24話 彼の趣味
「部活仲間なら僕らが会話していてもおかしくないだろう?」
それに一人での活動も飽きてきた頃だし。
そう呟きながらアルは私に入部を勧めてくる。私は少し考えてから入部届にサインをした。
すると無邪気に喜んでくれたので悪い気はしない。
「有難うエミー、後で君にも部室の鍵を渡しておくよ」
校内で一人になりたい時とかに使ってくれていい。そうあっさりと言われる。
まるで彼の持ち物件のような言い方だ。
しかし部員が一人しかいなくてもこのように立派な部室が与えられていたのかと改めて驚く。
だが成績の悪いエミアは教師から授業中質問されないらしいと聞いたし、辺境伯の息子である彼も特別扱いされているのかもしれない。
身分の高い者、身分の高い親を持つ者が忖度されるのは現代でも変わらないようだ。
今の私は公爵家の娘なので得をする側かもしれないが、元婚約者の存在を考えると己の立場を無邪気に勝ち組だとは思えなかった。
それに辺境伯の息子という身分のアルでさえアリオス殿下から教室内で集団苛めを受けている。
アル本人が相手にしていないとはいえ止める者がいないのが腹立たしい光景だった。
部員が一人しかいないのももしかしたら殿下の嫌がらせのせいかもしれない。私は部活仲間が出来て嬉しそうなアルを眺めた。
私と違い、彼は前世の記憶を持ったまま別の人間としてこの世界で暮らし続けてきたのだろう。
さらに同じ学校で同じ学年だ。私が学校生活を送る為の手伝いをしてくれるなら有難いことこの上ない。
それに昔の知り合いに会えてシンプルに嬉しい。だから部活に入ること自体は問題ない。それ自体は。
「野草茶研究の時点で正体に気づくべきだったのよねえ……」
騎士団長アルファード・ウェイン。顔良、戦闘力良、頭良。ただ、味覚については大いに問題ありだった。
生前の彼は野営中度々自作の野草茶やら雑草料理を振る舞ってくれたのだが、その味は土を食べた方がましだったのだ。
「ねえアル、私たち折角平和な時代の貴族に生まれ変わったのだから雑草はもう食べなくていいのよ?」
「勘違いしているねエミー、野草の中には薬草と呼ばれる体にいい品種もあるんだよ」
最近の成功作はティーカップ一杯飲んだだけで眠気が消失するハーブティーのブレンドなんだ。
そう誇らしげに言う彼に、それは単純に不味すぎるからではないかと言ってしまった私はその後アルの特製ブレンドを試飲する羽目になった。




