第809話 飛行機
「御大将、なにやら見張りが大騒ぎしております。とてつもなく大きな鳥が現れたとか」
と、柳生宗矩が言うので窓の外を眺めると、明らかにプロペラを回す飛行機だった。
「御大将、佳代様ですか?」
察しが早くて助かる。
「ほぼ間違いなく佳代ちゃんだから、兵達に慌てないように指示してって、どこに着陸するんだろう・・・・・・」
と、行先を見ているとナイル川に向かって進んでいた。
ん?ん??
「常陸、あれはなんだ?」
「あっ、信長様、あれは飛行機です。佳代ちゃんに作れないか頼んだのですが、あっさり作ってしまいました。ちょっと驚きですが」
佳代ちゃんに頼んで約半年で大空を飛ぶ物を作れるのだから科学チート能力恐るべし。
「儂も乗れるかの?」
「ん~どうでしょう、エンジンの出力とか次第だと思いますけど」
と、話していると、その小さな飛行機はナイル川に着水した。
水上飛行機・・・・・・あの豚の名作アニメ映画を思い出すが、機体の色はねずみ色でかっこよさはなかった。
桟橋に近づいてくると、大きく手を振っていたのはやはり佳代ちゃんだった。
「真琴君、作ってあげたわよ。どう?」
「凄いよ、佳代ちゃん。科学チート能力凄すぎるよ」
タイムマシンを作り上げてしまうくらいの科学チート能力を持つ佳代ちゃんには簡単なのか?
「ふふふふふっ、真琴君の家臣の職人集団が良い仕事してくれたから作れるのよ。竹の骨組みと和紙とこんにゃくとで」
「こんにゃく?」
「うん、防水性を出すのに、こんにゃくを塗ったの」
・・・・・・俺が知る歴史戦では太平洋戦争で茨城県北茨城市の五浦海岸などから風船爆弾をアメリカ大陸に飛ばしている。
和紙にこんにゃくを塗り、ガスを入れ飛ばす。
実際ジェット気流に乗りアメリカ大陸まで到達しており、山火事を起こしたとか、被害を受けた家族がいたとか聞いた事があるが・・・・・・。
「なるほど、だから、こんにゃく色なのね。せめて、こんにゃくに赤色入れて塗って欲しかったかな」
「ふふふふふっ、これは試作品だから」
「佳代、これは儂も乗れるか?」
「信長様、ちょっとこれは操縦にコツが必要なので、それにエンジンが非力なので一人乗りで。もう少し時間をいただければ複数人乗れる双発機の機体が出来ますから」
「うむ、楽しみに待っておるぞ」
織田信長、乗る気満々。
「真琴君、地中海の移動が早く出来るように今、作っているからね。船だと移動時間がかかるでしょ?」
「そうなんだよね。それが悩みの種だったから、世界を飛び回れるようにしたいのだけど」
「ん~そこまで航続距離があるのは作れないけどね・・・・・・飛行船なら可能かも」
「飛行船かぁ、あれば良いかも。でも今なら地中海移動が最優先かな」
「スロバキア王国からカイロに来たって、次はどこ行くつもりなの?」
「エルサレムだよ」
「・・・・・・真琴君、エルサレム問題に手を出すの?」
「まだ決めてはいないよ。ただ、一度見ておかないと」
「私の居た時代線でもナイーブな土地になってしまっていたから、扱い方を間違えると大変よ」
「佳代ちゃんの時間線でも、そうなんだ・・・・・・」
ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地が一ヵ所に集まっている地。
今は他民族文化を尊重してくれているオスマン帝国アメフトスの支配下。
俺が生きているうちに一石を投じておかないと、未来に続く火種になるだろう。
そう考えると観光気分は消えてしまった。




