第795話 元祖暴走族?前田慶次
リエーガ城よりバードリ・エルジェーベト女王から屋敷を借りて生活するが、どうも落ち着かない。
俺の萌とバードリの萌の趣味の違いが、大きな違和感だからだろう。
自分の趣味に合う住居に住みたいな。
約2週間、そんな頃、イタリアから使いが来た。
前田慶次の息子の前田正虎。
「大殿様には御健勝でなによりにございます」
「慶次は元気か?」
「はい、すこぶる元気で、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアを行ったり来たりしております。最近では、ヴェネツィアの工房で作った二輪で走る奇怪な車を作らせまして、馬よりも早く走っております」
「二輪車?」
「はい、菱形戦車の動力を小型化したものを乗せて駆動にしております。父上より大殿様にもと献上品を持ってきております」
パンパン
と、二度手を叩かれると庭に続く戸が開けられ、
「うわっ、バイクじゃん・・・・・・」
外には原始的な形だが、明らかにバイクが置かれていた。
「おや、父上様が大殿様に見せれば命名していただけると言っておりましたが、なるほど、『ばいく』と呼べばよろしいのですね」
何気にうちの重臣達は俺の秘密を知っているから仕方がないことだが。
「うん、原動機付き二輪車『バイク』と呼ぶと良い。そうか、ヴェネツィアの職人が作り上げたか。どれ、エンジンをかけてみてくれ」
と、言うと、家臣が紐を一生懸命、何度も引張りエンジンをかけた。
けたたましい音と白い白煙、
「何事に御座いますか?御大将」
と、慌てて柳生宗矩が来てしまった。
「ゲホゲホゲホ、心配ない。ゲホゲホゲホ。一端止めて、ゲホゲホゲホ」
と、咳き込みながら止めさせた。
「御大将、大丈夫で御座いますか?」
「うんうん、慶次の贈り物なんだけど、庭では止めておこう。煙がひどいな」
「ほほう、慶次殿からの贈り物ですか?奇怪な物を送ってきましたな」
「これ、煙いけど便利なんだよ。馬がなくても済むから」
と、庭に降りてジロジロと見る柳生宗矩。
「まぁ、広い外で試して見せてあげて、正虎」
「はっ、仰せのままに」
と、リエーガ城の馬場を使い前田正虎がバイクを乗ってみせると、柳生宗矩だけでなく茶々達も歓喜していた。
「ちょっとエンジンの改善が必要だから、佳代ちゃんのとこに送って。すぐに改良の指示して貰うから、それでヴェネツィアで作って貰って。しかし、これで慶次は移動しているの?」
「はい、父上はこれでイタリア半島を駆け巡っております」
・・・・・・俺のいた頃には、ほとんど絶滅した暴走族みたいだな。
前田慶次、【夜露死苦】などと旗をたてないことを祈ろう。
佳代ちゃんに、改良の指示を頼む手紙と共に欧州イバラキ島にこのバイクは送った。




