第790話 アドリア海
シチリア島からアドリア海に入る。
憧れだった海だ。
赤い飛行機に乗る豚が、活躍する映画を観て来たかった海。
それを今、自分の船で航行しているのが不思議だ。
ここを上から見られたらどんなに良いだろうか、と、帆に上ろうとすると、お江に
「慣れていないんだから止めなよ~マコ」
と、止められてしまった。
「うっ、ごめん」
周りに心配そうに見ている家臣達の視線が痛く、上るのを諦めた。
「マコ~佳代ちゃんに空飛ぶ乗り物作って貰ったら?」
「出来るかな?頼んでみても良いけど」
「そう言えば、インカで熱気球?に興味持った須佐どうしているかな?」
「そうなんだよな。南アメリカ大陸にも行きたいんだけど」
インカ帝国は一段落して、今は隣国に領地を持つ伊達政宗に任せっきりとなってしまっている。
「須佐なら、人を乗せられる熱気球作っているかもしれないな」
「人力で飛べれば良いのにね、マコ」
「お江、人が空を飛べるわけないでしょ」
と、お初が水を指してきた。
「いや、俺がいた時代は普通に飛行機と言って、大型の物だと400人くらい乗せて世界を飛んでいるんだぞ」
「ですが、それって未来に出来る機械があるからですよね、真琴様」
と、茶々が空を見上げて言う。
「確かにそうだが・・・・・・」
懐紙で紙飛行機を作ってアドリア海に飛ばした。
青い海に飛ぶ白い紙飛行機は、風に乗り見えなくなるくらいまで飛んだ。
「人力でも飛べれば良いのにね」
と、紙飛行機の行先を見ながら、お江が言う。
「あっ、そうだよ。機械動力ばかりを考えていたから難しくなるんだよ。人力飛行機や滑空機って手もあるんだよ。これなら佳代ちゃんの知識でも作れるかも」
俺が知る平成時代、素人が作る、人力プロペラ機が40キロとかの大フライトをして番組の記録を毎年のように塗り替えていた。
人力プロペラ機、悪くないな。
竹や和紙を使って作る。
チェーンも蒸気機関や戦車に使っているので、もうある。
そうなれば人力の要となる部分は作れる。
っ、て俺が漕ぐのか?
あの番組の操縦士は、ぜーはーぜーはーぜーはーで景色を見ている余裕などなかったはずだが・・・・・・。
上から優雅に景色を楽しみたいだけだから、やはり熱気球が理想的だと思うんだけどな。
ガス使って飛行船?
どのみち佳代ちゃんに相談事項だな。
そんなことを考えながら、スロバキア王国リエーガを目指した。




