~1日目‐1~
プシュ~……ガチャッ
「はぁ~、やっと着いた~!」
8月、伊井出神奈は、幼なじみの稲汰の家に遊びに来ていた。右も左も、のどかで同じ風景。スマホの電波も届きにくい場所だが、神奈はこの場所が結構気に入っていた。
ピ~ンポ~ン
「は~い」
ガラララ……
「こんにちはー!」
「あら、神奈ちゃん!随分早く着いたのね?」
そう言って出迎えてくれたのは、稲汰のお母さんだ。この人は、ノーメイクでもとても綺麗で、優しい人。小さい頃から、ずっとお世話になりっぱなしだ。
……そして、もう1人は───
「神奈ちゃん!久し振り!元気だった?」
彼は、沢稲汰。とても頭が良くて真面目な、私の自慢の幼なじみだ。
……そこで、ふと異変に気付いた。
「あれ?なー君、目が赤いよ?寝不足?充血?病気?」
見ると、前まで落ち着いた灰色の目をした稲汰の目が、真っ赤に染まっていた。
稲汰は、少し笑いながら、
「あぁ、これ?カラーコンタクトだよ。こっちの目の方がカッコいいし、神奈ちゃんが褒めてくれるかな~って思って!」
「似合ってるけどー……灰色の目の方がなー君らしくて良いと思うけどなぁ……。」
稲汰のお母さんは大爆笑。
「だからやめろって言ったのにww」
「そんなぁー……このカラコン結構高かったのに……。」
稲汰が半泣き状態になっているのに気付き、慌てて、
「大丈夫!!どんな色の目のなー君もカッコいいよ!」
とすかさずフォローする。
それを聞いた稲汰は、いくらか元気を取り戻したようだった。
(久し振りだな。このやりとり。)
懐かしいこの雰囲気に、少し涙が出そうになるのをグッとこらえた。
「さぁ、いつまでも玄関にいるのもなんだから、上がって!朝ごはんできてるわよ♪」
「はい!ありがとうございます!」
こうして神奈は、稲汰との半年ぶりの再開を終えたのだった。