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沢山食べて大きくなぁれ!

ご評価、ブックマークありがとうございます。とても嬉しいです。

 ちょっとそこまで迎えに行ってただけなのに、やたら時間が掛かってしまった。ま、栗と鳥と蜂蜜を手に入れたから良しとしよう。あと、熊肉とくまぐるみも。


 やたら食べ物ばかり手に入れて、料理ばっかりしている気がするけど、だって農園に手が掛からないんだもん。農家なのにニートみたいな後ろめたさを感じる。


 明日はシャーリーさんについて行って野菜とか売りに行こうかな。


「あそこが我が家だよー」


「えっ、どこですか?」


「えっ、家があるの?」


 えっ、そこで牛さんが尻尾を振りながら草を食べてるけど。ツリーハウスだから地面を見てて家が見つけられないのかな。


「ああ、地面じゃないよ。ツリーハウスなんだ。ほら、あそこ。見た目より中は広いんだよ」


 ゲームによくある、見た目より中がやたら広い例のヤツです。


「え、ツリーハウスですか?」


「うーん、見つけられないなぁ」


「あそこにあるの。でも村の人以外には見えないの」


 えっ、そんな設定あったの!? そりゃまあ、ゲームだからゲームキャラしかいないけどさ。そういう問題なの?


「妖精の魔法でよそ者は入れないの。でも、二人はクルミが手を繋いでたら入れるの」


 そうなんだ。それで獣とか魔物とか襲ってこないのかな。


「こっちこっち!」


 二人の手を引いてホームに向かって進み始めると、二人は驚きの声を上げた。


「うわぁ、牛がいるよ! 羊も!」


「わぁ、こんな立派なツリーハウスが出てくるなんて!」


 牛さん達や果樹達にもただいまの挨拶にポンポンしておく。


「牧場や農園まであるんですね!」


「小さいけどね。可愛いでしょ?」


 ゲームキャラだっただけあって、牛も羊も実はメルヘンなデフォルメ仕様なのだ。縫いぐるみみたい。


 自分自身ゲームキャラになってたから全然違和感なかったけど、こうしてリアル現地人と並ぶと違和感が凄い。これで普通の動物だと思ってた私、ちょっとどうかしてた。


 やっぱり客観視って大切よね。反省反省。反省したらくまぐるみが恥ずかしくなってきたので部屋に戻ったら着替えよう。


 ふと見るとシャーリーが羊の毛に埋もれ、セリスが牛に抱きついていた。ああ、二人にはまだ、メルヘンが強かったか。


「二人ともメルヘンにやられてるめるへん!」


「うーん、メルヘン!」


 めるへん語尾にツッコミもしなくなってしまった。手遅れだ、すっかりメルヘンにやられてやがる。


「な、なんだかここの動物達は可愛すぎです。つい抱きついてしまいます。連れて帰りたいくらい」


 まあ、デフォルメ羊なんて普通いないもん。可愛いよね、フカフカだし。


「遊んでてくれても良いけど、着替えたいから私は部屋に行くよ?」


「大丈夫です、行きましょう!」


「えー?」


 セリスはもうちょっと遊びたいみたい。私はお腹が空いてきたよ。


「お腹空かないの? もうお昼過ぎてるよ?」


「ごはんなの! お菓子も食べるの!」


「わふっ!」


 セリスは名残惜しそうにしていたけど、やはり食欲が勝ったよう。


「うーん、ごはん!」


 駆けてきたけど今度はシロに抱き付いた。シャーリーさん、何真似して私に抱きついてるの。そういうのは着ぐるみ着てないときにして。着ぐるみ着てたら柔らかさとか温かさとか堪能できないじゃないの!


「はいはい、行きますよ!」


 引率の先生の気分になってきた。ブルーベルの森遠足、牧場見学付き。乳搾り体験はできません。


 階段を登ってやっとツリーハウスに到着。お茶を出してあげたいけど、きぐるみハンドではポットが持てない。ポット妖精は遠慮しときます。


「じゃあ、その辺でくつろいでいて。私、ちょっと着替えるから」


「わぁ、可愛い部屋! お花がいっぱい!」


「素敵ですねぇ」


 クローゼットでロココなクルミにチェンジ。うん、可愛いぞ! くまぐるみって何着かあるから、防具代わりに一つインベントリに入れておこう。


「ただいま。はい、ウエルカムドリンク」


 サッパリするようにオレンジジュースを出してあげる。紅茶はデザートと一緒に飲むし。


「わあ、可愛いー!」


「か、可愛すぎます! ああっ、持って帰りたい!」


 そうでしょ、可愛いでしょ、うちのみるくは! クルクル廻って全身を見てもらう。フリルがフワフワして可愛いでしょ?


「い、妹になりませんか!?」


「シャーリーお姉ちゃん?」


 ふざけて上目遣いで小首を傾げてみた。あっ、シャーリーの目が光っ…ぎゃー!


「痛い、痛いよー!」


 ベッドの不二子ちゃんに飛びかかる大泥棒みたいに飛んできました。愛とハグが強すぎて痛いです。


「ふしゅー、ふしゅー!」


「シャ、シャーリーさん、落ち着いて」


 今日のたった半日で、シャーリーさんのキャラが崩壊してしまった。このシャーリーさんも大好きだけどね。


 セリスはシャーリーさんにオレンジジュースを渡して落ち着かそうとしてくれている。こぼれなくて良かった。


 シャーリーさんはまだ私を抱きしめているけど、オレンジジュースを飲んで落ち着きを取り戻した。


 シャーリーさんは、柔らかくてとても良い匂いがする。柔軟剤替えた?


 あんな戦闘したのに美女は汗臭くならないんですね。Aランクハンターなのにムキムキじゃなくて柔らかいんですね。ステキです、お姉さま。


 でも私の髪をクンクンしないでください。ワンコですか。


 セリスは一息で飲んでしまって、シャーリーはゆっくりと味わって飲んでいる。


「すぐごはん食べる?」


「食べる!」


 セリスが元気よく手を挙げて答えた。シャーリーはニコニコしながら頷いている。


 インベントリから特製の野菜ゴロゴロチキンカレーを出した。途端にカレーの暴力的な香りが食欲を刺激する。 ぐぅー


「わぁ、いい匂い!」


「これは、シチューですか? とっても良い香りですね」


「うん、スパイスを沢山使ったシチューだよ。カレーって言うの。美味しいよ! ボナペティ!」


 二人は食事前の祈りをあげ、スプーンを手に取った。一口目は恐る恐る。でも二口目から勢いがついて、パクパクと食べている。


 美味しそうに食べてくれる人って大好き! もっといっぱい美味しいもの食べさせたくなっちゃう。


 ああ、鶏肉の皮がパリッと焼けてて美味しい! グリル野菜もホクホク。煮込んだ野菜も美味しいけど、これはこれで野菜の甘みが引き立って美味しい。


 私は福神漬けとからっきょは有っても無くても良い派。無いと嫌派じゃなくて良かった。そんなの持ってないもん。


 代わりにピクルスを付ける店もあるよね。ピクルスなら簡単に作れるから今度はピクルスも付けよう。


 あー、羊肉のキーマカレーも美味しいし、定番のカツカレーも食べたいな。コロッケトッピングも捨てがたい。


「豚が手には入ったらカツカレーも食べさせてあげるからね!」


「じゃあ、明日は豚肉を用意しておきます」


「えっ、明日じゃなくていいよ! またの機会で。このカレースパイスを沢山使うんだけど、スパイスってギルドかマルシェで手に入るかな?」


 カルダモンとかシナモンとかナツメグとか、流通してるなら自分で探さなくていいもんね。


「スパイスですか。一応街にスパイスを販売している店がありますが、鮮度は良くありませんよ」


「そうなんだ。でもスパイスは保存がきく物が多いし、今度見に行ってみるね」


「じゃあ、地図を書いておきますね」


「ありがとう。スパイスが無くなったら、カレーが作れなくなっちゃうからね」


「えっ、作れなくなっちゃうの!?」


「もう無いなの!?」


 なんでココまで驚くのよ。口元にカレーがベットリよ?


 可愛いなぁ。なんか母性本能が刺激されちゃう。子供ができたらこんな感じなのかな?


 日本ならティッシュで拭くところなんだけどティッシュなんかないよ。仕方ないので、刺繍の可愛いハンカチで拭いてあげる。基本的に可愛いアイテムしかないの。


「まだ数回分はあるけど、すぐ無くなるよ」


「じゃ、じゃあ、私、ヴァルシュタットやめてスパイス採りに行ってもいいよ!」


 私も考えたけど、天然のスパイスってそんな簡単に見つからないと思う。大体熱帯地方だし。


「そんな気軽に行けないと思うけど。場所も分からないしさ」


「大体のスパイスはもっと暑い地方ですね。そこまで行かなくてもユーリスの港に行けば交易船が来ますよ」


「そうなんだ? じゃあ、お店になかったら港まで旅行しても良いね」


「わーい、旅行なの! 行ったこと無いの!」


「そっか、ココは行ったこと無いのか。じゃあ、一度行ってみようか」


「わーいなの!」


 嬉しそうなココに、こっちまでホッコリする。


「ばうばう!」


「うん、シロも一緒にね」


「いつにしますか? 私も休暇申請をしないといけないので」


「えっ、シャーリーさんも行くの?」


「もちろんです。こんな可愛い女の子を一人でユーリスまで行かせるなんて、できません。まだ子供なんですからね?」


 シャーリーさんに叱られてしまいました。中身三十代でシャーリーさんより年上なので心苦しいです。


「セリスだって子供だよ?」


「えっ、私成人してるよ? 16歳だもん」


「私も成人してるよ。私の出身国では」


 引かれそうだから、年齢は言わないけど。


「えっ、そうなのですか? うーん、でもこの国では15歳が成人なので、保護者が居ないと色々面倒ですよ?」


「じゃあ、私が行こうか? アカネが戻ってからで良かったら」


「でも稼ぎに行かないとダメなんでしょ? 悪いから良いよ」


 護衛代くらいは出すけど、結構な日数を束縛しちゃうもんね。


「ユーリスからヴァルシュタットにも船が出てるから大丈夫だよ」


「まだヴァルシュタットに行くつもりなの? 危ないよ?」


「じゃあ、スパイス探しに行っても良いけど、どっちにしてもユーリスに行くのは悪い選択じゃないの。アカネも反対しないと思うよ」


「うーん、アカネさんが帰ってきてから相談だね」


 旅行かー、久しぶり! 元々旅行大好きなんだけど、仕事の都合で長期休暇が取りづらくて、長らく行けてなかった。船旅もいいね。


「ユーリスから船旅も楽しそうだね」


「ダメです」


「えっ、どうして?」


「外国に行ってしまっては、当分会えなくなるからダメです」


 シャーリーさんがギュッてしてくる。こんなに好かれる事なんて、そんなにないからとても嬉しい。


「シャーリーさんも一緒にあちこち旅できたら良いね」


 後ろから抱っこしているシャーリーさんの腕を、子供をあやすようにポンポン叩く。


「私、商業ギルドやめます」


「「えええーっ!?」」


「何を言ってるの!」


「ハ、ハンター復帰ですか!?」


「クルミさんが旅に出るときは、私がハンター兼保護者として同行します!」


 む、無茶苦茶言い始めた! あなた、人生をノリで決めていいの!?


「そ、そんな簡単に辞めちゃダメだよ!」


「帰ってきたら復職しますよ?」


「えっ、そんな軽いノリで良いものなの?」


 外国の人って気軽に仕事辞めて


「それなら、もういっそ来年のバカンスにでも行けば良いんじゃない?」


「バカンス?」


「うん、皆、1ヶ月か2ヶ月くらい休むじゃない? その時なら仕事辞めなくて良いし」


「でも、クルミさんはそんなに待てないでしょう?」


「全然良いよ! 良いよね、ココ?」


「もちろんなの!」


「そもそも、この国だって私達からしたら外国だもん。旅行みたいなもんだよ。帰れないけど」


「言われてみたらそうなの。まだそんなにリロイ観光もしてないの」


 そう言えば、ギルドとマルシェと家電量販店しか行ってないね。


「そういう訳で、旅行は来年にします」


 一年が何ヶ月かとか今何月かとか知らないけどね。


「そう言えば、今何月なの? 季節ってどうなってるの?」


 ざっくり聞くと一年360日12ヶ月、1ヶ月30日、一週間は7日。季節は地球の北半球と同じ。


 ほぼ一緒で簡単だ。謎翻訳機能の優秀なところは、月の名前も、曜日の名前も、日本語でも英語でも通じるところ。


 だから、現地語で10月がなんて言うか分からないけど、10月でもオクトーバーでも神無月でも通じちゃう。


 曜日は安息日みたいなのが日曜日になってて、後は順番に当てはめられてる。カレンダー作ろうかな。


 異世界感に欠けるけど、中途半端に現地語残されるよりきっちり訳してくれる謎翻訳は優秀。


 異世界で不安って気持ちがイマイチ強くないのは、謎翻訳があるから。ありがたやありがたや。


「あ、デザートも用意してたんだった。熱々タルトタタン、バニラアイスとミルクジェラート添えですよ」


「クルミの、美味しそうな呪文なの!」


 インベントリから出してるから、確かに魔法みたい。急に甘い香りが広がる。スキレットをひっくり返してタルトタタンを大皿に載せる。うん、美味しそうにできた!


 できたての熱々タルトタタンを切り分けて、アイスを添えてミントの葉を散らす。


「熱々と冷え冷え、美味しいよー?」


「熱い! 甘い! 冷たい! 甘い! 美味しい! これもこれも、全部美味しいよ!」


 セリスは一口毎に忙しそうに騒いでいる。お行儀悪いけど、こんなに喜んでくれたら、作った甲斐があってとっても嬉しい。


「美味しいの!」「ばうばう!!」


「はぁ、蕩けちゃいます。夢のようです。クルミさん、結婚してください。幸せにします」


「はいはい、紅茶で良いかな?」


 シャーリーさんのプロポーズはスルーして、美味しい紅茶を用意する。デザートが甘いからストレートが良いかな。一応レモンとミルクも置いておく。レモンって少しだけ欲しいんだけど、切ると日持ちしなくてもったいない。そんな悩みもインベントリが解決!


「それにしても、このタルトは美味しいですね。カレーもとても美味しかったですが、私はこのタルト、大好きです」


「良かったー。タルトタタンは嫌いな人もいるから、ちょっと心配だったの。念のためにカボチャプリンも用意してあるんだ」


「それも食べるの!」


「ちょーだい、ちょーだい!」


 食いしん坊が増えているぞ。食べ過ぎですよ、お客さん。


「そんなに食べたら太っちゃうよ。今日はゆっくりしていけるんでしょ? カボチャプリンは夜のデザートにしようよ」


「えー? まあ、あんまり胸とかお尻とか大きくなっても動きにくいかな?」


「ああ、胸は大きく動くとちょっと痛いですね」


 ちょっと待て、そんな痛み一度も感じたこと無いぞ!


「太るのはお腹とか太股でしょ?」


「えー? そんなとこにお肉付かないよ?」


「そうですよ、そんなよく動くところは筋肉しか付きませんよ」


 こ、こいつら! 現地人は皆チート持ちか! 女子の夢チートなのか!


「そうなんですよねー。お尻は良く動くのに柔らかいのは何でかな?」


「でも胸ほどではないですよね?」


「そっか、そうですよね!」


 ちょっとムカついたのでセリスの脇腹肉を摘まんでやる。


 えっ!? つ、摘まめない?


「ちょっと、つねったら痛いでしょ!」


 セリスがプンプンしてるけど、今はそれどころではない。シャーリーさん、シャーリーさんはどうなの!?


「あんっ!」


 色っぽい声はいいから! つ、摘まめない!


 抱き付いたら柔らかいくせに! どうなってんだ!


 に、憎い! 現地人女子達のチートが憎い!


 プンプンしているセリスと、首を傾げるシャーリーさんのお皿に、私は死んだ目でタルトタタンとアイスを大盛で追加した。


 太れ! 太ってしまえ!



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