~1日目‐7~
「……じゃあ、始めるよ。『稲汰の初恋指南塾』っ!///」
「なんで自分で言って照れるのさww」
稲汰は、ご丁寧に身振り付きで初恋指南塾の宣言をしてくれた。こういう馬鹿正直なところが、稲汰のチャームポイントの1つでもある。
「ゴ……ゴホンッ!では、ファーストレッスン!」
「セカンドもあるの?」
「そ、それは神奈ちゃん次第だよ!」
「ふ~ん……」
端から見たらお笑いコンビに見えなくもないやり取りを終え、本題に入る。
「最初はまず、『きっかけ』。出会いのきっかけがないことには、恋も何も始まらないでしょ?」
わかったような口振りで話す稲汰だが、稲汰自身は恋をしているのだろうか。
「なので、まずはきっかけの作り方について!」
「ほほう。」
「中高生の、異性との出会いのきっかけになる場所って、どこかわかる?」
「……学校?」
神奈の経験上、異性との出会いが多いのは学校という認識がある。逆に、学校以外の場所が思い付かないと言ったほうが正しいだろうか。
「そう!第1位は、誰が何と言おうと学校!第2位は、第1位と大きく差が開くけど、カラオケや夏祭りなどでの合コンかな。」
「そうなんだ~。でも私、今は学校から遠く離れた所にいるし、合コンなんてやったこともないし……。」
神奈は普段、千葉県の学校に通っており、今は稲汰に会いに来るために学校の学習会も休んでいる。無理矢理合コンに参加しようとしても、今の状況だと無理がある。
「どうしても夏休み中に彼氏欲しいの?」
稲汰が、困りきった表情で神奈を見る。
「どうしてもってわけじゃあ……ないんだけど……」
稲汰の表情に胸がチクッとするのを感じた神奈は、夏休み中に出会いを求めるのを諦めることにした。
(それより、稲汰との“今”を全力で楽しまなきゃ!)