第8話 チートスキルの否定
異世界転生物語で主人公は、必ずと言っていいほどチートスキルを持っている。
魔法スキルや剣スキルがMAXだったり、スキルを書き換えたり組み替えたり。
伝説の武具、防具、農機具を持っていたり、ちょっと間抜けだけど憎めない女神が一緒だったり。
そして、俺も例外ではない。
いや、俺のはチートスキルなのだろうか?
ある日、突然手にした無努力の裏技スキルではない。
毎日毎日、俺は道場の板の上で叩かれ嫌になっちゃうよ!
と、替え歌を口ずさむくらい努力して得たスキルだ。
家が代々引き継いできた鹿島神道流をマスターし、母方の陰陽力も引き継いでいる。
中二病と平成の世ではバカにされたが、妖の類が見えてしまったときは、その力で滅してきた。
ちょっとばかり変わった高校生だ。
「貴様は、刀を使えるのか?その手だ」
先ほどのスマートフォンを渡すときに見えたんだろうね、俺の掌の竹刀だこ。
物心ついた時には、すでにできていた竹刀だこ。
数日、竹刀や木刀、日本刀を握らなくても消えることがないほど、くっきりとついている。
「ええ、ですから鹿島神道流を少し」
「で、あったな」
さっき自己紹介で言ったばかりなんですがね。
タイムスリップのほうがよほど重要だったかな?
印象的だった?
「あと、陰陽道を少々」
と、言うと織田信長は少し鼻で笑ったような気がした。
「しかし、人は斬ったことはないな」
平成で人斬ったら犯罪ですから。
捕まりますから。少年院、下手したら刑務所ですから。
「ないないないない、あるわけないでしょ」
強く否定すると、
「貴様の時代は戦はないのか?」
「日本国内で言えば俺が生きていた時代ではありません、祖父母の時代には世界を敵にして戦っていましたが」
「世界と戦か?」
「西洋、南蛮の国々が敵でした。負けた後、友好的な関係を築き上げましたが」
「負けたのか?」
「はい、ずたぼろに」
「その話は追々聞きたいの、貴様、家臣にならんか?仮にも、わしの命の恩人、それなりの領地、城を与えて迎えるぞ」
一国一城の主?一畳の主じゃないよね?
いきなり俺は戦国シミュレーション織田の野望に城持ちとして登場しちゃうのか?
領地経営とか荷が重いんですけど。
これって、たゆまぬ日々の努力のたまもの?
「えっと、俺の鹿島神道流や陰陽力を欲しいからですか?」
「バカか?」
「え?」
「そんな人も斬ったこともない、『お遊び』の力なぞ必要とせんわ」
お遊びか。
俺のチートスキル全否定ですか?
そりゃね、戦国時代の人から見たら間違いなく『お遊び』ですよね。
一定のルールに乗っ取ってやっている試合なんか、遊び、スポーツだ。
生きるか死ぬかの命をかけた戦国時代からしてみたら、俺の剣技や陰陽力なんて屁も同然。
だとすると、いくら何でも命を助けたからって、いきなり城持ちは不釣り合いな気がする。
お金でたんまり渡したほうが俺みたいなのには、ちょうど良いのではと、思って首をかしげてしまった。
チートスキルを否定された俺をなぜに必要とする?