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隣の美少女


 最近、女子の間でぬいぐるみづくりが流行っている。かわいらしい趣味が流行ったもんだなあ。


作ったぬいぐるみを、なんかキラキラした人しかやらなさそうなSNSにあげては、楽しそうにしている人々の発生である。


 そんな人々の発生を、僕、棚田久人は喜ばしく思っていた。


 なぜなら、サッカー部ベンチ身長低め成績悪めカッコ悪めの僕は、昔いろいろあって、ぬいぐるみづくりのスキルを隠し持っているからだ。


 それを今発揮すれば、女子と仲良くなれるチャンスなのでは?


 そう考えた。


 さらにチャンスだと思っているのは、僕の隣の席に座っている美少女の、曲花かおりとの関係改善について。


 曲花はよく、友達に手作りのぬいぐるみを配っている。だからきっと、ぬいぐるみが好きに違いない。


 僕がぬいぐるみづくりに長けていると知れば、少しは優しくしてくれるかなって思っている。


「ねえ、はい! 渡してんでしょ」


「あ、ごめん……」


 僕は曲花に謝った。考え事してたのは悪いけど、そんなに強く言わなくたっていいのになあ。


 僕はプリントを受け取った。


 ちらりと曲花の方を見ると、配られたB4のプリントを折りたたんでいるところだった。

 

 もともと変なところに折り目がついているので折るのに少し苦労しているようだ。その変に折れた方を僕に渡せばよかったのにな。


 僕は自分の手元の折り目一つなくきれいなプリントを見つめた。


 曲花はなんだかんだで優しい人だと僕は知っている。というかみんな知っている。なぜか、僕に対する口調だけ厳しい気がする。


 いいんだ。まあそれでも。ただ、少しは関係改善したい。やはり、ぬいぐるみだな。


 僕は、心の中で作戦をまた立て始めた。




 しかし、その日の放課後、作戦を立て終わる前に、僕のぬいぐるみスキルはばれてしまうこととなった。


 僕の学校は、教室を出たところの廊下にロッカーがある。


 僕は自分のロッカーにはめんどくさいので鍵をかけていなくて、さらにぱんぱんに物を入れていた。


 それが突如として、雪崩を起こしたのだ。そして、中に入っていた教科書やらなにやらとぬいぐるみが、廊下に大放出。


 当然、廊下にクラスの人は集まってくる。


 結果として、僕のぬいぐるみがみんなに見られてしまったのだ。


 僕はクラスで目立つ方でも何でもないので、大半の人は無関心。


 しかし、一部の女子は


「棚田って意外とかわいい趣味あるんだ~」


とか言ってからかってきた。


 まあそうなるよな。普段存在すら認知されてない僕にとってはうれしいよ。


 これは、もしかして、本当に女子と親しくなってしまうのではないか?


 そう期待しつつ僕はその日家に帰って、そいでもって次の日登校したのだが。



 「もう忘れ去られたか……」


 世の中の人は飽きっぽいもんだ。僕なんて少年時代からベンチなのに中学生になってもサッカーやってるぞ。まあ、とっくに飽きてはいるから、僕も人のこと言えないが。


 僕は、ぺちゃくちゃしゃべっているいわゆる「クラスの中心人物」を眺めていた。


 その中に、曲花もいる。


 そうだ、曲花との関係改善の方がむしろメインの目標だったんだ。


 僕は思い出した。


 さてどうするか。


 当然、曲花も、ロッカー雪崩事件で僕のぬいぐるみ趣味については知っているだろう。


 しかし、曲花はなにもそれについては触れてこない。今日はそもそも会話が今のところない。


 チャイムが鳴ると、曲花は無言で席に座ってきた。


 そして、素早く教科書とノートを机に配置する。


「よし、じゃあ、先週の続きから始めるぞ。えーと先週は教科書の131ページまでやったんだっけな」


 先生が話だし、みんなの意識は授業に移った。


 と思っていたのだが、視線を感じた。


 斜め後ろを見てみると、曲花と仲がいい女子の三本が僕を見ていた。


 なんだなんだ?


 僕じゃなくて、曲花を見てたのかな。


 そう思って、僕は黒板に視線を戻した。


 だがやはり曲花を見ていたのではなく僕を見ていたようで、授業が終わって次の授業がある生物実験室に行こうとした僕は、三本に呼び止められた。


「ねえねえ、棚田くんってぬいぐるみ作るの?」


「ああ……昔、少しやるきっかけみたいなのがあって、それで今でもたまに作る」


「へえー! すごいね。私裁縫苦手だし、教えてほしいなあ」


「ああ、まあいいけど、でも曲花がいるじゃん。たまにぬいぐるみ配ってるだろ」


「ああ、かおりはね、教えてはくれないの。企業秘密みたいなかんじ……?」


「あ、そうなの?」


 謎だ。


 まあでも、曲花に教える気がないなら、せっかくだし、僕が教えてもいいのかな。


「わかった。じゃあ今度機会があれば、教えるね」


「やったー。うれしい!」


 この時僕は、喜んでる三本可愛いなって思った。


 だから、なんか誰かににらまれてる気がしたけど、大して気にならなかった。


お読みいただきありがとうございます。明日完結予定です!

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