承認」と題字が飾り文字で書かれ、中央には王家の紋章も描かれている。


 この「情報」という武器は、世界を革新させるだろう。

 「情報」だけではなく、市井に文字が溢れ、様々な知識が恐ろしい速度で広められればどうなるか。貴族や教会による「知の独占」が揺らぎ、平民が大きな力を得る。

 故郷でペストによって聖書を読める聖職者が大量に死に、印刷によって商人が聖書を持ち歩き、その結果ヨーロッパ全土で新教と旧教が対立する事になった歴史的変革を思い出す。

 そんな大変な代物を、その実力をまだ理解できていない今の王国に、オーティを通じお墨付きを貰ってしまった。我ながら強引だが、「計画通り」。


 鉄道に積み込まれるのは新聞だけではない。

 糒蔵(食糧庫)から多くのトウモロコシや、悪魔の穀物という汚名を雪がれた米も芋も積み込まれていた。

「暫くはお酒を仕込めない…」とモネラ。

「お菓子造りも今年はちょっと少なくするの?」と悲しそうなヤミー。

「あらぁん?お乳はたっぷり出すわよぁ?」こらプリン、ここで出すな。今や城は家畜が増え、牛の乳も採れる様になっている。ミナトナの乳は、人数の増えた乳幼児の滋養のために限る事にした。この決定をした時の男性陣の絶望の表情たるや、女性陣の彼らに対する軽蔑の眼差したるや。

「外では人が生きるか死ぬかの状態だ。城も少し我慢しような」と彼女らをなだめる。

 王国の飢餓対策のため、城も穀類を可能な限り提供するため、備蓄を含め相当な出血を求められた。但し無償ではない。それなりの対価は頂いている。それが意味を成すのは、騒動が落ち着き、王国から物資が齎されるまでに回復してからだ。

 早くそうなって欲しい。

 そんな思いを込めた多くの荷物が鉄道駅に向かうのを、皆で手伝う。


「俺たちを捨てた王国に、ここまでする必要あんのかって思う。例え、俺たちみないな捨て子を出さないためとしても。なあ御屋形様?」ダンが、わずかな不満を交え、質問する。

「今度の事は、単に飢餓を救うだけじゃないよ。あの面白いお姫様が、『子供を大切にしよう』って皆に教えてくれるだろう。そのための、ちっとの我慢だ。」

「そうか。そうなったら、本当にいいな。」彼もそれを期待しているのだろう、納得した様に笑った。


「まさか一国のお姫様まで、お手をお付けになろうとは…思いませんよね?」流石にそんな気はないよ。国王なんかになりたくなし、一国の血筋を断絶させる訳にも行かない。だからステラ、冷気をしまいなさい。


******


 王国内の貴族達に激震が走った。

 各領都では一枚の紙を前に、有力貴族とその一門が苦悩に満ちた顔付きで、無言の内に思惑を巡らせていた。

 そこには、オーティと綽名され嘲笑されていた愚王の娘を、聖女と讃えるかの様な言葉が綴られていた。しかも簡易ながらも象徴的に描かれた王女の絵まで描かれていた。

 それまで王家を見限っていた国内の有力貴族達は、今後の方針をどう改めるべきか思い悩む事となった。

 そして、目の前にあるこの1枚の「紙」、これが一体どの程度の力を持つものなのか、正確に把握できる者は一人もいなかったが、何か得体の知れない脅威を感じなかった者も一人もいなかった。


******


 王国中の街では、新しい歌が流行り、夜の酒場では吟遊詩人が声高にその歌を歌い人気を博していた。では早速夜の酒場で飲みながら聞くとしよう。


魔の森の山奥で修行をして

邪な人の心を打ち破る

この頃流行りの聖女様

オーティー!オーティー!(ワーオ!)

必殺の力雷破りで(ズバババーン!)

銭に狂った司教様も(イィーヒッヒッヒ!)

大陸の果てまで運び去る

やって来た来たスーパーウルトラ聖女様

オーテンバー!オーテンバー!雄々しき命

(ィヤッホー!)


 どうかと思うよこの歌。てか色々アウト!何だよ途中に入る絶叫!責任者出てこい!

 作ったの私だ。スミマセン酔って書いた結果がコレです。


 熱唱し終え、聴衆の歓喜と熱狂に包まれた吟遊詩人は一瞬「何歌ってんだ俺?ハズカシー!」と微妙な表情をしていた。しかしすぐに「二番!!」と熱狂の渦に向って行った。

 ゴメンナサイ、ホントーにゴメンナサイ。


 歌に書かれた事実?は、全て城から運び出された「新聞」によって広められた物。

 そして、その新聞には王女オーテンバーの美しく気高く、悪の枢機卿を糾弾し指さす姿(ホントは気絶してたんだけど)がコマッツェによって描かれ版画にされ、印刷されていた。

 凶作に喘ぎ戦争の噂に絶望していた王国の人々は、この明るい話題に飛びついた!

それだけではない。オーティはトウモロコシや芋の調理法を伝えるため、城からの物資とともに王国内を歴訪、善良な教会で礼拝に与り、礼拝後には調理法を実演、更に握手会の大サービスを行った。

 そしてその都度新たな『新聞』に、平民と共に新しい穀物を調理する、美しくも慈愛溢れる姿がこれまたコマッツェの手によって印刷され、王国内に広まっていった。いや、王国外にも広がって行った。


「あんまり彼をこき使わないで!」ムジカに怒られました。なので一部は私が描いたら「絵が古いわね」とステラにこき下ろされた。コマッツェ、早く弟子を取れ。


******


 新たな穀物の流布。僅かであり、王国の数パーセントにしか広める事しか出来ないが、それでも多くの人はこれに望みを託した。冬の間も育てられ、予想外の収穫を国内にもたらした芋は、聖女の名と姿と共に、王国の希望として人々の心に刻み込まれた。

 誰もが無力な国王、落日の王国と思った中に、オーテンバー・ダキンドン王女は聖女として崇められ、王国の中興の祖と期待されるまでになっていた。

 そして貴族達も王女を無碍にする者はいなくなり、次々と王都に戻る事となった。


「いい話だな~」

「いい話じゃないわよ!誰よー!!あの歌作ったのー!!!ハズカシー!!!!」

 後日王城に潜入してオーティと会った時、泣きながら言われた。

 ごめん私ですと心の中でお詫びしときました。


 大陸暦フィフティーン、ゼロセブン。この騒動の後、ダキンドン王国と貴族連盟との間で戦争準備撤回の合意が締結された。永○一郎の声で。

 ステラ・アンビー「もう王女一人でいいんじゃないかな」活躍を奪われた妻達です。

 歌、削除要求来たらどうしよ、替り考えとかないと。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けると大変嬉しく思います。


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「このネタっぽいのがわからん」

「歌、やっぱりアウトー!」

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[気になる点] 色々混ざってます? レインボーマン、キューティーハニー、バンパイヤのテーマ?
2022/12/05 05:18 通りすがり
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