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6.群衆女子との会話

群衆男子視点

「あいつもしかして初回なんじゃねえの?」

 教室に戻って近くの女子に話しかける。

 死んでは戻りを繰り返す群衆だが、死んだからといって何もかもがリセットされるわけじゃない。

 記憶自体はすっぱりなくなるが、出現したときに付与されるその場における平均的な知識や能力のほかに、プラスアルファの知識や技術、性格や好き嫌いといった形で今までの経験が引き継がれる。

「この年で、初回は、ないんじゃないかと思います……」

「普通はな」

 今までに何回くらい死んでるかは感覚でわかる。

 群衆は死んだら、死んだ年齢と同じくらいの年頃の別の群衆のところに出現する。いきなりずっと年上になることもないし、年齢が戻ることもない。

 この年になるまでには、生まれてきてから十七年間の蓄積が誰でもあるはずなんだが、あの記憶飛びにはそれが感じられない。

「でもそれくらい基礎知識からごっそりないんだよ。それに今は異常事態だしな。何があってもおかしくないだろ」

 群衆は死ねば自然に消える。

 世の中のことに詳しくはないが、死んだ群衆を再び出現させるために回収した死体のエネルギー的なものを使っているんだろう。

 それを、何を考えてるのか青柳が使役獣に死体を食わせるようになったからバランスが崩れたんじゃないかと思う。

 殺しまくるのに、戻すためのエネルギーが足りない。

 それで記憶にまで手が回らなくなったのが記憶飛びなんだろう。

 実際、死んでも普通なら一日くらいで戻ってくるのに、青柳が殺しまくってたころは一週間以上かかることなんてざらにあった。

 そんな異常な状況だ。

 あいつが普通じゃなくても、不思議じゃない。

「とりあえず、放課後図書室に行った後は問題なさそうだわ。問題は休み時間だな」

 危険を呼び込むようなマネはやめさせたいが、何が青柳の興味を引いているのかわからない。下手にやめさせて青柳が興味をなくしたら本末転倒だ。

「あいつはそのまんまにさせといて、おれらが危険を避けさせていくしかないな」

「できるだけ、女子で、集まるようにしておきます……」

「そうだな。下手に一人にしとくとなにやらかすかわかんないからな。あと、いざって時は(おとり)よろしく」

「わ、わかりました」

 群衆は死ぬのが当たり前とはいえ、ずっと十七歳で死んでは戻りを繰り返すのはぞっとしない。

 死ぬのは仕方ないにしたって、べつに好き好んで死にたいわけじゃない。

 生き残る可能性が高いならそっちを選ぶさ。


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