29.変化の時(本編16・19の裏側)
群衆男子視点
ここ最近調子が悪そうだと思ってたけど、あいつは青柳と話してる途中に熱中症でぶっ倒れたらしい。
青柳と二人きりなんて大丈夫かよと思っていたが、無事保健室から帰って来たあいつはいきなり爆弾を落としてきた。
「群衆が誓言受けることってある?」
「ねえよ!」
おいおいおい。また面倒くさいことになってやがる。
生徒会手伝ってる奴らからあのピンク頭が青柳に誓言迫ってるのは情報入ってんだよ。群衆が誓言受けたなんて知られた瞬間即死だろ。
そんな危ないのをなんで放っておいてんだあのアホは!
……とりあえずおれの手に負える範囲じゃない。
「とりあえず図書室行け図書室!おーい女子!」
「はいはーい」
まぎれさせるために何人かの女子と一緒に動く。倒れたんだから一人は心配だっていうのも嘘じゃない。
とりあえずここならあのおっかねぇ色付きがこいつを守ってくれるはずだ。ついでになんかうまいことやってくれりゃ、なおいい。
「午後の授業はごまかしとくからゆっくりしとけよ」
引き渡したらとっとと退散だ。下手に目をつけられたらかなわない。
*
放課後に月草から連絡が入った。
群衆が青柳の誓言を受けたことをピンク頭が知って、殺すように叫びまわっているらしい。
まあ、そんなことだろうと思ったぜ。
『オレも彼女の護衛に入ることになりました。そちらでも気をつけておいてもらえますか?』
「おう。任せとけ」
スマホで話しながら食堂前で合流する。
「彼女には次代が使役獣をつけていますから、基本的には危険はないと思います。ただ、使役獣だけにすべてを任せてしまうと次代の負担が大きいので、オレは補助的に護衛に入るという形になります」
「なるほどな」
「次代自身も完全誓言で行動を縛っていますから、彼女が殺される危険はほぼないと言っていいでしょう。ただ、先日のようにクラスごと皆殺しにしようとされたり、直接彼女が狙われると厄介なことになります」
「青柳がキレるな」
「しかも完全誓言つきですから容赦なしです」
「あいつをきっちり逃がせるように徹底しとかないとな……」
「ご負担おかけします。……それで、部下の件なんですが。今回のことでさらに仕事が増えるのでそろそろオレのもとで働いてくれませんか?あなたの命はオレが守りますから」
「お前は余計な仕事まで増やすなよ。おれのことは二の次でいいから。
……まあ、青柳が直接あいつを殺せないってんならお前のところで働いても問題なさそうだな。いいぜ。世話になる。最初のうちは足引っ張ることになるかもしれないけど、評価分の働きはしてみせるぜ」
「ありがとうございます。嬉しいです」
とりあえずこの過労死しそうな上司をなんとかしないとな。
ったく、放っておくと際限なく仕事抱え込むんだから困ったもんだぜ。




