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ほんわかするよ?

 帰りにセリスに食用のキノコを教えてもらって、いくつか採取して帰った。今日はステーキだから、付け合わせにキノコソテーにしても良いし、キノコソースにしても良い。なんならポタージュスープにしても良いね。


 キノコを採っていたら、シロが地面を掘って黒い塊を見つけてきた。黒トリュフだった。


「ありがとう。でもごめん。私、そんなにトリュフ好きじゃないんだ。トリュフの香りって日本人の好みに合わないと思うんだよね。松茸とかポルチーニの方が良い香りだと思うの」


「わふん… わん!」


 シロはちょっとガッカリしちゃったけど、すぐに私を乗せて走ると、木の根っこにキノコが生えているところに連れて行ってくれた。


 キノコは食中毒が恐いので、調べてみたらポルチーニの近縁種だった。ポルチーニって乾物しか手に入らなかったけど、これは生だからか乾燥ポルチーニより、香りが良かった。


 キノコを採るときは菌を木に付けておかないと、生えてこなくなるから要注意。持って帰るときもスカスカの籠に入れて、菌をばらまきながら帰る。美味しいキノコの山になるのだ!


「急にどこ行ってたの?」


「シロがこのキノコ見つけてくれたの」


「「あっ、ポルポル茸!」」


 ミケミケとかポルポルとかなんか名前が可愛いというか、メルヘンなんですけど。


「これ、ちょっと高いんですよ」


「これ、この森にも生えてたんだ! 今度探してみよう」


「私の食べる分は残しておいてね?」


「分かってるって! 乱獲して生えてこなくなったらもったいないしね」


 プロハンターに余計なことを言ったかな? 気を悪くしてなくて良かった。


 戻って行くと、なんかフィールドが変わるのが分かる。もう、この辺りはブルーベル・フォレストに浸食されてる。


 浸食されてるこの森には申し訳ないけど、このフィールドは私に優しいから、ちょっと安心感がある。私が帰ってくると、木々も草も喜んでるのが分かる。皆がお帰りって言ってくれてる気がする。


 こう言うと恥ずかしいんだけど、この森の精霊?に愛されてるっていう感覚がある。凄く優しい気配に包まれるもの。


 私、やっぱり半分くらい妖精になってるのかな? まあ、特に困らないから、それでも良いんだけど。


 ホーム自体は元々木の柵で囲われてるんだけど、その外側のこの辺りも敷地扱いになってるんだろう。


 ミツバチさんもそうだし、その辺の雑草みたいなのもクレソンとかミントとか、私が好きそうなのが都合良く生えてるもん。ポルポル茸もフィールド内だったのかも。


 庭にミントとか繁殖力の強いハーブ類は植えたくないって言ってたから、とりあえずこの辺に生やしとくねって、妖精さんが言ってる気がする。クレソンありがとう。貰って行くね?


 そのうちシナモンとかバニラとか生えてくるんだろうか。


 もしやこれ、何かユニットが追加されたのかな? こんなユニットに心当たりはないけど、強いて言うなら妖精の森ユニット?


 レベルアップした影響かな?


 もっとレベルアップしたら、サトウカエデとかサトウヤシとか生えてくるのかな。サトウカエデはメイプルシロップ、サトウヤシはヤシ糖が精製できる。ココナッツミルク飲みたいなー。


 流石に気候が違うからヤシは無理でも、サトウカエデはあるかも。今度探してみようかな。結局フェアリーベリーも探してないしね。


 ところで、ここがもうホームのフィールド内だとすると、セリスとシャーリーさんはもう手を繋がなくても入れるようになったのかな?


「ねえ、二人とも。今回は手を繋がなくても、ツリーハウスが見える?」


「あっ、言われてみれば手を繋いでませんけど見えますね」


「うんうん、見えるよ」


「じゃあ、二人とも気軽に遊びに来れるね!」


 別に毎回迎えに行っても良いんだけど、メッセージを受け取れないこともあるかもしれないしね。


 多分このフィールドの精霊さん?が、よそ者とか魔物とか入れないようにしてくれてるんだろう。一度手を繋いで入ったから、『お友達なの? じゃあ通してあげるね』って、通してくれるようになるんじゃないかな。


 まあ、ただの仕様かもしれないけど、それにしては優しくて温かい気持ちになるもの。精霊さんだと思っておこう。


「ありかとうね、精霊さん」


 そう呟くと、風もないのに木々がサワサワ鳴っている。


 やばい、なんか泣きそう。ココやシロも元から居たけど、私一人じゃないんだって安心して泣きそうになる。


 だってシロは私より強いかもしれないけど、元々ペット枠だし、ココなんて小さな女の子だもん。私が守らなきゃって、どうしても思っちゃうんだ。


 お父さんもお父さんも亡くなって、恋人も居なくて、誰も守ってくれる人なんて居なかった。もう年齢的に守る側なんだから、そんなこと気にしてなかったんだけど。


 子供の体だからか、久しくなかった感覚だからか、温かく包まれるこの感覚にとても心が動かされる。愛されてる、守られてるって実感できるなんて、もういつ以来だろう。


 私、このまま、ここにいて良いの?


『うん、ここにいてほしいの』


 そんな声が聞こえた気がした。


 この森は私を愛してくれている。私がブルーベル・フォレストを好きだった気持ちよりももっと深く。


 もう何がなんだか分からないよ。私はここに来るためにブルーベル・フォレストをあんなにプレイしていたのかな?


 妖精さん、精霊さん、愛してくれてありがとう。私も皆のこと、この森やこの世界のこと好きになっても良いのかな。


 もっと元の世界に帰る努力しないとだめじゃないのかな。両親のお墓も無縁仏になってしまうよ。帰らないのは親不孝すぎないかな。


 でも、ここにいると、この森に包まれていると、ほんわか安心しちゃうんだ。


 日本で毎日毎日働いて、朝から夕方まで働いて、また同じ日に夜勤でもう一度出勤して。心が休まることなんて無かった。安心することなんて出来なかった。


 帰らないといけないと思うけど、帰りたいとは思えないんだ。この世界で妖精さん達に囲まれてる方が、安心しちゃうの。それがとてもいけないことのように思える。


 お父さん、お母さん、ごめんね… 私、どうしたら良いの…?


「ど、どうしたの? どこか痛いの?」


「はわわ、クルミさん! 大丈夫ですか?」


 私、やっぱり泣いてたみたい。ごめんね、幸せで嬉しくて、でも切なくて悲しいの。


 私は二人に抱き付いて、大きな声を上げて泣いた。


 声を出して泣くなんて、子供の時以来だ。


 もう、心も子供に戻って行ってるんだろう。私、こんなにセンチじゃなかったもん。


「帰らないといけないの! 分かってるの! でも、この世界で優しさに触れてしまったら、愛されていることに気付いたら、帰りたいとは思えないんだ…!

 私、今、ここに戻ってきて、帰ってきたって思っちゃったんだ。今、幸せだと思っちゃったんだ! お父さんやお母さんのお墓も、友達も元の世界に置いてきてるのに! 私の帰る場所はここじゃないはずなのに!

 親孝行もロクにできなかったのに、二人が私を産んでくれた世界じゃなくて、この世界で幸せだなんて、思っちゃったんだ!」


 シャーリーさんは、黙って私を抱き締めながら、頭を撫でてくれた。セリスも一緒に抱き締めて背中をポンポンしてくれた。


「ご、ごめん! なんだか帰ってきて安心したら、ここの優しい空気に触れて心が安らいでしまったら、とてもいけないことのような気持ちになったの。

 元の私が言うの。ここはお前の世界じゃない。どうしてここで安心しちゃうの? どうして必死に帰ろうとしないの? 両親のお墓は放っておくの? 亡くなった両親に申し訳なくないの?って…」


 いい歳して叫んで喚いて、涙も鼻水も流して、そんなの日本じゃ精神科に連れて行かれるよね。


 ごめんね、二人とも。本当は私が一番お姉さんなのに。


「無理に結論を出さなくても良いのではないですか? そんなに急いで決めなくても良いのではないでしょうか」


「そうだよ。焦っても帰れるか分からないし、そんなの帰れるようになってから考えたら良いよ!」


 二人が私を甘やかしてくれる。


 胡桃が言う『そんなの甘えだよ。逃げだよね?』


 みるくが反論する『胡桃ならそうかもしれない。でも、もうあなたは私。みるくなんだよ? みるくの世界はどこ? 日本? ブルーベル・フォレスト?』


 ココもずっと首筋に抱き付いてくれてる。ちょっと苦しいけど、ありがとう。

 シロもクーンって鳴きながら、すり寄って心配してくれている。


 お陰で落ち着いてきたけど、今度は恥ずかしくて顔を上げられない。


 吹っ切れてたつもりだったけど、やっぱり見知らぬ土地で情緒不安定になってるみたい。


 だってだって! 家の外には魔物だっているし、本当に家の中が安全なのかも分からない。かといって、文化も風習も何も知らない町に独りで住むのは恐い。


 恐くないフリしてたけど、全部全部恐いんだもん! 海外留学とかしたことないもん、知らない国ってだけで十分恐いんだよ! 恐くて男の人とか買い物以外で近付きたくないくらいだもん!


 恐いから帰りたいけど淋しくて辛い日本に帰りたくないし、一人ぼっちだけど一人じゃない、恐いけど優しいここに居たいんだ。


「わわわ!」


「メ、メルヘンです…!」


 二人が変な声を出したので顔を上げると、鹿やイノシシ、ウサギにキツネ、居ないと聞いていたクマまでやってきて、私達を囲んでいた。そして小鳥が舞い、フクロウだかミミズクがホゥホゥ鳴いている。


 皆、木の実や果物、お花なんかを咥えている。


 私が顔を上げたのに気付くと、一匹ずつ咥えていた物を持ってきて、私の前に置いていく。


 ありがとう、皆、優しいね。私、狩りとかしてたのに、どうして動物さんまで優しいの?


 流石に魔物は来てないけど、これじゃもう狩りもできないよ。私、魔物しか狩ってないのかな? あの鳥は魔物だったの?


「ごめんね、皆。ありがとう。でも、私、皆に心配されるほど、皆に良くしてないよ? 狩りだってしたし、森の恵みも取っちゃってるもの」


 やめて! そんな澄んだ優しい目で見ないで! 居たたまれないよ。浄化されちゃう。わ、私、そんな良い子じゃないよ? 自分のことと美味しいもののことしか考えてないよ?


「も、もしや、伝説の聖女様では…?」


「そ、そう言えば昔、聖人のところに話を聞きに動物がやってきたり、食べ物を持ってきたりしたって逸話聞いたことあるよ!」


 奇遇だね、私も聞いたことあるよ!


「聖女じゃないの! クルミは妖精のプリンセスなの!」


 何そのメルヘンな設定は! 聞いてませんし、設定資料にありませんでしたよ!?


「「ええっ!?」」


「ち、違うよ!?」


「そうよ、違うわよ! 妖精のじゃなくて精霊の巫女姫なんだから!」


「「「えっ」」」


「今の誰?」


 セリスもシャーリーさんも首を振っている。ココとシロも首を振ってるのが可愛い。


「私よ、私!」


 緑の髪に綺麗な花を飾った、3歳くらいの可愛い女の子が、宙に浮かんでいた。吃驚したら涙も止まって、逆に冷静になってきた。


「あなた、だあれ?」


「私は木と花の精霊。そこのちっこい妖精が、あなたのこと妖精のプリンセスとかふざけたこと言うから出てきちゃった。本当は人間の前に姿を現したらダメなんだけど」


「「ええっ!?」」


「え、木の精霊? この優しくて温かい空間はあなたの影響?」


 だったら、お世話になっております。 いつもありがとうございます。


「ううん、違うわよ? ここはもっと大きな精霊が守護してるから、私じゃないわ」


「大きな精霊さん? 森の精霊?」


「違うの。私の知らない精霊。とっても強くて優しい力で、この辺りを包んでるの。私だって奥まで入れないもの」


 やっぱりブルーベル・フォレストの精霊か妖精なのかな?


「妖精じゃないの?」


「そうなの! きっと妖精なの!」


 私に隠れながら言ってもイマイチ説得力がないよ、ココ。


「妖精? こんな力のある妖精なんて、妖精王くらいじゃないの? 妖精王なんて会ったこと無いけど、ここにいるの?」


「知らないよ。妖精王なんて見たことないし、精霊も初めて会ったよ。あ、初めまして、クルミです」


「知ってるよ? 森中の精霊は皆、あなたのことが気になって仕方ないの。それどころか、あそこの湖の精霊もあなたに興味津々よ? あなた、皆のアイドルだからね!」


「そ、そうなの? なんで?」


「面白そうだし、優しそうだし、なんだか甘くて美味しそうな匂いもするし、何より吃驚するほど大量にマナを放出してるんだもん」


 そんなに面白そうだったかな? ああ、面白そうかも。


 この世界で見ない銀髪で、小悪魔コスプレして、効きもしないファイヤーボールでビッグボアとドタバタしてたもんね。それは目立つよね。


 そして、マナか… マナねー、自覚できないからなー。疲れもしないけど、止められもしないからなぁ。


「マナって迷惑だった?」


「ううん、気持ちいいよ。元気になるし」


「そうなの! クルミのマナは世界一なの!」


 ココは隠れたまま、嬉しそうな声を出した。


「あんた、別に穫って食わないから、出てきなさい。世界一かどうかは知らないけど、マナを放出してる人間なんて初めて見たわ」


 ココはビクビクしながら出てきたけど、いつものように私の


「そうなの? マナって止め方知ってる?」


「知らないわ。あなた人間でしょ?」


「うん、たぶん人間」


「たぶんって何よ。人間のマナの使い方なんて知らないもの。マナって精霊だって放出できないよ?

 マナはね、太陽だけがこの世界に与えてくれる恩恵なの。そのはずなのに、突然森の中にミニ太陽みたいな女の子が現れたら、誰だって興味津々になるわよ?」


「そうなんだ? 私、目立つ?」


「私達精霊からしたら、ミニ太陽だもん。森が輝いて見えるわ。冬は陽射しが弱いでしょ? それと同じで降り注ぐマナも弱くなるの。

 私達は気温の寒さは感じないけど、マナが少なくなると肌寒く感じるの。でも、この辺りだけ、とっても温かいの! ポカポカ気持ちいいのよー」


 そうなのか。冬に突然温泉が湧いたみたいな感じかな。私はコタツが歩いてる感じ だったりして。寒いときはコタツちゃん大人気! ゆるキャラ、コタツちゃん!


「そうなんだ。いつでもポカポカしに来てね?」


 みかんも用意しておこうか?


「いいの!? やったー! 皆、マナもらいに来ても良いってー!」


 それを聞いて、動物たちがキャッキャウフフし出した。クマのキャッキャウフフはとてもメルヘン!  あなたどこから来たのよ? この辺、クマは居ないんじゃないの?


「ど、動物もマナが必要なの?」


「ううん、あの子たちも皆、精霊だよ? 私みたいに姿を具現化できない弱い子達は、動物の体を借りるの。借りたお礼に怪我や病気を治してあげたりもするのよ」


 そうなんだね! 良かった、私、ブッダじゃなかった! ん? 良かったって言うのは不敬だね。すいませんでした、お釈迦様!


 だって、私も女の子だし、水掻きができたり偏平足になったりパンチパーマみたいな螺髪になったりするのは、ちょっと…


 悟りを開くと出ちゃうんでしょ?


「へぇー、そうなんだ。で、精霊の巫女姫ってなに?」


「精霊と心を通わせて、精霊に愛される乙女のことよ」


 うーん、否定しづらいね。 でも、あれ?


「ん? マナは関係ないの? 」


「ないない! だってそんな人間居ないもん。あなた本当に人間なの?」


「一応人間だと思って日々生きております」


「一応ってなによ?」


「迷い人でこの世界に来て、色々変わっちゃったから」


「そうなの? 可哀想に。そいつが浚ってきたの? とっちめてあげようか?」


「ち、ちがうの! ココ、そんなことしないの!」


 ココはまた怯えて、私の髪の毛の中に隠れてしまった。


「この子も一緒に来たの。同じ被害者よ」


「そうなんだ。帰りたい?」


「帰れるの!?」


「私には無理だけど、精霊王様とか妖精王なら何とかなるんじゃない?」


「クルミ、帰っちゃうの!?」


 驚きすぎてフリーズしてたセリスが再起動した。シャーリーさんも心配そうな顔。


「そんなこと言われても、精霊王も妖精王もどこに居るかも分からないよ」


「妖精王は知らないけど、精霊王様は精霊界にいらっしゃるわ。人間には行けないけどね」


「じゃあ、無理じゃないかな。それとも精霊さんが聞いてみてくれる?」


「良いわよ? じゃあ、今度お会いしたら聞いておくね!」


 王様に聞くのって、そんな軽いノリで良いのかな? 人間とは違うんだねぇ。言っておいて何だけど、逆に人間の王様に聞いといて!とか軽く言われたら困る。


「ところで精霊さんはお名前なんていうの?」


「名前なんて無いわよ? 人間じゃないもの。そもそも精霊同士だったら言葉なんて使わないしね」


「そうなの。じゃあ、木と花の精霊さんって呼んだら良い?」


「呼びにくかったら、あだ名付けてくれてもいいよ」


 また難しいことを。白い犬にシロとつけるくらいにシンプルな私に、あだ名をつけろと? 男の子だったらウッディだったのに。


 花の精霊さんでもあるなら、フラウで許してもらえないかな? だって外人の子供にあだ名って言われてもね? 花ちゃんじゃダメなんでしょ? 花ちゃん、可愛いけど。


「私、そんなネーミングセンスないんだよ? 安直だけどフラウでも良い? 女の子らしい可愛い響きで良いと思うんだけど」


「フラウ! 私、フラウね!」


 その瞬間、フラウの全身が輝いた。光が治まると、髪の艶が増して花がゴージャスになり、服も装飾が増えた豪華な物に変わっていた。顔や身長は変わんないんだけど。


 なんか、ソシャゲでよくある進化っぽいんだけど。そういうの、バトル物じゃないんですかね? やめてくださいよ、物騒なのは。


「キャーッ! 私、凄くない? 超イケてない? 上位精霊に進化したっぽくない?」


 なんでギャルみたいになってるのかな。お姉さん悲しい。3歳児みたいな見た目なのにギャル語はやめて。


「こらっ! 子供がそんな言葉遣いしたらダメ!」


「こっ、子供じゃありませーん! 人間よりずっとずっと長く生きてますー!」


「そういうところが子供なの。焼き芋あげるから、ちゃんとしてよ?」


 インベントリからトロトロの焼き芋を出してあげる。なんか向こうの動物達がそわそわしてるから、有るだけ出して渡しておく。


「皆で食べて。フラウって食べられるの? マナの方が良いの? ポンポンしよっか?」


「えっ! マナもっとくれるの!? でも、焼き芋ってのも食べてみたい!」


 動物達達がもっとソワソワし出した。皆、ポンポンして欲しいみたい。甘えたがってるみたいで可愛い。


「じゃあ、皆、おいで!」


 クマはちょっと恐かったけど、皆大人しくて、嬉しそうな目をしてる。片っ端から撫でてポンポンして、ギューッとして廻った。モフモフタイムって言うより、試合後の健闘を称え合う外国人選手みたいなノリ。


「焼き芋、そんなに無いけど、皆で分けてね!」


「じゃあ、お返しにフェアリーベリーあげるね」


「わあっ! ありがとう! フェアリーベリーなのに、妖精さんじゃなくて精霊さんから貰うと変な感じ」


「私、木と花の精霊だよ? 全ての果実は私の子みたいなものよ。フェアリーベリーって言う名前だけど、私が居なかったらそれただのラズベリーだもん」


「そうなの?」


 聞いてた通り、大きなラズベリーみたい。美味しそう! でもこれ、いっぱいあるけど良いのかな? 一人四つまでじゃなかったっけ?


「そうだよ。私達、木と花の妖精が住んでいる森でだけ、ラズベリーからフェアリーベリーに変わっていくの。私達のマナが含まれてるから、そのマナのせいで妖精が好んで食べるからフェアリーベリーって呼ばれてるのよ」


「へぇ、四つまでって言うのは?」


「それは知らないわ。全部穫ったら妖精が怒るのかもね」


 フェアリーベリーを作ってる本人から貰ったし、四つ以上でも大丈夫だよね?


「良かったね、セリス。いっぱい食べられるよ」


「う、うん!」


「普通の人間はあんまりたくさん食べない方が良いわ。人間はマナを代謝できないもの。あっ、それで四つまでなのかしら?」


「お腹壊すの?」


「どうかなぁ? 私達精霊も妖精も本来肉体を持ってないから、私達みたいに魂が体から抜けてくるのかもね」


「こ、恐っ! それ死んでるよね?」


「幽体離脱するくらいじゃないの? しないかもしれないけど。どうでもいいじゃない。どうせクルミはいくら食べても問題ないし」


「私だけ?」


「妖精も大丈夫だよ。クルミは私よりたくさんマナを持ってるもの。そんなベリーくらいのマナなんて有っても無くても一緒一緒!」


「軽いなぁ。でもこれ、うちの妖精達のおやつに良いってことだよね?」


「うん、普通はね」


「どういうこと?」


「だって、この焼き芋の方がマナの量、すごいよ? 焼き芋の方が良いんじゃないの?」


「えっ、それ皆で食べたよ?」


 慌ててセリスとシャーリーさんを確認したけど、特に変わりなかった。話を聞いてちょっと不安そうだけど。


「その二人?」


「うん」


「大丈夫みたいだよ。マナの淀みもないし、魂のズレもないもん。たぶん、精霊のフェアリーベリーと、精霊の巫女姫の手料理は違うんだよ。人間が作ってるから人間にも相性が良いのかも。初めて見るから知らないけどね」


「違うの! 妖精プリンセスなの!」


 私の髪の中から頭だけ出して不平を言っている。耳元で叫ばないの!


「どっちも違うと思うけど。大丈夫なら良かった。晩ご飯ご馳走しても大丈夫かな?」


「大丈夫、大丈夫。心配なら私もついて行ってあげようか? もし、入れてくれるならだけど」


「二人とも、この子も招待しても良い?」


 セリスとシャーリーさんが手を取り合ってるけど、私の手料理が不安なのかな。そうだよね、さっきの話を聞いたらね。


「良いけど、精霊をこの子とか呼んで良いの?」


「クルミは特別。私達のアイドルだもん!」


「精霊を怒らせると街や国が滅ぶと言われていますから、少し不安です」


「滅ぼさないって! 私、クルミの家見てみたい!」


 不安そうな二人を説得して、フラウも家に招待することになった。だって晩ご飯ご馳走して幽体離脱されたら、どうして良いか分かんないしね。



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