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灰谷硝子はダイエットを成功させたい

作者: 枝野はっぱ



 ーーーーーーダイエットがしたい。



 そう一度でも思ったことのある人は、かなりいるだろう。かくいう私もその一人。

 ダイエットを考える人の中には、医者から指導が入ったという人から「標準体型だよね?」と言われる人がモデル体型を目指す人まで様々。

 そんな中、私がダイエットをしたいと思ったきっかけは「昔より太ったから」という、それこそダイエットを考えたことのある人の中で一番多い理由かもしれない。


 高校生の時、私は標準体型より若干痩せていて、間違っても「太ってるね」と露骨に言われるようなことがない体型だった。こう言っちゃあなんだけど、出るところは出てたし、くびれもあったから周りから羨まれることがあったくらいだ。

 1年生の終わりには初めての彼氏もできて青春を謳歌していたけど、そんな順風満帆には物事は進まなかった。それこそ、これもよくある話なのかもしてれないけど、2年生の夏、友達と彼氏が浮気をしたので一気にどちらも失ってしまった。

 私から奪った友達は、最初こそ申し訳なさそうにしていたかな。でも、1ヶ月経つ頃には平然としてたわ。元彼の方は一切悪気なし。なんか「俺モテるから仕方ないよな?」って感じだった。今振り返ると、元彼は調子に乗ってるタイプで遊びならともかく彼氏には遠慮するタイプだなと思うんだけど、当時の私にとっては違うわけよ。


 発覚した時は2人から裏切られたって気持ちと、私の中に残ってた友情や愛情がどうにも処理できなくて真っ白になってた。共通の友達からはかなり同情メールが届いていたけど、その時の私にはどれも「他人事だから言えるんだ」って捻くれた捉え方をしちゃったから、どれも響かなくて結局2日間休んだのよ。

 たったの2日間とか思った?まあ、そこは私自身でも切り替え成功してよかったって思ったのよ。1日目は真っ白のまま私の人生終わった〜って感じだったけど、一晩寝た後の2日目は起きた時から何となくスッキリしていたの。自分のことながらすごいと思うんだけど、寝たことでリセットでもかかったのかって思うくらい前日の私と考え方が変わっていたわ。


 今までは、学校には行かないといけないものだし、行く以上は赤点なんてもっての外。友達は大事にしないといけないし、学生のうちに彼氏は1回くらい作った方がいい。家族仲だって良くないといけないから、できるだけ家に帰った時に誰かいるなら話しかけるようにする。

 そうやって世間体を気にするのが普通で、みんなしているものだし私もしないといけない……。なんて思っていたのよ。そんな決まりはないし、そんなこと思っている方が少数だって夢の中で吹っ切れたのかしら。起きたらもう、結構スッキリしてたってわけ。


 別に、自暴自棄になったとか人間不信になったとかじゃないの。ただ、私が思っているよりもみんな自分が大事だから、必要以上に周りに気を遣ってないんだなってことが分かったってこと。

 だって、友達のことや周りの目を気にするなら浮気なんてしないでしょう?それに友達の彼氏に手を出そうともしないでしょう?みんな自分が大事だから、自分の気持ちに素直に生きているのよ。人生1回っきりなんだから、私も必要以上に周りを気にするのをやめたってわけ。



「結果、この10年で食べたいもの食べまくってブクブク太ったけど、あと3年もしたら30歳になるから、そろそろ本気で当時の体型に戻りたいな〜ってか?馬鹿かお前。人の目気にしないって言っても、食べる量くらい考えればよかっただけだろ」

「いや〜、体型維持も人の目が気になるからするもんでしょ?私も若かったからさ〜、見た目とか気にしなくていいやってなってたんだよね」

「開き直ったってだけだろ。ほんと馬鹿」



 家から近い喫茶店で、コーヒーを飲みながら話を聞いてくれてるのは、高校からの友達である加賀美雪菜かがみゆきな。あ、この子は元彼を奪った子じゃないから。それこそ当時、励ましのメールをくれてた中の1人。その時は素直に受け入れられなかったけど、落ち着いてからも変わらず一緒にいてくれたのもあって10年経ってもお友達は継続してる。

 ブクブク太ったって言われたけど、当時が若干痩せていたのもあるから、今は若干太っているってくらいかな〜と思っている。増えた体重は20キロ位だけど、肥満には見えないってよく言われているし、多分ぽっちゃりって分類なのかな?



「おいおい、自己評価おかしいから。冷静に考えな。ウエストゴムばっか買って着てるからわかってないんだろうけど、座るとそれ肉乗ってんだろ」

「みんなお腹のお肉は乗るもんじゃない?雪菜はモデル体型だから乗らないだけで、標準体型の人でも座ると腹の肉は乗るって」

「違う、そういう意味じゃなくて。……あのさ、ダイエットしたいんだよね?それなら自分の状態をきちんとありのまま受け入れないと。変に自信持って合わないダイエットしたってダメだろ?」

「そうは言っても、特技リバウンドの私だよ?人間、諦めも肝心かな〜って」

「お。今度こそ本気でダイエットがしたいとか言ってたのに違ったのか。じゃあもう帰っていいな。お昼、ご馳走さま」

「雪菜!冗談だから!ダイエットがしたいのは本当だから相談に乗ってよ〜」



 全くもう、これだから真面目っ子は困るわ〜。雪菜は人生で1回も太ったことなんてないからそんなこと言えるんだよ。あ、1回も太ったことがないってのは違うか。確か1番最初に私がダイエットしたいって話した時に、雪菜本人が痩せれた方法を教えてくれたんだよね。



「もう私も10代じゃないし、りんごダイエットとか無理だから。まともなダイエット方法を教えてほしいのよ」

「なにそれ。りんごダイエット馬鹿にしてるの?それに、りんごだけ食べるわけじゃないし、あの時の硝子はここまで太ってなかったから少しは効果あったでしょ?」

「もちろん、ありましたとも。あの時の私は3〜4キロくらい太ってたくらいだし、ほんと戻ってよかったと思いましたよ。でも、その後のリバウンドで5キロ太ったじゃん。逆効果だったんだよ」

「成功した後の食生活のせいだろ。自業自得だ、馬鹿」

「相変わらず辛辣!私のダイエットが悉く失敗してるのって、ストレスもあるのかも」

「ん?あぁ、今日はこれで解散か。じゃあ、いつになるかわかんないけど時間に都合が着いたら連絡するわ」

「うわぁ〜〜、違うの!もう、本当の本当に冗談ですから!席を立たないでください!……もう、雪菜が怖くて冗談が言えない」

「あはは。それこそ冗談だって。硝子といると気を使わなくていいから、思わず口から出ちゃうんだよね」



 あぁ〜、よかった!確かに雪菜は、見た目と話し方にギャップがあると言われるからって、このサバサバした話し方ができる相手はあまりいない。その繕わなくていい間柄に私がいるのは、素直に嬉しいなと思ったところで、ちょうど喫茶店の入り口のベルが鳴った。

 ここはチェーン店とかではなく、個人で経営している喫茶店だからなのか今でも昔ながらのベルが扉についている。人感センサーとかじゃなくて開閉でなるタイプってこと。音も低めで、カラランって鳴るから結構お気に入り。

 こんなこと言ったらオーナーに怒られちゃうけど、滅多に人が来ないこの喫茶店だからこのベルの音がすると思わず入り口に目が行ってしまう。あ、雪菜はそんなことなくコーヒー飲んでるわ。まあ、滅多に人が来ないから誰が入ってきたのかがわかるってのもあるんだろうけどさ。



「2人ともお待たせ〜。ちょっと仕事長引いちゃった」

「全然いいよ〜。こっちの都合で予定組んじゃったから、仕事の日に呼んでごめんね」

「紡、お疲れ様。お昼まだでしょ?ちょうど私、コーヒー無くなったから、まとめて頼もう」

「雪菜ありがとう。じゃあ私、普通にお腹空いてるからホットサンドのセット頼もうかな〜。……あれ、確か2人は12時には来てたんじゃなかったっけ?もう13時過ぎてるけど硝子はまだ食べてるんだ。あれでしょ、咀嚼ダイエットっていうんだっけ?頑張ってるじゃん」

「あ〜……」

「違う違う。これ、おかわりしてんだよ。最初に頼んだのがオムライスで、その後『少し足りないな〜』とか言ってサンドイッチ頼んでさ。今、デザートのパンケーキ食べてんの」

「えぇっ!そんなに食べてるの!?ダイエットするんじゃなかった?」

「やっぱ同じ反応。話聞きながら今回も無謀だなって思ってたところ」

「雪菜、そんなこと言ってなかったじゃん!そう思ったなら、食べ過ぎてるって教えてよ〜」

「食べ過ぎだって言っただろ?それを、だって〜とか言って流してたのは誰だよ。私は本気で、硝子は自分のこと見直せば痩せれるんじゃないかと思うわけ」



 わかる?って私に言いながら、雪菜は店員さんにはちゃっかりホットサンドセットとコーヒーを頼んでいる。その横に、今来たばかりの紡…百合紡ゆりつむぎが座る。2人が横並びになる理由は、もちろん私が2人に「ダイエットがしたい」って話を持ち込んだから、話がしやすい様にであって、別に私の横にスペースがないとかじゃないから。



「え〜、硝子ができるかな。でも、ご飯食べながら2人で話てたんだよね?今の所、今回は何ダイエットに挑戦するのが濃厚なの?この食欲みたら食事制限はやっぱ無謀かな〜」

「紡、私のダイエットは別にイベントじゃないから、何回も開催されないよ?でも、ストレス感じたら良くないってネットにも書いてあるし、紡の言う通り食事制限は勘弁かな〜」

「おい。そんな意識じゃ痩せれないから。今回こそ本気じゃないのかよ」

「私は毎回本気です!ただ、無謀なことに挑戦し続けて精神的にダメージ受けるくらいなら、諦めてもいいかなっていつも思うだけ……」

「紡。ご飯食べたら解散だわ」

「じゃあ、その後一緒に買い物しようよ〜。雪菜のセンスすごく好きなんだけど、自分でそういうの買うとなんか似合わないんだよね」

「あぁ。丸々真似てもダメだから。紡と私で顔もスタイルも違うし、それベースに取り入れないと」

「ごめんなさい!違うんです!本当に2人で服の話とかもしないで!真面目に今回は痩せたいって思ってるんです。相談に乗ってください」



 私の一言で2人は「わかってるから」って笑ってくれた。本気で焦ってしまうが、このやり取りはほぼ毎回のことで2人で私をおちょくっているのだ。……でも、いつか本気で言われるんじゃないかと不安もあるので、今回こそは本気でダイエットしたいと思っている。


 今の会話で少し出ていたけど、2人は見た目のタイプが全然違う。雪菜は一度も染めたことのない黒髪を、肩のあたりで揃えている。顔もキリッとした感じで、可愛いよりは美人ってタイプ。それもあってか、仕事の時は髪をビシッとまとめてさらにできる女度が上がっているみたいだけど、今はプライベートだから下ろしていて綺麗なストレートヘアであることがわかる。服装は、シンプルなんだけどカッコイイのが多いかな。私と会う時は、ほぼパンツスタイル。でも、ボーイッシュって言うと子どもっぽいって感じるくらい、スタイルが良くないと着れないわ〜って思うものばかり。

 対して紡は、ミルクティー色の髪に緩やかなウエーブがかかっている髪型だ。因みに地毛自体も若干色素が薄いみたいで、ブリーチは使わずにカラーだけでこの色だと言っていた。そんな髪型で予想がつくかもしれないけど、顔は可愛い系。服装も大学の時はロリータっぽかったけど、最近は社会人になったしそこまで露骨なものは着てない。今なんて、ちょうど仕事終わりというのもあってか、スカートと袖口がふわふわしてる位でいつものお人形っぽさがない。三十路でお人形っぽいとかどうかと思うかもしれないけど、それくらい可愛いんだわ。

 因みに、紡とは大学から一緒。私がこういう性格になってからのお友達なんだけど、気が合うのもあって卒業後も良く会っている。この2人の他にもう1人、良く遊んでいる友人がいるんだけど、先月末から2ヶ月の出張でここにはいない。


 そんなことを考えている間に「お待たせしました」と、ホットサンドセットとコーヒーを持った店員さんがテーブルに来た。紡が来た時には残っていた目の前にあったパンケーキは、綺麗に無くなっていたのでそのお皿を回収していく。



「朱音ちゃんも2人の話聞こえてたでしょ?今までのことも考えた上でさ、硝子のダイエットって今回は成功すると思う?」

「う〜ん、どうでしょう。硝子さんは諦めるのが早いけど、運だけは1番あると思うので硝子さん自身に合うダイエット方が見つかればいける気もしますね」

「運はね〜、自分でも思うわ。あ、そういえばこの前オークションに出したものも10万円で買い手がついたんだよね。ありがたいよ」

「まさか、大学時代に行った旅行先のガラス工芸に興味持って、急にその道に行くなんて思ってなかったけどね。それこそ、硝子には合ってたんだろうね」

「ほんと、硝子は勉強もできるから学校の先生とか、雪菜と同じように弁護士とかになると思ってた。でも、硝子の名前からしてガラス工芸はぴったりだよね〜」



 そう。私の仕事はガラス工芸の職人……とまではまだ言えないけど、まあそんなところだ。師匠のところで師匠に来た作品作りを手伝う仕事をしているけど、たまに個人的な作品を作らせてもらっていて、それをネットオークションに出しているのよ。弟子はお給料が少ないなんてことはなく、時給できちんといただいているから生活はできるし、こうやって臨時収入もあるから結構なんとかなっている。あ、勿論個人的なものを作るのは休みの日だけで師匠に迷惑はかけていませんから。


 あ、そうだ。名前が出たから朱音ちゃんの紹介もしようかな。この喫茶店の従業員である深森朱音ふかもりあかねちゃんは、紡の幼馴染だ。それこそ、この隠れ家的な喫茶店を教えてくれたのが紡で、紡は朱音ちゃんがいるから私達を連れてきたってわけ。

 しかもここは、朱音ちゃんのおじさんが経営しているそうで、厨房から滅多に出てこないけどなかなかダンディだって話。あと、夜はバーになっているみたいで、その時は朱音ちゃんではなくお兄さんが手伝っているそうよ。朱音ちゃんのお兄さんが私たちの1つ上で、朱音ちゃんはそれより4つ下。つまり私たちより3つ下なので、まだ20代前半ってわけ。若いわぁ〜。



「そのせいで人と会わないから、ダイエットが成功しないんだ。工房だけじゃなくショップにも立ったら痩せるんじゃないか?」

「ショップって言っても、ほとんど業者さんしか来ないからなぁ〜。商品並べてるけど、基本オーダーばっかりだし、流石にオーダーの対応はまださせてもらえないよ」

「あ〜、でもほんとに知ってる人としか会わなくなると流行とか取り入れなくなるよね。なんか『自分のことわかってる人と会うし』とか『おしゃれする様な相手じゃないし』みたいに妥協しちゃうじゃん?私も普段制服だから、今日みたいに仕事終わりに用事あって着替えたりすると、私服をどう思われるか心配になるよ」

「わかるわかる。硝子、そうなったらもう痩せるのは無理だと思いな。周りを気にしない考え方はいいと思うけど、周りがあんたを見ないようにしてるってこともあるんだから」

「え……私って、見ていられない程?そこまで酷いかな」

「硝子さん、違いますよ。雪菜さんは見た目の話をしているのではなくて、考え方として『やっぱり、誰にも見られていないならいいや』とならないようにそう言ってるんですよ」

「朱音ちゃんは優しいね。でも、今回はストレートに硝子の方であってるわ。というより、そう思っていないと痩せれないでしょ?何回目のダイエットか知らないけど、本気で痩せたいって意志が足りないんだって」



 コーヒーを一口飲んで「今回は本気なんだよね?」って圧をかけてくる雪菜は、かなり怖いけど言ってることは間違っていないから反論できない。

 実際、今ここにいる3人からもそれぞれに合ったというダイエット法を聞いたことがあるくらい、ダイエットにチャレンジしているのは認める。ただ、その教えてもらった方法は悲しいくらい私には合わなかったのだ。


 雪菜から教わったのは、さっきもチラッと話したけどりんごダイエット。ネットとかにもいろいろ書かれているけど、雪菜のおすすめは「朝に生のりんごを半分だけ食べる」方法だった。でも、それ以外は飲み物のみでお昼まで食べないというのが耐えられず終了。食生活を一気に変えるのは良くないわ。

 紡から教わったのは、睡眠ダイエット。これについてもいろいろあるみたいだけど、おすすめが「1日最低でも8時間睡眠。休みなら12時間くらい寝る」というものだったから、開始前から若干無理かな〜とは思っていた。理由は、普段の睡眠時間が5時間程度だから寝ていられないというもので、案の定、寝ていられなかった私はこのダイエットも挫折した。

 朱音ちゃんからも教えてもらったんだけど、その内容は流行りを取り入れるダイエット。……うん、これはほんと朱音ちゃんらしいんだけど「その時流行っているダイエット法が1番痩せる」ってもの。あ、朱音ちゃんらしいっていうのは、接客業っていうのもあるのか新しい情報にかなり敏感な子なんだよね。まあ、その情報に踊らされている時もあるんだけど、そこは仕方ないのかな。

 んで、確か2回教えてもらったんだんだけど、1回目が「レコーディングダイエット」でただの日記になって終了。2回目は、ダンス系のダイエットがいろんなメディアに取り上げられていたから「1日1曲踊り切るダイエット」っていうのをやってみた。でも、普通に考えて普段ろくに動いていないからか、ダンスを覚えるのにも時間がかかったし、曲に合わせるとなるとかなりハードで全然リズムに追いつけなかった。そうなると、1曲5分もないのに毎回30分以上かかっている自分って……と思ってしまったが最後、向いてないと判断して終了。


 まあ、こんな感じで他にもいろいろ試したんだけど、私に合わないものばかりで結局今に至る。自分に甘いと言われるけど、実際続けられないと意味がないからね。

 雪菜も言っていたけど、自分が太っているって自覚をもっと持たないとダメなのかも。思わずため息が出る。



「あ、そうだ!この前ネットで話題になっていたダイエットなら硝子さんにも合うかもしれないです。食事制限とかも一切なしで、軽く運動を取り入れればいつも通りでいいみたいですよ」

「なにそれ、知らない。なんてダイエット?」

「難消化性デキストリンっていうものを、食事の時に取り入れるダイエットです。イージーなんとかって聞いたことありませんか?それに使われている成分みたいで、結構前から商品はあったけどネットで最近話題になってるみたいです。それこそ、トクホには大体入っている成分みたいですよ」

「トクホとはいえ、食事に入れる系は微妙じゃない?特に軽い運動だけで、食べる量そのままでいいとか、ちょっと疑うわ」

「あ、思い出した。それ、うちのお客さんにも飲んでますって人いたよ〜。腸活にいいみたいで、そのお客さんはダイエットというより美容目的って感じだったけど」

「エステ行くような人も愛用してるなら良さそうじゃない?朱音ちゃん、もう1回言って。1回じゃ覚えらんないわ」

「難消化性デキストリンです。ネットで検索するといろんな種類が出てきて、さっき言った商品だけではなく、それ自体が買えるみたいですよ」



 早速、スマホで検索かけてみる。確かに難消化性デキストリンというものが、たくさん出てくる。さっき言っていたイージーなんとかだけではなく、他にも聞いたことのある食品に使われているみたいで安全性も高い気がする。

 でも、雪菜のいうように置き換えダイエットでもなく「〇〇に混ぜるだけ」とか「〇〇を飲むだけ」という類のダイエットは、実際本当に効果があるのかと疑ってしまう。……いや、何十回とダイエットに取り組んできた私は、こんなこと言えないんだろうけどさ。今まで挫折してきたダイエットに失礼だったわ。



「硝子さん、もし難消化性デキストリンを使ってみるなら『魔法がかかったみたい』って思いながらやって見たらどうでしょう?実際、私がこのダイエットをしたわけではないので効果があるとは言えないんですが、もし本当にこれで痩せるなら魔法みたいじゃないですか」

「あぁ、硝子。前に思い込みダイエットやっただろ?その時『食べても太らない』って思い込んでたけど、実際それをご飯にかけながら『これで魔法かかったから太らない』って思った方が視覚的にも効果あるかもよ」

「私もそれいいと思う!やってみたら?」

「確かに。それだと2つのダイエットを同時にやってるってお得感もあっていいかも。ネットだと、味がしないから何に入れてもいいって書いてあるし、もう買っちゃおう!」



 ポチって購入済みの画面を3人に見せる。ほんとに買ってる〜とか、効果あったら教えて〜とか、今度こそ頑張ってください〜とか言われたけど、とりあえず今回のダイエット方法が決まったので後は楽しく雑談タイム。紡もまだ食べ終わっていないし、時間もまだあるからギリギリまでゆっくりしようかな。

 朱音ちゃんは他にも数人いるお客さんの対応でいなくなっちゃったけど、ここのオーナーは親戚ってのもあってか優しいみたいで、多分また後でうちらと雑談しに来てくれると思う。


 そんな私が、3ヶ月ちょっとで20キロのダイエットに成功するなんて、この時は誰も思っていなかったと思う。

 誰にでも合う合わないってあると思うけど、私には難消化性デキストリンと思い込みダイエットが合っていたんだなぁ〜と実感。ちょうど出張から帰ってきた友人も含めてみんなで会おうって話が出ていたので、朱音ちゃんへの報告も兼ねて明日あの喫茶店に行くことになった。

 このダイエット方法を教えてくれた朱音ちゃんは、こんな短期間でここまで痩せた私にビックリするかな〜。でもほんと、魔法がかかったみたいに痩せていったから、途中からちょっと怖かったのはみんなに内緒にしておこう。




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