25.従者の価値
群衆男子視点
今日は緑川先輩が来ている日だ。
多分タバコ休憩中だろうと思って探したら、予想通り糸目の従者を発見した。
「従者ってどんな仕事してんすか?」
「従者の仕事って言われてもね」
従者がどんな仕事をしてるのか聞いてみたらうーんと首をひねられた。
「仕える主によって仕事は違うから一概には言えないよ。ただまあ、オレの考えを言うのなら、結局は結果を出せるかどうかっていうことになるだろうね。結果のためなら時には主を謀ったり、意に染まないことをするのも方策のひとつだよ。従順だけが従者の価値じゃないからね」
ぷかりと煙を吐き出しながら従者は言う。
「……本当にうちの主は煮えきらなくてね。まったくポンコツなんだから」
「そりゃそうでしょ。色付きと群衆なんてあり得ないっすよ」
「おや、きみもそういう派?月草も報われないね」
「なんでここで月草が出てくるんすか」
「だってねえ。主に立ちふさがって必死に威嚇してたじゃない。あの子いつも一歩引いてるからあんなの初めて見たよ」
……それだけ評価されてるってことか。評価分の働きはできるようにしないとな。
「知ってる?『青の恋狂い』、『黄の色狂い』、『緑の金狂い』。
赤の一族がまともなのは自分たちだけだって言う時に使う言葉だけどね。月草も見事に狂ってるよ。そうじゃなきゃ自分を嵌めた相手に対して主があんなにあっさり引き下がるはずがない」
背中を丸めて視線を合わせて、ふうっとタバコの煙を吐きかけられた。
「優秀でも力がなければ潰されておしまい。月草を引き入れたのは正解だったね。月草がいなかったら今頃きみは死んでるよ。
主は甘いからそういうの嫌うけど、厄介な敵は早めに潰しておかないとね」
「……敵になるつもりはないっすよ」
「立場が違えば敵になるのは当たり前。味方でも裏切りも下克上も上等の世界だからね。
……イイコト教えてあげよっか。
青柳の次代関係の取引は全部月草が取り仕切ってるんだよ。
だからオレたちは手が出せない。……彼は怖い番犬だよ」
糸目の従者は吸い終わったタバコを携帯灰皿に放り込んで、おれの頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「柚葉。オレの名前。きみなら呼んでもいいよ。長い付き合いになりそうだしね」
さーて休憩終わりっと、伸びをして従者は何事もなかったかのように去っていく。
「……そっか。また守られてたんだな」
次に会った時に月草に礼を言っておこう。
本当にあいつには助けてもらってばっかだな。




