73話 帰宅
結局私は昼食の時間を待つことなく早退した。気分的には撤退だ。
ルイーダ王女は恐らく狂人に属する。
彼女の厄介なところはその身分のせいで狂人と扱われないことだった。
公爵令嬢として彼女にどういう対応をすればいいのか、正直私にはわからなかった。にこにこ笑って妄言を聞き流すのが最適なのかもしれない。
けれど本当に聞き流していいのか。ルイーダ王女やその従者たちに見下されへらへらとしているのは私の立場として正しいのか。
わからなくて私は自宅に逃げ帰った。公爵家当主である父の方針を仰ぐ為に。
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「学校は暫く休みなさい」
フレイお父様の指示はとてもわかりやすかった。
確かに学院に行かなければ留学生であるルイーダ王女と顔を合わすことはないだろう。
あの姫なら公爵家に突撃してくる可能性もあり得そうだが、教室内に比べれば対策を取りやすそうだ。
約束がないことを理由に面会を断ったり、居留守を使うことも許されるかもしれない。
私がそのようなことを考えていると父は疲れたように溜息を吐いた。銀髪なので目立たないがもしかしたら白髪も増えているかもしれない。
父が疲弊するのも当然だ。その理由の一つであることを申し訳なく感じる。しかし彼は私を責めることはなかった。
「よく耐えてくれた、エミア」
「お父様……」
「いや話を聞いているだけで頭が痛くなってきた。とんでもない姫もいたものだ」
彼が王子でなければ、国に連れ帰って後は好きにしてくれと言えるのだが。
私が教室内で考えていたことと同じようなことを言って父は再び溜息を吐いた。
「陛下はどこまでお考えになっているのか……」
確かにサマリアとルーンの関係が良好になるなら、政治としては正しいのかもしれないが。
「アリオス殿下は……ルイーダ姫を婚約者として認めてはいないようでした」
「当たり前だ、お前の後釜にしては強烈過ぎる」
しかし文句があるなら自分の父親に抗議するべきなのだ。
先日のアリオス殿下の襲撃を思い出したのか父は髪を乱暴に掻き上げながら吐き捨てた。




