第101話 新しい世界
私はこれからのことを考え、下を向き泣いていた。
「お嬢ちゃんはお家に帰んな、ここはあんたみたいな人が来るところじゃないぞ」
飲食スペースで飲んでいた4人組の冒険者の1人が私をからかう。
「私はお嬢ちゃんではありません」
涙をぬぐい顔を上げる。
「では職業はなんだい?」
「調教師です」
するとポポンが私の肩に乗り顔を出した。
「あはは!ホワイトキャット?そんな魔獣を使役してどうするんだ?」
「そんな猫で何ができる」
他の冒険者も呆れた顔で参入してくる。
あなたたちと問答する気はありません。
「シルバー!!」
「私は入口に控えているシルバーの名を呼んだ。
『ガフォ!!』
呼ばれたシルバーはスイングドアから顔を出した。
「わっ!」
「なんだ、この魔物は?!」
「警備隊を呼べ~!!」
酔った男達はそれぞれ慌てている。
「私が使役しているシルバーよ。さあ、帰ろう」
驚く男達を後にしてシルバーの頬を撫で外に出た。
でもいったいどこ帰ればいいのだろう。
ギルドを出ると男達の会話が聞こえてきた。
「あれはヤバい!!」
「なんであんなのが、この街にいるんだよ」
「大丈夫なのか、あんなのを使役しきれるのか」
私はとりあえず今夜の宿を探した。
シルバーにリードを付けて街中を歩く。
道行く人々は驚いた顔をして道を開けてくれる。
そうだよね、2mはある魔物だもの。
この反応は久しぶりで懐かしいわ。
歩いていると他よりやや大きな宿屋を見つけた。
ここならシルバーも泊まることができるかも。
カラン、コロン。
ドア鈴を鳴らし私は宿屋に入る。
「いらっしゃいませ」
綺麗なスーツを着た男性の店員さんが迎えてくれる。
「泊まりたいのですが…」
「ありがとうございます」
「実は使役している魔物も居るのですが大丈夫でしょうか?」
「どのくらいの大きさでしょうか?」
「ここにいます。見てください」
そう言ってドアを開けシルバーを見せる。
「ほう、立派な魔物ですね。馬小屋があるのでそちらで良ければ」
さすが一流の宿屋のフロントマンは動じない。
「はい、ありがとうございます。それとこの子です」
そう言ってポポンを抱き抱えて見せた。
「まあ、可愛い魔獣ですね。その子くらいならお部屋で一緒でも構いませんよ」
「そうですか、良かった」
「魔物の代金と合わせて、一泊1万円ですが何泊されますか?」
「ではまずは2泊でお願いします」
「ありがとうございます。ではこれを」
そう言いながら私は金貨を2枚カウンターに置いた。
「ほう、これは珍しい。サバイア王朝時代の金貨ですね」
「使えないのですか?」
「勿論、使えます。ただこの時代の硬貨は金、銀、銅の含有量が多く、今の通貨より少し価値が上がります。そのままでも使えますか、勿体ないので両替商で交換してもらうといいでしょう」
「わかりました。では両替商はどこにあるのでしょうか?」
「はい、ここを出て…」
私は場所を聞き両替してからまた来ることを約束し宿屋を後にした。
こうして新しい世界での生活が始まった。




