44.保健室(本編28の裏側)
群衆男子視点
ようやく落ち着いたところで月草に電話をすると一通り心配された後、チェーンソー持って保健室に来るように言われた。
……チェーンソーなんて何に使うんだか。
どうせロクなことじゃないんだろうから一番ボロいやつを借りてきた。
「……で?何があったんだよ」
保健室前で待っていた月草に聞いたら、あいつが青柳をかばおうとしてドジ踏んだらしい。
群衆が色付きかばってどうすんだ。むしろ青柳を盾にするのが正解だろ。
ため息つきつつ保健室に入ったら、あいつを抱きしめたまま青柳がベッドに座っていた。
とりあえずあいつに無茶すんなって言ったところで気が付いた。
なんでこいつは制服思いっきり破れたままなんだよ。
「月草、これ持ってろ」
持ってきたチェーンソーを月草に渡して保健室を出る。
翡翠に電話して替えの制服を用意してもらう。あいつは心配性だから替えの制服だの靴だのを教室に常備してるからな。
「悪いな」
「いいえ。……何かあったんですか?」
「ちょっとあいつの制服が使い物にならなくなったんだよ。ケガとかはしてないから大丈夫だ」
「それならよかったです」
*
借りてきた制服をあいつに渡して、全員で保健室を出る。
あいつの着替えが終わって保健室に戻ったら、いきなり青柳がポケットからナイフを取り出してあいつに渡した。
……おいおい、何やってんだ。
ナイフ渡されたあいつは途方に暮れた顔できょろきょろしている。
そりゃそうだろ。
青柳は真剣な顔でナイフ折ったりチェーンソー壊したりアホなことやってたけど、どうやらうまく収まるとこに収まったらしい。
つーか、青柳の変わりっぷりが半端ない。
あいつも嬉しそうだし、正直見てて砂吐きそうなんだが。
……まあ、幸せそうで何よりだ。
さて、明日からの仕事内容に変更は出てくんのかな。
後から月草に確認しておこう。




