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26.貴族だ!エルフだ!見附城を襲う魔物の群れ

 前回のあらすじ:アンダーソン作品のサブタイトルってダブルミーニングや皮肉が効いてていいですよね。勿論原題の方。

9/29 ウェーステのイメージ画をupしました。

 この城に住んで4年目。また冬が来たが、食料には売る程の備蓄が出来てどんと来いだ。

 結婚後、「御屋形様夫婦は子守りは卒業です!」と女性陣。

「却下だ」「そうよ」「そうじゃ」「なんでー!」

 ちゃんと当番制で幼児年少子供達の世話はする。それが子を成せない私達夫婦の、代償行為に過ぎないかも知れないが、それでも大切で幸福な時間なのだ。


*******


「今年に入って、この森に来る子が減りましたね?」

「そうじゃ、です、なあよ?およよ?」

 ステラはそこそこ、アンビーは珍妙な敬語で尋ねて来る。教育が進んで読み書きがある程度出来る様になった子には、貴族が使う敬語も「教養」の一科目として教える事とした。将来貴族と接触する可能性がある二人は強制だ。

「よく気が付きました。南の国、この森のすぐ南にあるガードナー辺境領で、領主が平民に殺されました」

「え…!」「ほう~う、やるのう!」

 辺境伯領出身のステラと、基本的に自由民であるアンビーの反応が対照的だ。

「その後、農民の生活のため良い政治を行う領主が辺境を治め、子供を捨てる家や村が減ったのです」

 複雑な表情のステラを見て「ステラ、私は外の統治に負けるつもりはありません。この城を、より良い、幸せに暮らせる場所にするため努力します」と語る。

「そうよね…っと、その通りですね」

 慣れない敬語に、ステラが苦笑いで返した。


 そんな秋晴れのある日、三之丸駅の非常通知ベルが鳴り響いた。我が郷里のモールス信号を再現した通知は

「キゾクノヒメ ホゴ ゲンバ カクニン タノム」だった。

 この王国の言語はもっとラテン語系だけど、そんな意味。追加生産した機関車ベンケイ号で増援隊を出城へ向かわせ、私はスーツに着替え瞬間移動を…と、ドレスに着替えたステラが駆けて来る。

「私も城主の妻として貴族に対応します。アンビーちゃん、あなたは?」

「わしゃここで城の護りを支援する。接待はステラに任せた!」とステラを伴い現地へ飛ぶ。

 ついにこの時が来たかああ~。


 出城の二之丸に、泥だらけのドレスに身を包んだ少女と、甲冑を着た騎士、侍女が、城の少年達に介抱されている。料理班のヤミー達が泥を落として傷を洗う。すると…

「エルフだ」

 ドレスの令嬢の金髪から、長い耳が現れた。

「エルフって何だ?」「知らねえのか?」「じゃあお前知ってんのか?」「おら知らねー」どうやら付近の農村にはエルフの存在は知られていない様だ。

「何言ってんのー!先ずはこの人達をたすけなきゃ!御屋形様!この人達大怪我してない?!」

「おうヤミー、君の言う通りだ。大丈夫、かすり傷だ」と言いつつ骨折や裂傷を治癒した。

「あ、貴方は…」「今はいい、先ず体を休め、清めて欲しい。もう貴方達は安全です、私達が守ります。ウェーステ嬢」

 三人はハっとしたが、力が入らない様だ。鎧を脱がせた女騎士を含め、料理組が三人を抱えて湯殿に連れて行った。


「エルフって何だ…ですか?」ダンが聞く。

「深い森に住み、自然の中で生き、強い魔力を持ち、数百年を生きる種族だ。そして、男も女も年老いても非常に美しいそうだ」

「ああ、あの姉ちゃ・・姫様、とても美しゅうこざました」

「ございました、だ。あと、姫は王族で、貴族の娘は令嬢、お嬢様だ」

「ん~もう!任務中はいいだろ!」「そうだなあ。午前中だけとかにしとくか」

 と温泉の方から

「ふう~」「あはあ~」「んはあ~」

 と何とも艶のある吐息が聞こえてきた。寛いで頂いている様で何よりだ。


 ダンから暫く新婚生活について聞かれたが、ガッカリする程今まで通りっぽさを話したところ「姉ちゃん泣かすな!」と何度目か分からんツッコミを受けた。なんて時間を過ごしつつ、エルフ様御一行が寛ぎ終わるのを待った。急がないから、是非ゆっくり休んで欲しい。

 二時間くらい後、出城の本丸御殿、大広間で浴衣に着替えた令嬢、騎士、侍女の三名と面会した。三人とも…美しい。エルフの令嬢はもとより、あちこち骨折し青色吐息だった背の高い女騎士、小柄で庇護欲を煽る少女も美しかった。

 冬も近いので、浴衣に丹前という出で立ちが外人観光客っぽ過ぎでアレだが。


「私はこの出城と、この北にある本城たる護児城の城主である、魔導士タイムと申します。

「私は第一婦人のステラと申します。とても厳しい旅であったかとお見受けました。私達は全力で貴方達を護ります」ステラ、上出来だ。


 令嬢がこちらを向き、

「タイム様。先ほど私をウェーステと呼びましたね。どこかでお会いした事でもございましたでしょうか?」

「ございませんが、私の魔力は時と場所を操る物です。ご理解下さい」

「全てお見通しという事ですか?!…参りました」

 溜息をつき、美しいエルフ嬢は自己紹介した。

「私はダキンドン王国ガードナー辺境伯の4女、ウェーステ。ご推察の通り、エルフの血を引く者です」

 ハーフエルフか、その子孫か。

「色々お辛い事もおありでしょう」

「いえ、私の知る全てをお話したいと思います」

「お嬢様!」隣の女騎士が立ち上がった。

「クッコ、いいのです。この方たちは味方です」

「初めて会ったばかりの、この謎の城の者を信用されるのですか?」

 ウェーステ嬢は微笑んで答えた。

「私がこのお城…お城ですよね?ここにたどり着き、魔物に襲われた時、この城の騎士達は勇敢に私達を護ってくれました。そして先ほど、奥方様は私を全力で守る、と仰って下さいました。会ったばかりの、何者かも解らない私を護って下さる、と」

「実は、私達も、外の村から捨てられ、この御屋形様に守ってここに住んでいるのです。貴方と何も違いはありません」ステラが笑顔で応える。

「この城は一体、何なのでしょう?どこの貴族の城なのでしょうか?ここは魔の森ではないのでしょうか?」

「まさか、お前達は魔族か?!」

「お嬢様!逃げましょう!」怯える二人、まあそう思うよね。

「やめなさいクッコ!貴方達は命の恩人に何という無礼を!」怒る令嬢。

「…はい」

「御無礼をお許しください。この子は、この侍女も本当に私を大切に守ってくれています。二人とも、挨拶を」

 女騎士はクッコローゼ・マケーナ、メイドはモエ・アッキー。

 今までのわずかな反応から推測すると思い込みが激しそうな二人だが、反乱の最中命がけでウェーステを逃がしたのはこの二人だったのか。

「二人とも、大変な状況の中、よく仕えてくれました。感謝します」

 するとクッコは今までの苦々しい顔から一転喜色満面、さらに紅潮し涙を流し、深く頭を下げ直した。表情豊かだな、この女騎士。侍女も涙を堪えている。


 令嬢が続ける。

「わが父は暴君、無能な統治者であり、豊かな領地を浪費した挙句、人とも思っていなかった平民たちに誅殺されました。人々が飢えている最中、贅沢ばかりしていた父の妻やその子達も皆殺しになったと聞きます。

 私の母はエルフの血を継いだ奴隷でしたが、父に物珍しさで買われ、私を身籠ったと知ると放置され、城に入る事も許されず、私を産んで死にました。エルフの血を持つ母が死ぬ筈など無いと思い込み放置した父は、エルフ族の呪いを恐れ、私を飢えさせる事こそありませんでしたが、顔も見せたこともありませんでした」

 前辺境伯は、色々と最悪だ。

「そして政変が起き、一族が処刑された事を知ったクッコが私とモエを連れてここまで来たのです」

 下手したら処刑されていたからな。でも、だ。

「こんな危険な所に来る事なかったんじゃない?何やってんの騎士ちゃんよ!」

 あ、素が出ちゃった!

「最早逃げ道がここしかなかったのだ!それがお嬢様をこんな目に遭わせる事となり…私の責任だ!くっ、殺せ!」

 名言頂きました!

「お待ちください!二人とも城から遠ざけられ、閉じ込められていた私に良くしてくれた大切な…友達なのです。二人が居なければ私も既に処刑されていたでしょう」

 ウェーステの言葉に、二人が顔を上げ、照れている。いい友達だったのだろう。

 特に、ウェーステにとって、過酷な人生で正しく育ったのは、この二人の友があってこその物だったのだろう。


「事情は分かりました。ウェーステ様、あなたは、これからどうしたいですか?城の離れに戻りたいか、母方の故郷を求めて行くか。

 あなたは愚昧な前辺境伯の犠牲者です。あなたが希望されるなら、今の統治者に理解を求めるため説得に赴きます」


 暫く令嬢は考え込んだ。

「お嬢様、帰るのは危険です。奴等は女子供も処刑した獣の様な連中です!」

 やっぱ思い込みが激しいな。

「クッコさん、あなたは美しく気高く、忠義の心は極めて高い」

「はぅ?へ、えへへ」あ、チョロいかも。おっと隣に氷の眼差しが。

「しかし私の知る限り、反乱軍の処分は一応の裁判を行い、悪質な支配層と有能な支配層を分断し、後者を今の復興に活用している様に見えます。それ故、荒れていた辺境伯領はこの1年で相当に回復しています。

 この魔の森に捨てられていた子供はここしばらく年間100人でした。それが今年は、20人にまで減っています」

 令嬢はハっとした。

「そ、その今まで捨てられていた子供達は?!顔色を悪くして聞いてくる。

「全員、ここの北にある、私達の本城、護児城で元気に暮らしています」

「そうですか!よかった、よかった…」この令嬢、良い人だな。

「処刑された領主一族は、子供も含めて、相当悪質でした。未成年にして女性や少年を嬲り殺した、正に畜生道に落ちた餓鬼ばかりだった。処刑は適切だったと私は思います」

「な、何という…そこまで我が主家は腐り果てていたとは。くっ殺」

「それはもういいから!」


 しばらく考え込んだウェーステ嬢は、決心した様だ。

「魔導士様の城には、この恐ろしい森に捨てられた子供達が、魔導士様に守られて暮らしているのでしょうか?」

「その通りです」

「もし、お許しいただけるのでしたら、わたくしもお手伝いをさせて頂きたいのです!」と、燃えるような瞳で訴えた。

「「お嬢様!!」」

「もし今の領主にこの二人の助命をお取次ぎ頂けるなら、その分も含め、子供達のために尽くしたく存じます!」令嬢は深く頭を下げた。

「とんでもない!私共はどこまでもお嬢様について参ります!何なら、わ、わたくしめがこの身をあの魔導士に捧げてお嬢様の貞操を」「私も!」「なんだそれ!」思考が飛躍しすぎだよ女騎士!メイドちゃんも!

 私の隣の気温を測ってくれよ。


 何かカオスな状況に陥った中。

「御屋形様!魔物の群れだ!」ダンが叫ぶ。

 天守に登ると、魔の森から相当数の魔物が出城に向かって来ているのが判る。


挿絵(By みてみん)

 新キャラハーフエルフの令嬢とはいかなる容姿か?!描きあがったら本話に追記し掲載時の最新話にその旨お伝えします。その前に見附城やオイーダやアンビーのウエディングドレスとか描かねば。

ラフは出来ててもフォトショで描くのがタイヘンです。

9/29描きました。


 もし楽しんで頂けたら、下の星の印を、面白いと感じた分に相応(右側が最大で5ランク)にクリックして頂けるか、ブックマークして頂けるか、「いいね!」して頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みと次章の参考になりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「伊東の温泉ホテル川良に行きたい!」

等々、お気軽に書き込んで頂けます様、お願い申し上げます。

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