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30.これが魔の森の城だ! 全1部

前回のあらすじ:ムルロアとテンペラーの前後編は当時超必見モノで、旅行から家に帰るのが待ち遠しかったのを憶えています。欲しかったなあ、変身サイボーグで6人分。

 出城の二之丸。

 長旅の所持品も投げ出しての撤退だったのか、輜重は見当たらない。治癒のため騎士に鎧を外す様命じ、応じられた。鎧のお蔭か騎士達の怪我は軽くて擦り傷、重くて骨折、すぐに直せた。魔物除けのために同行したのだろうか、やはり武器を持たなかった女魔導士が一番重症だったが、食事当番の少女に介抱され、意識はしっかりしている。

「もう大丈夫です。どんな魔物も、角竜であっても、私たちが倒しますよ」

「ああ・・私をお救い下さったお方。何と感謝したらよいのでしょう?角竜でもお守り頂けるとは…え”?角竜?!」

 え?眼鏡がズリ落ちてる。崑ちゃんかな?

「つのりゅー!!」わ!驚いた。

「そんなの居るわけないじゃないのー!居たら私達皆死んでるよー!!嘘も大概にして!」あのケラトサウルス、そんな物騒な代物だったのか。

「いや嘘も何も、これ去年倒した記念なんだけど」

 すると、アグリが角竜の爪、特徴的な色と質感を持ったナイフを差し出した。

「え。これ。ほ、ん、も、の。ひゅ~」

 とても賑やかな女魔導士さんは気を失った。一目で角竜の角と解るとは大したもんだ。怪我の所為ではないので女の子たちにお任せしよう。

 周囲を見ると、治療を終えた騎士達がナイフに注目している。

「えー、兎に角皆さん、しばらく温泉と食事でお休み頂き、装備をお直し頂いた後に、護児城へご案内申し上げます」

「ご厚意、重ねて感謝します。総員、甲冑と武器をこの場の隅に置き、城主様の案内に従う事!」

 レンドリー氏の命一下、騎士達は装備を城の東側、動線の外れに置き整列した。ノビている女魔導士を除いて。


 護児城に戻ると、年長の各班長が集まっていた。ステラが「お客様は50人程度で、お迎えは上位貴族待遇で宜しいですか?」と予定を尋ねる。

「それで行こう。王様レベルだとその後のインパクトがなくなるからね。辺境伯の代理人って事で盛大に行こう」

 ダンが「ヤミーから食事の準備に3日は欲しいそうです。ムジカは今までの曲なら2日だそうです。オーリーは楽団と防衛弾の制服を金糸で装飾するのに4日です」

「オーリー、年長女子のドレスは?」

「今年の冬の祭の私達の艶姿、忘れちゃったあ?…のですか」敬語敬語。

「バッチリ、いや大変煌びやかであった。それを着て応じる様に」

そこにトトトとミッシが歩いて来た。

「御屋形様あ、あのね、もうちょっとでリンゴが咲くんだよ?」

「ミッシ、今は大事なお話なのよ?」「ちょっと向こうで遊ぼうね?」

「でもリンゴの花かあ、綺麗だよね…」

「「「「あ!」」」」

 花が咲くまで丁度5日。みんな、大慌てにする必要はない様だ。

 ナイスだ我らの天使。


*******


 見附城で騎士達は御殿の温泉と食事、畳の暮らしを満喫した。やはり温泉とウォシュレット付き水洗便所、そして食事は大好評であった。

 時折出没する魔物との戦いを見てはクロスボウに驚いていたが、それを奪って出城を占領しよう等という者は誰一人いなかった。その先に起こる怒りの反撃を一同容易に想像出来たからだ。そんな目に遭うより、温泉、ご飯、お布団を満喫する方を彼らは選んだ。


 元気を取り戻した騎士達は、少年達に稽古を付けた。しかし平民の捨て子と聞いていた10歳前後の子供達は、基本の型を身に付けていた。

「どこかで訓練を受けたのかい?」「はい!御屋形様から教えて頂きました!」

 そう答える様に口裏を合わせておいた。

 しかし屈強な男騎士には勝てない。勝てないが、よい訓練となった。接近戦になった時点で魔物には勝てないが、もしそうなった時の心得や、身の熟しは会得出来た様だ。


「角竜はどこ?!タイム様はどこー!どうやって倒したの!お願い教えてー!!」

 賑やかな声がする。

「まーまー温泉へ」カポーン。「はふう~、てんごくう~」賑やかな人だ。


 などと言っている間に、出城当番の交代を乗せた魔動機関車が到着した。

 手入れを済ませ輝きを取り戻した鎧に身を包んだ騎士一同、初めて通される出城駅に首を傾げていたところへの入線に、「何だあれは!」と驚いた。それはそうだろう。

 汽車が分離し先頭に接続し直され、ロケット号とベンケイ号の魔導機関車二重編成、それに客車7両が続き、レンドリー氏、騎士達、女魔導士が客車に乗る。

 ベルが鳴り客車のドアが閉まる。笛とともに列車は動き出す。

「おお!」と驚く大の大人たち。

 列車は駅北の門を抜け、魔の森に入っていく。

「また森に入るつもりか?!」「また魔物が襲ってくる!」「マギカ!防御魔法を!」

「駄目よ!この森の魔物じゃ私の魔法なんか役に立たないのよー!!」

 とそこにきーてーきいっせーしーんばーしをーの鉄琴。


「皆さまー本日は護児鉄道、花街道線にご乗車頂き誠に有難うございますー。本鉄道は沿線に魔物防御の結界を連続的に展開しておりー、突破された実績はー開通以来過去3年の間ー一度もありませんでしたので、ご安心下さーい」と口上を述べる。追っかけられた事はあるけどね。

「えー、防御、この、長ーい鉄の線の道全部に?私の魔法って…あはは…」

 彼女の何かが崩れたみたいだ。

 なんて言っている間に列車はスピードを上げる。

「これは、馬車よりも早い!」「騎乗の最高速度か?」「しかし殆ど揺れない!」

 揺れてるんだけど、馬に乗ってる程じゃない。もうちょっと速度を落とした方が良かったかな、失敗。


 列車は森を抜けた。そこには川、いや水堀があり、それほど高くない石垣があり、その上に白い壁と、線路の先には出城と同じ巨大な門と、それを見張る櫓があった。

「ここが本城か?」

 減速した列車は城門をクランク状に曲がると…

「「「おお!!!」」」

 一同は歓声を上げた。鉄の道の両側を、薄紅の花を満開に咲かせた樹々が、一同を歓迎する如く並んでいた。

「始まりの楽園の様だ」「美しい」「こんな美しい景色は見たことが無い」

 逞しい騎士達も、この時は花に見とれた。

 自信を喪失していた女魔導士も「ほわ~」と妙な声を上げていた。


「あれを見ろ!」

 左手を指して叫んだ騎士の先には、巨大な二本の塔が聳え、その先に、これも巨大な屋根が見えた。

「あれが本城?」

 そのタイミングで鉄琴を鳴らした。はーるのー、うらーらーのー、ノキブル川~、と。

「只今~本列車は~、季節の祭礼~、結婚式典を執り行う礼拝堂、南之院を通過しま~す」

「あれが、礼拝堂?」「礼拝堂というより大聖堂ではないか!」

「赤い柱に白い壁…見たことが無い建物だ」

 やがて列車の右手が開け、ミカンの花、そして黄色い菜の花が、青空の下に咲き誇っていた。

「やはりここは普通ではない。あの魔導士は言っていたが、子供だけで、これだけの木々や花の世話できる筈がない。この樹々から採れる果実だけでも、相当な財産になる。

 だがこの鉄の馬車といい、あの出城と言い、魔物を一撃で倒す弓と言い、そんな程度の財産で出来るものではない。やはり想像を超えた魔導士だ」

「あ!あれが本城だ!」

 その裏返った叫び声に前を見ると、リンゴの花の向こうに…

 山一つを石の壁とその上に白い壁、更に多数の二階三階の塔が包み込み、その中心に五階の巨大な塔が聳える、領都はおろか王城を凌ぐ、しかも見たことが無い建築が聳え立っていた!

「あれが魔導士の城か!!何という規模、装飾!中央の塔は金を使っているのか?!」

 列車は更に曲がり、三之丸大手門を潜った。

 レンドリー氏は2つの門、朱雀門と三之丸大手門を突破するために必要な犠牲を計算しようと試みるが、あの大聖堂から攻撃を受けた場合の事を想起し、考えるのを止めた。


*******


 列車は大手裏の中で停車し、「終点~三之丸大手~」との声が響いた。

 そこには、緑のズボンと青のジャケットに身を固めた少年達と、白いスカートと赤いジャケットに身を固め、金色の喇叭や見たことが無い楽器を手にしたた少女達が整列して待っていた。

 そして、その最前列に、白いスーツとマントで正装した私が立った。


「総員下車、整列!」レンドリー氏の号令一下、騎士達は列車を降り、整列する。


 私は一歩前に出て、声を張り上げる。

「私は、この森に、生みの親によって捨てられた子供達を守る魔導士、タイムと申す者!リベラ・ガードナー辺境伯の騎士、レンドリー・キッシンジャー殿とその一行を歓迎します!」

 これに彼が答える。

「この度の歓迎並びに出城での多大なる御恩に、深く感謝します」


「では案内申し上げます。リベラ・ガードナー新辺境伯に敬意を表する!」と挙手し、ダンが答え、指揮用の剣を抜き、叫ぶ。

「リベラ・ガードナー新辺境伯、紋章掲揚ー!」

事前に調査した新辺境伯の紋章を刺繍した旗を、儀仗役の子が高く掲げ、同時にムジカが練習させた音楽好きの少年少女、いやもう立派な軍楽隊が、辺境に伝わる「収穫の歌」をラッパと太鼓、そして鉄琴で演奏する。


 これにはレンドリー氏は更に驚いた。いや、彼の麾下一同も驚いた。掲げられた紋章は、剣が獣を刺す紋章、辺境での戦いを象徴する前ガードナー家紋章、ではない。

 麦の波を左右に、中央に手と手を握る盾を配した紋章。腐敗した前辺境伯メダガニー討伐の内諾を王国から受けた、現辺境伯リベラ・ガードナーが新たに定めた紋章だ。

 そしてこの「収穫の歌」は、前辺境伯メダガニー一派を駆逐する戦いの中、重税に晒られた農民を応援するためにリベラ卿が軍勢に歌わせた、云わば彼らの心を一つに纏めていた歌、そう、新たな領地の歌だった。

 勿論事前に探っておいた。リベラ卿は何かの祝典があると、この歌を領主の館で領民とともに歌っていたのだ。とても良い歌を選んだものだと感心したものだ。


 この曲を、城の楽隊でも演奏できる様にムジカと一緒に編曲した成果が、今騎士団一行の驚きと、その後に涙を流す数名の騎士の姿に現れた、そう確信した。

 一行は、掲げられた旗に敬礼を捧げ、何人かは歌を口ずさんでいた。


 演奏が終わる。続いてダンが叫ぶ「護児城、紋章掲揚ー!」

 続いて、来賓歓迎に備えて決めた城の旗-赤い血、緑の森、青い空、その真ん中にそびえる白い天守の旗を掲げ、畑仕事の時にみんなで歌った仕事歌を演奏した。

「刈ろう!採ろう!実りの時が来た!豊作だ豊作だ!」

 楽団以外の子は騎士団に負けない様に大きな声で歌っていた。それを聞いていた騎士団は、皆驚きつつも、笑顔であった。


「これより来賓を先導します。今一度、列車にご乗車下さい」

 騎士達は再度列車に乗る。頃合いを見図り、汽車が笛を吹き、ドアが閉まる。

ダンが号令を叫ぶ。「左向けー、左!」さあ、パレードだ。

 ムジカが答え、演奏を始める。

ドラムとシンバルが鳴り、勇壮な前奏が始まる。

トランペットの主旋律に入り、ダン達防衛組を先頭に、ムジカ達音楽組が続き、それに合わせて列車がゆっくり動き出した。

 音楽は…私の個人的な趣味丸出しの、某怪獣映画マーチもとい、その原曲?である和太鼓とオーケストラのためのおふざけ(ブーレスク)な曲だ。微妙に変拍子があって行進し辛い所は若干変えてしまった。作曲者の先生にすみませんと心で詫びつつ。


 大手前の空き地を過ぎると、三之丸の道には、年少の子達が「ばんざーい!ばんざーい!」と声を揃えて両手を挙げる。手には辺境伯の紋章を描いた小さい紙の旗。騎士団はこれにも驚き、大いに喜び子供達にたちに手を振る。

 どうやら歓迎の気持ちは通じたみたいだ。


 この世界には十字軍もオスマン帝国との衝突もなかった。吹奏楽で行進するという文化がまだ成立していなかった。その所為か、騎士一同、相当な興奮を以て列車から音楽と歓声に喜んでいた。


 三之丸のメインストリート、兼用軌道(路面電車が走る様な、自動車道路と路面電車が一緒に走る道)に、この時に備えて建てた二階建ての商店(まだ中身は無い)、それに続いて十字路の左右に建つ櫓付きの大商店を前に、子供達は旗を振る。

 列車は二之丸前の馬出曲輪を通過する。二之丸の西門を固める強固な構えに、レンドリー氏は顔面蒼白であった。

 パレードは馬出門と西出門をくぐり、本丸白金門前で演奏を終えた。一行は下車し徒歩で白金門を過ぎる。誰もが輝くミスリルの門扉に唖然としていた。


 白金門を超えると、豪華絢爛な唐門と、その先にこれまた豪華な本丸御殿の車寄せが一行を迎える。

 さらにその上に聳える遠侍の大入母屋、そしてその奥に聳える大広間の破風板の華美な装飾に、一同は溜息をついた。車寄せの左右には、ガードナーと護児城の旗が並んではためいていた。


 私の案内と、城内の少女の案内で、騎士一同は車寄を潜り遠侍で一息ついた。一行を御殿の中心となる巨大な建物、大広間に招待する。レンドリー氏が、上級の騎士10名程を選んで大広間の奥、一の間と、開け放たれた二の間の席へ進んだ。他の騎士は手前の三の間に用意した席で待機頂いた。

 金の下地に描かれた魔物の絵、天井は漆塗りと金の金具で彩られた格天井。そして、廊下の外には、木と岩と苔と泉が織りなす自然の美を縮小した庭園。騎士団は襖を背に、庭に向かって着席する。

 普通、城主である私は大広間奥の一の間上段に着席するのだが、今回は対等な立場で臨むので上段を横目に向かい合う形でテーブルを配している。折角なので庭の風景を楽しんで頂くため、私は庭を背にしてテーブルの中央に付いた。


「遠路はるばる、魔物の襲撃の危険を超えて来訪したご苦心を察します。まずはお寛ぎ下さい」

 席に置かれた細長いガラスの杯に騎士団は目を奪われ、そこに少女達が白ワインを注ぐ。すると杯の中に、細かな泡が立ち上り、再び一同は目を奪われる。

「この城内で取れたワインです。樽で熟成したワインを熱さずにガラスのビンに詰め、ビンの中で寝かせたものです。ブドウの甘味が酒に変る時に出る泡をビンの中に閉じ込めます。すると、樽の中で泡立つ風味そのままを瓶に閉じ込めたワインとなるのです。これから暑くなる時期には最高ですよ」

 そして、淡い色のドレスを纏ったステラ、アンビー、プリン、オイーダ、そしてウェーステが私の左右に着席する。

 その瞬間、レンドリー氏の表情が強張った。

 ウェーステは何も隠す事なく、長い耳を金色の髪から露わにしていた。


昔行ったなあ、エペルネーのモエ・エ・シャンドン。定番のドン・ペリニョン像と記念撮影も。

今じゃあ年数回しか飲めないシャンパーニュ。コストコの安いカヴァでガマンの日々です。それも美味しいけど。

あ、護児城の旗は何かアフリカの国旗みたいになりました。子供の頃、色とりどり、デザインもユニークなアフリカや中南米諸国の国旗は好きでした。


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