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19話 波乱の学校生活(5)

 アルバート・エーベル。これは本当の名前かわからない。

 エミア・シュタイトの従兄弟。これは絶対に嘘。

 学年一位。これは彼に絡んでいた生徒が言っていたので多分本当。

 そして私がこの男子生徒の言う通り間抜けだというのも……事実だ。


「外見は確かによく似ているけれど、よくその知識で学院内に乗り込もうと思ったね」


 呆れたように言われるが反論できる言葉はない。確かに色々と勉強不足だった。


「それは……理由があって」

「理由?」

「……話さなければ、いけない?」

「義務ではないけれど話した方がいいと思うね」


 でなければ君が理由を言う相手は僕から教師たちに代わる。

 そう淡々と言われて私は迷った。アリオス殿下との婚約破棄の件もだが、私の正体についてだ。

 二百年前の記憶を持っているなんて話しても信じて貰えないに違いない。

 頭の病気だと思われる可能性もある。いやいっそ病気持ちだと勘違いされた方が王家から縁切りしてもらえるかもしれない。

 だがシュタイト家に不名誉な噂が立つ危険性もある。私がうーうー唸っていると眼鏡の男子生徒は溜息をついた。


「煮え切らない態度。逃走も自害もしない。このなり代わりに犯罪性は低そうだ」


 なら場所を変えよう。

 そう彼は言って私の手首を掴んだ。


「廊下で永遠に悩んでいるわけにもいかないだろう?」


 それにもうすぐ教師が来る。君を不審がる人間が増えるよ。

 冷静に告げられて私は結局彼についていくことにした。腕は離してもらった。

 アルバート、偽名かもしれないがそう呼ぶことにする。私がアルバートの後ろをついていくと不思議なことに誰とも鉢合わせしなかった。

 凄いと思わず呟くと「授業が始まるから皆教室内にいるだけだよ」と返される。

 成程。確かにそうだ。私が頷いているとアルバートはこちらを振り返って言った。


「君は相変わらず向こう見ずで世間知らずだね」

「なっ、仕方ないでしょう。学校なんて一度も行ったことがないのだから」

「それもそうだ」


 私の反論にあっさり納得してアルバートは視線を前に向けた。

 その片手は気づかない間に私の手首を又掴んでいた。離してと言ったけれど今度は離してくれなかった。



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