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23.ばしゃキャン

前回のあらすじ:珍しく最近のアニメネタでした。


今日も結局秋のチャンピオン祭り、連投2回目。胸糞完結編です。

 帰路、あの胸糞の悪い村に見切りをつけた商人達の野営に遭遇した。

「やあ、…名前を伺う機会がありませんでしたが、魔導士様」

 商人代表として振る舞っていた若者が挨拶して来た。

「酷いところでお会いしてしまったものですね。私はタイムと申します」

「私はマテオ、ダキンドンの商人です。ボーコックの商業組合から依頼を受けて来たものの、貴方のお蔭で助かりましたよ」

 え?助かった?

「ボーコック国内では、色々文句をつけて支払いが行われなかったり、理不尽に荷物が差し押さえられたりする事が良くあるんですよ。最後は王家が損害を払うんですが、その原資は税金です。馬鹿な役目を押し付けられた私が悪いのですが」

 思ったよりヒデェ。

「それでも輸送費以外の損害を避けられたのは、タイムさんのお蔭ですよ!」

 このボーコックって国、うん。やっぱ駄目だ。何故ダキンドンはそんなお荷物を抱えているのだろうか?砂漠の東に対する緩衝地帯として生かしているのか?

「餓死して難民が流入してこない様に、支援と交換条件に難民を取り締まる様協定を結んでいるんですよ。それでも結局難民は入ってきますけどね」と苦笑い。


 その後、マテオさんと色々会話した中で、干魚、南方産のワイン、果実等城にない商品があったのでそれを買う事にした。

「おお!あなたが神か!」

 違います。そんなヘンな目で見るな!結構高価だった荷物を私の貨車に積み替え、試飲と称しワインを少し飲んだ。だが、敵もさるもの、私の正体を自然に探りに来た。

「これ以上私の出自にこだわるなら今すぐ消えます。支払いもしませんよ」

 と脅したら、話題をボーコック王国に切り替えてくれた。マテオは言葉を選び、あからさまな誹謗は避けて話したが、色々な事実を聞くにつけ…やっぱダメだ横の国。契約を守る気も無ければ嘘偽りを気に留める事もない。

 まあいいや、多少なりとも戦利品を獲られたので「ヨシ!」としよう。後は早くこの地を去ろう。


「また再会する機会があれば、せめて杯だけでも交わしてもらえませんか?」

「是非。互いに他国の情報を教え合いましょう、対価の範囲で」

 握手を交わし、私は先を急いだ。真面目で若い商人マテオが、あんな貧乏籤を二度と引くことが無い様に祈りながら。出来れば、あんな人と城で交易したいものだ。


 その後、逆の道、あの人心の汚れまくった村へ戻る嫌な道を進んだ。その途中、夕方。麻の袋に穴を明けただけの、服とも言えない布を纏った、オイーダ、ドレス、他二人の少女と遭遇した。昨晩初めて会った時の快活さも愛嬌の欠片も感じられない、髑髏の様な顔だった。

「やあ。食事しないか?」と声を掛けたが、何も答えが無い。

「私は、オイーダとドレスに、昨日歓迎してもらった。だから今は君達を歓迎したい。どうだ?」

 四人は暫く立ち止まり、ようやく無言で頭を深く下げた。


 日が傾いたので、付近の川沿いで野営とした。即席で風呂を作り、4人を先に入れた。余りに酷い格好なので馬車に積んでいた浴衣に着替えさせた。

 肉を焼き、シチューを温め、パンとともに食べさせた。一口食べると、皆涙を零し、黙々と食べた。何を話しかけても、何も答えが返ってこない。


 陽が沈んだ。灯りを点し、風呂に入りながら酒をチビチビやる。得る物が無かった旅だったな。いや、多少の商品や商材の情報を手に入れたし、マテオの商会と出会えた。おまけにボーコックはあまりよいところでない事がわかっただけマシか。

 南の帝国に行って干し魚を大量に買って帰るか、マテオさんの商会関連から。

「更けゆく秋の旅、一人侘しく…」と歌いながら飲みながら温まっていると、オイーダ達が来た。

 彼女らは浴衣を脱ぎ、風呂へ入って来る。泣きはらした目でオイーダが話す。

「助けてくれて、拾ってくれて、ありがとうね。結局あたしたち、夫からも親からも村からも、子供からも追い出されちまった」

 知ってた。

「魔導士様のとっても高い治癒のお代なんか払えないのに、お湯も、おいしいご飯まで頂いちまった。今あたしに出来る事は、こんな事くらいなんだ。思いっきりあんたの好きにしてくれて、いいんだ。あたしもあんたなら大喜びさ」

 顔を赤くして微笑んだオイーダに、ちょっと来るものはあった。が!

「じゃあ、体を好きにさせてもらう」

 目をつぶって体を預けて来たオイーダを抱き止め、股間を見つめる!

「梅毒、そしてクラミジアだ。股がかゆくなる事が多いだろう?」

「え?」ポカンとするオイーダ。

「多分無理やり結婚させられてからだろう。風呂嫌いで不潔なあのヒョロヒョロに移されたんだ。大丈夫、まだ化膿してない。毎日風呂に入って薬を塗り、清潔にしていれば治る」

 まだポカンとしている。

「次!」

 ドレスには、「兄弟だ」なんて馴れ馴れしく言っていた亭主に加虐趣味があったのか、全身に打撲の後があった。

「君も大丈夫だ。もう君を殴る奴はいない。また君を殴ろうとする奴が来たら私が倍にして返してやる、いや、百倍返しだ!」決まった!これで金融庁監査もOKさ!

 なんて内心イキってたら、「ああー!」とドレスが泣き崩れた。

「あー、オイーダ、彼女を宜しく」と頼むと、何か苦笑いされて答えてくれた。

 次の少女イナムは産褥後の局部の裂傷が化膿したまま悪化していた。

 婚約中だった少女ジーミャは、婚約者から移された梅毒を患っていた。

 どちらも時間逆転で治癒し切った。


 外科の治療や短期の感染症は時間逆転で何とかなるから楽だ。しかし抗体が出来ないと埒が明かない伝染病や遺伝的な癌は、薬や摘出が必要になるな。なんてまたチビチビ飲み始めると、周りで泣いていた女達がしがみ付いて来た。

「あー、私には妻が二人もいるんだ。無理にご奉仕なんてする事無いんだよ?」

 それでもオイーダが抱き着いてくる。真近で見ても、美人だ。

「本当はさ。あたしたち行くところが無いんだ。あんたに縋って、あんたの奴隷になって、養って欲しかったんだよ!」

 他の三人も私をじっと見つめている。

「それなのに、お湯やご飯を頂いた上に病気まで治してもらっちゃって!あたしたち、どうしたらいいのさ」


 改めて一人一人を見つめる。この女達は、善良なのだろう。必死に訴えて来る。私は、この酷い地に住むこの女達を信じる事にした。

「働くんだ」

「どこで?どうやって?」

 人を裏切ったり、弱い物に石を投げる事も無く、ひたすら耐える人生だったんだ。今、自分が産んだ子からも「ゴブリンまみれ!汚い!出てけ!」と石を投げられて村を追い出されたばかりだ。


 あー。見ちまったものはしょーがない。関わっちまったものは責任取らねば。

「私の城で、200人いる子供達の面倒を見ろ。半分以上が5歳以下だ。パンを焼き、スープを煮、おしめを替え、風呂で洗い、寝かしつけるんだ。

 君達には住む部屋も、着る服も、食事も、あまり贅沢は出来ないが約束するし給金も出す。どうだろう?」

「子供の世話、なのかい?」彼女達の脳裏に、自分を捨てた我が子の醜い姿が、奪われた生まれたばかりの子の顔が蘇っている。だから私は断言する。

「君達の子は君達を裏切った、しかし。私の城の子は君達を裏切らない。君達も子供達を裏切るな。条件はそれだけだ」

「うふ、うふふ。子供に捨てられたあたしたちが子守りで生きていくのか?それも運命かねえ?」

 何か自棄になった様に感じ、しばらく様子を見た。


 オイーダは決意して答えた。

「わかったよ、魔導士様が言うんだ、私達を悪くなんてしないだろ?是非、それで食べさせてよ。それであたしたちを好きにしてよ」

「いや好きにしないから。お給金も払うから」

「好きにしておくれよー!好きにさせておくれよー!」

「そうよ!あんたとってもいい男だよ!好きにしてよー!」

「あたしもよー!あんな親が決めたクサイ男なんか嫌!」

  わずかだが、彼女達の心に希望が灯った。


 それから数日間、体の病は癒えたが、心の傷が深く残っている元人妻4人と、キャンピングカーでゆるゆるなキャンプと冬の食糧確保の旅を楽しんだ。今まであの村しか知らなかった彼女達に、高山からの見晴らしも、山の中に湧きだす天然温泉も、魚が豊富な港町から見える一面の海も、非常に刺激的だった様だ。夕食時には我先に感想を教えてくれた。


 時に皆で露天風呂、時に車内の風呂を楽しみ、走行中は彼女達の歌を聞いてご機嫌に過ごした。道中、私が子を成せない事も話したが、彼女達の態度に何も変わりが無…逆に異常に積極的になった。

 誰もいない温泉の中で、隣に座って体を寄せて来るオイーダが耳もとで囁いた。

「あたしさ、あ皆もだけど、もう最初っから御屋形様の妾だったって考える事にしたよ!こんな幸せで、今まで感じた事ない気持ちいいコトしっ放しだったんだもん!あたしたちは御屋形様だけのもんなんだ!」

 彼女達は、心のバランスを保つため、過去を切り捨てる事にしたんだろう。それで心が保たれるなら、それもいい。

「みんな!御屋形様がいいってさ!」とオイーダが言うや、ドレス、イナム、ジーミャが温泉に入って来た。今夜は皆温泉で乾杯だ!

 真っ赤な笑顔のオイーダ達を連れて、魔の森に戻った。勿論、出発初日、森の外の数日の時間を遡っての到着だ。


「こ、ここってさ、魔の森って言うんじゃないの?」キャンピングカーから降りて4人は出城を見上げて茫然としていた。

「え?あれ、建物?あれまさか御屋形様のお城なの?凄い…」

 丁度当番だったダンに迎えられ…おや?ダン、何私の事睨んでんの?

「…後で姉ちゃんに色々聞かせてもらうぜ」ダンが怖い。

 魔の森を北進し惣構の朱雀門を潜った。街道のリンゴ並木も紅葉…ってリンゴの木は黄色じゃないのか?まあ花が咲いた時も八重桜か?ってくらい花が大きかったしもういいや魔の森リンゴ。

 夕陽の中、赤く染まった街道に四人が見とれている。

「あれがお城?」「それは礼拝堂だよ」「「「ほえー!」」」

 南之院前を雁木状に曲がり、並木の向こうに城が見える。

「あれが、子供達の城だ!」

 夕陽に赤く染まった城が車を迎えてくれた。


 二之丸御殿に着くと…怖い笑顔のステラが冷気を纏って車を迎えてくれた。

「オハヤイオカエリデー」

 アンビーは、いない。面倒ごとを避けて工房か酒造に逃げてるな?

「あー。この4人は、城の厨房と年少組の面倒をお願いする事になった。

後てゆっくり紹介する」

「エー、後デユックリオ話ヲ聞キマショー」


 その夜。海の幸、といっても干物だが、それを焼いた、脂の香ばしい魚と白米を皆で楽しんだ。

 元妻組は食事の準備、子供の食べこぼしの片付けや世話、片付けに早速張り切った。食事係の少女達が「ありがとう!」と礼を言うと、「任せなさい!」と元気よく答えてくれた。ちょっと目に涙を浮かべながら。


 その夜、ステラと、嫌がるアンビーと、何故かプリン達、加えて年長組が大広間で私と元妻達をズラーって囲んで尋問。なんか銀河の英雄を思い出す。自治大学長の名前が長い人じゃなかったステラが怖い。

 道中の出来事を話すと、ステラは元妻組に起きた理不尽な出来事に怒りと悲しみに震え、泣き出した。

「酷過ぎる。それが、人間のする事なの?!子供までそんな事を?!」

 怒りに泣くステラをオイーダが抱きしめた。

「御屋形様から奥様達の話も聞いたよ。奥様も、あたしたちも、同じだよ。でもここで生きていけるんだ。幸せだよ。本当、幸せだよ」と、優しく語った。


 こうして元妻組4人は…「元から妻なんかじゃなかったのさ!だから簡単に追い出されちまったんだ。これから私達は御屋形様の妾だよ!」妾はやめようよ。

 元妻組改め姐さん組4人は地獄の様な郷里を追放され、いや逆に捨て去る事が出来、護児城の一員となった。それから4人は年長組女子の良き指導者となり、慕われたことは言うまでもない。

 年長男子も新たな女性陣に鼻息を荒くしている。

「オトコッテサイテー」女性陣から冷気を感じる。そんなとこステラを見習わなくていいんだよー。

「最近、夜がなんか楽よねー」夜泣き対応が減ったミナトナ達はエールを飲んでご機嫌だ。

 今日も城は平和だ。


******


 結局あの胸糞の悪い村はというと、ダキンドン王国や商人ギルドの抗議にも関わらず、面倒だからと問責される事もなかった。責任者の引き渡しが無かったため、ギルドは王国に抗議し、商人の派遣を停止した。それ故貧困が増加し税収も落ち、ボーコック王家も配下の貴族も増税と言う悪手を打ち、難民や餓死者が増加した。

 ダキンドン国境は封鎖され、技能を持たない難民は国境で餓死する事になった。難民の流入に対し王国の封鎖は完全でなく、国境の村々は自衛せざるを得なくなった。この事は後に色々良い影響を及ぼす事になった。


 この大惨事の原因となった、あの胸糞の悪い村は…言うのも気分の悪い結末だとだけ。

 私にとって大切なのは、身の回りの人の笑顔だ。生後間もない子を取り上げられたイーナムも今ではジーミャと一緒に、幼児を自分の子の様にあやし、可愛がっている。この城で彼女らの心の傷は、ゆっくり治っていくだろう。私にはとっては、それだけでいい。


 今回新登場のヒロイン達、もし村から追放されていなければ餓死が病死かどちらかでした。塞翁が馬とはまさにこれ。いずれキャラデザをUPしなければ。


 もし楽しんで頂けたら、下の星を増やして頂けるか、ブックマークして頂けるか、「いいね!」して頂けると大変嬉しく思います。

 また、感想を頂けると励みになりますので、

「ここの意味がわからん」

「このネタっぽいのがわからん」

「オラこんな村嫌だ」

等々、お気軽に書き込んで頂けます様、お願い申し上げます。

また、お気軽に感想を書き込んで頂ければ、第二部の参考にさせて頂きます。

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