第807話 黒坂北斗七星桃信
カイロ大使館に入ると前回より緑が増えていた。
桃信がオーストラリアから運んできたユーカリや、南米から取り寄せたサボテン、マングローブを植えて試験をしているという。
「父上様、いかがでしょうか?」
と、桃信。
「いろいろ試していくのは良いことだと思うぞ」
「はっ、アメリカ大陸のセノーテやローマ水道を参考にして地下に水道を引き、ナイル川の水を少しずつ砂漠に伸ばし、オアシスを作り、そこに植林をして行こうと琴彦と相談いたしました。琴彦はそちらで働いています」
「うむ、良いことだ。少しずつ進めなさい」
「前田慶次殿や真田幸村殿からの技術応援も来ましたので、あとは琴彦に任せ、私はそろそろオーストラリアの城に入ろうかと思います」
元々、桃信にはオーストラリアの統治を任せるよう計画していた。
サハラ緑地化計画は琴彦と慶次、幸村の家臣がいれば大丈夫。
それに琴彦の嫁はオスマン帝国アメフトスの娘。
琴彦には桃信の補佐は、もう必要がない。
「そうか、広大なオーストラリアを頼むぞ。アボリジニの民とは仲良くな。何事もアボリジニの民と合議によって進め、独裁者にならぬようにな。いずれ俺もまた行くがな。それとな、オーストラリア大陸やニュージーランドには無用な動物を入れるな。特に人が管理出来なくなるくらいに増えそうな物は特にだ。犬や羊なら管理も出来ようが、兎やキツネなど入れるではないぞ」
「はっ、生態系を壊さぬようにで御座いますね」
「そうだ、あの大陸の動植物は他とは違う進化をしている。それは大事にしないとならないからな」
「ははははは、父上様が子供の頃にウォンバットを茨城城に連れてきたのを思い出しますよ。あのように愛くるしい動物たちが滅びぬよう働かせていただきます」
「うむ、頼んだ」
俺流動物教育のおかげか、我が子供達は、動物を大切にする心を持っている。
教育などと大した意識ではなく、子供達が喜べばと、思った事が成長して役に立った。
大航海時代から21世紀にかけて、人間の移動のせいで多くの動物たちが滅んでいる。
人間を恐れない陸亀や、のろまな鳥などは有名な所。
人間が食糧として後先考えずに獲れる物をすべて獲ってしまったり、元々その地には居ないキツネや猫、ネズミ、などを入れてしまい、天敵が居なかった土地の動物たちは食べられたり住処を奪われたりして、生態系を大きく壊した。
しかし、今からそれを保護することが出来れば、種は未来にも繋がるだろう。
それが出来る立場に居る以上、意識しないわけにはいかない。
これから俺がしていく活動の一つだ。
俺と入れ替わりに近い形で、桃信はオーストラリアのケアンズ城に旅立った。




