第78話 大津城築城視察・二回目
寒い冬でも屋敷に閉じ籠っているわけにもいかない。
一応は城主に任命されてしまった以上は任せっきりにはしたくない。
後の世で築城の名手の一人として名の残る蒲生氏郷が築城奉行でもだ。
視察に行くことを力丸から蘭丸に伝えると信長は安宅船を貸してくれる。
まぁ、領内勝手自由なのだから、勝手に街道を馬で行く手段もあるのだが、単純に船の方が早い。
もちろん、茶々達も同行する。
茶々は妻であるからわかるのだが、お初とお江は完全にプチ旅行気分。
こういう時じゃないと城から出られないらしい。
幸村、今日も世話、あ、いや、護衛は頼んだよ。
冬の琵琶湖は寒い、水の上なのだから当たり前だが日本海から吹く風が寒さを増して身に凍みる。
せっかくだから貰った、この場合、拝領したと言うべきなのか、赤いマントを着た。
俺は基本構造的にタイムスリップをしたときに着ていた学ラン型の服を作って貰って愛用しているので、学ランに赤いマント、更には腰には太刀と言うなんとも言えないミスマッチな服装になっている。
マントや陣羽織って意外に博物館に残っていて目にしてきたが、和装と合うっていうのが少し不思議な感じがする。
マントで体は温かいが頭が寒い。
ん~真田昌幸が持ってきた毛皮で帽子作って貰おうかな。
ロシア風みたいなのを。
マタギの人とか被ってないのかな。
茶々達はいったい何枚、着物重ね着しているの?っていう感じで襟が見える。
十二単と言うのだろうか?
流石に十二枚は着ていないだろうが、重たくないのだろうか?
毛皮あるからベストでも作ってプレゼントしようかな。
力丸達は毛皮で作られた陣羽織型のを着ている。
ニホンオオカミの毛皮らしいが、基本的には薄着。
この時代の人は寒さに強いのか?
我慢大会みたいで見ているこっちの方がますます寒くなるよ。
安宅船の中では火鉢にずっとあたっていた。
前回と同じく茶々のひざ枕で。
今回は服が何枚も重なっているせいか少し柔らかい。
「常陸様は軟弱ですね」
と、だけ茶々は言った。
寒がりなとこ?船酔いしやすいとこ?と、聞こうとしたが、口を開けば言葉ではなく違うものが出てきそうなのでやめた。
お江が船内を走り回っているので、お初と幸村は追いかけている。
元気だなと、感心してしまう。
冬の風が強いせいか揺れが酷いので、起きているのは辛く茶々のひざ枕で目を閉じた。
うとうとと眠りに入った頃に、着いたと起こされる。




