21.仕事の終わり
緑川視点
黒木先生を引っ張り出すのには予想以上に時間がかかってしまったが、それでも五人分の印を手に入れることには成功した。
解放された姫の証は、妻紅の手首から肩まで咲き乱れる五色の花々になった。妻紅が姫だということは事実だったようだ。
バレンタインには無事妻紅が姫だということを公表することができた。
……これで僕の仕事は終わりだ。
「これできみの望む状況は完成したわけだね。僕はもう、きみには関わらないよ。その方がきみも安心でしょう」
「ええありがとう。また助けてくれると嬉しいわ」
本当に最後まで会話にならなかったな。
だけど、やっとこれで妻紅から解放される。
妻紅の標的にされないように女史とは距離を置いていたから、これでやっと会いにいける。
女史との心躍る会話に胸を弾ませながら、僕は妻紅に背を向けて歩き出した。
*
その後。
すぐにでも黄の一族が妻紅の獲得に動き出すと読んでいたけれど、そうはならなかった。
どうやら黄樹が動いているようだ。
僕の卒業と同時に女史や何人かの群衆の生徒たちを引き抜いていこうと思っていたが、彼らは一様に青柳と彼女を見届けたいと言う。
まあ、今の青柳ならむやみに群衆を殺すことはないだろう。
それでも一応卒業後も様子を見にくることにする。
赤羽も同じように顔を出す予定のようだ。
「妻紅は俺の一族だからな。最後まで見届ける義務がある」
「ご苦労なことだね」
僕もそう頻繁には来られないだろうから、その間の妻紅の動向は赤羽に聞くとしよう。
どうにもそばで守れないのが不安ではあるけれど、後のことはあの群衆の男子生徒と月草に任せよう。僕さえ嵌めた彼らなら、うまくやるだろう。
「春休みに女史と他の生徒たちを社に呼ぼうと思うから宿泊場所を整えておいてくれるかい」
「女史様だけは特別室にしますか?」
「……いいや、彼女も他の生徒たちと同じに」
「かしこまりました」
さあ卒業すれば仕事に邁進できる。わずらわしい生徒会もない。
ずっと卒業を心待ちにしていたはずなのに、心躍らないのは……なぜだろうね?
答えを出したがる自分の心に蓋をして鍵を掛けて、仕事の資料を片手に女史のもとに向かう。
さあ、今日はどんな話ができるだろうか。




