第105話 ちびっこの家
「美味しい~!!」
「旨いわ~!!」
「幸せ~!!」
ビーフシチューを食べながらシスターや子供達は声をあげている。
「これは何というシチューでしょうか?」
シスターが私に聞いてくる。
「ビーフシチューと言います」
「美味しいですね、初めて食べました」
「それは良かった」
「これは何の肉でしょうか?」
「トロールの肉です」
「まあ、なんて高級な肉を…」
そうだった。
この世界では300年経った今でも、小麦粉と肉は未だに高級品みたいだ。
「私は冒険者なので魔物を倒せば肉は手に入りますから」
「まあ、冒険者の方だったのですね。あの~お名前は…」
そうだった。
散々、話しておいて今さら名前なんて聞けない、そんな時もあるよね。
ふと孤児院の看板を見ると『ちびっこの家』と書いてあった。
「私の名は伊達…、あ、いえ、ごほん。スズカです、シスター」
「伊達スズカさんですね」
「いえ違います。ただのスズカです」
「しかし先ほど、伊達といいましたが」
「それはお約束の準備です」
「お約束とは?虎のマスクはいいのですか?それに…「「ただのスズカです!!」
あまりにもシスターがしつこいので声を荒らげてしまった。
「し、失礼いたしました。私は院長のステラと申します」
「よろしくお願いいたします。先ほどの三人組の男の子達の名前は」
「名乗っていなかったのですね。これは失礼いたしました。話しづらかったでしょう」
あ、いえ、十分会話は成立していましたよ。
「彼らは三人共孤児で、アルヴィン10歳。ブライアン8歳。サンディ5歳です」
よかった。変な名前でなくて。
「ほら三人共ここに来てスズカお姉ちゃんに、お礼をちゃんと言いなさい」
「なんだスズカさんて言うのか」
「スズカお姉ちゃん、ありがとう」
「こんなに美味しいものは初めて食べたよ」
わ~い他の子供達も寄ってくる。
「このワンコちゃんはなんていう名前なの?」
「シルバーよ。それにワンコではなくて狼よ」
「へ~。狼大きい!!」
「ねえ、ねえ、この子は?」
「この子はポポンよ。ホワイトキャットよ」
「ポポンて言うんだ。可愛い~」
この世界ではペットを飼う習慣がない。
シルバーとポポンは15人はいる子供達に囲まれ、もみくちゃにされている。
助けて~みたいな顔をしているけど、遊んであげなさい。
そんな時だった。
突然、ガラの悪そうな男達が4人、孤児院に入って来た。
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