第597話 アイアン・メイデン夫人
「あの女の夫って元々はうちの国の敵なのよ」
と、アセナはつっけんどに言いながらもジュースとお絞りを持ってきたので俺はそれで顔を拭いて、新たに調合されたベリージャムを炭酸水に溶かしたジュースを一飲みした。
今日のアセナのお水は、成功だろう。
「美味しいが、もうちっとだな・・・・・・65点」
「おにいちゃん、厳しい」
「なっ、それより知っているのバードリ・エルジェーベト?」
「ハンガリー軍の英雄よ。確か、ナーダシュディ・フェレンツとか言ったはず」
「へぇー、そうなんだ」
俺は炭酸ジュースをまた口に運ぶと、
「残虐な指揮官で捉えた我が国の兵士を虐殺した噂がある、黒騎士とか言われていたはずよ」
「へぇー、そうなんだ」
「もー、おにいちゃん。そんな人は早く追い出してよ」
「そうは言っても欲しい人材なんだよ。万年家臣不足のうちとしては使える人材は使いたいし」
「なら、うちの国からも教師だすわよ」
「おっ、そうか?出してくれるならありがたい。むしろ俺から頼みたいくらいだ。多様性に沿った学校にしたいからな」
「不思議な事しているわよね」
「そんな自覚はないんだがな。時代的には珍しいのだろうけど」
「時代?」
「気にするな。そのうち、バードリ先生もわかってくれると思うが、女性が弱いんだよ今は、だから強く育てたい」
「わかってくれるかしら?アイアンメイデン夫人が」
「はい?」
「だから、アイアンメイデン夫人」
「ぶほっ、」
俺は口からジュースを吹き出してしまうとアセナはお絞りで拭いてくれた。
「アイアン・メイデン?ちょっとちょっと待てよ。それって拷問器具だろ、知っているぞ。確か魔女裁判だかで使うんではなかったか?」
「はあ?処女を捕まえては血を絞るのに使った器具よ」
・・・・・・二次元オタクなら一度となく、なにかの作品で見たことがあるだろう鉄の処女と言われる拷問器具。
「あの人が作ったって噂があるのよ、おにいちゃん」
「なにかの間違いだろ?そんな気配と言うのかそこまでまがまがしい気は感じないぞ」
異国人なのでか少々陰陽の力では裏の人品骨柄を見えにくいが、そこまで嫌な気配を感じ取れてはいない。
俺の力不足というのかも知れないが。
「別に私は良いけど」
と、アセナも部屋から出て行く。
ん~そんなサイコパスなのだろうか?・・・・・・俺の見立てでは違うんだけどな~・・・・・・。
しばらくは、注意か・・・・・・。
サイコパスには必ず妖の気配が付きものなんだけどな・・・・・・。
悪魔はわからないのか?
まあ、アイアン・メイデンの真意は俺が信頼できる者が見たとかでなければ処罰は出来ない。
中世ヨーロッパでは人を陥れるために嘘の告発裁判が横行していたくらいは知っている。
ハプスブルク家につながるバードリ・エルジェーベトなら領地争いで陥れられている可能性だってある。
理由は知らないが、城を追い出されてしまっているのが良い証拠だろう。
でなかったら、羽柴秀吉の側室になどならないだろうし・・・・・・。
あれ若かったら俺に押しつけて来たのかな?
あんな下ネタヒロインはうちの側室にはいらないぞ。
そんなことを考えながら数日すると、茨城から左甚五郎と国友茂光の物作りの巧み集団が到着したので、俺は発電機開発に集中するべく学校のことは、お初に任せた。




