第595話 くノ一お江とバートリ・エルジェーベト屋敷
「お江、少しバートリ・エルジェーベトを調べてください」
私は、お江に依頼をしてみる、前田松がなにか怪しんでいる様子を見せていたので。
柳生宗矩に頼めば真琴様の耳には必ず入る、だが、その前に調べておきたい。
バートリ・エルジェーベトを信用し学校の教師に採用したのは真琴様。
もし、その採用に問題があったとしたら学校運営の根幹を揺るがす事態、そうなれば採用した真琴様の名に傷が付く。
内々に調べて私の名で排除してしまえば問題は小さく収まるはず。
「えぇ~あの屋敷に、もう一度入るのやだな~」
「え?」
「だから、もう忍び込んで見てきているの、初姉上様。私だって馬鹿じゃないんだからね」
「いつ?」
「ん?マコが採用してすぐ」
「真琴様に言われて?」
「違いますよ~、真琴様に近づく女性は誰であれ一度は忍び込んで怪しくないか見てきているの。バートリちゃんの屋敷は趣味悪い屋敷だったよ。マコが楽しげな陽の部屋を愛しているのとは反して、なんとも魑魅魍魎の陰の屋敷だったよ。だけどね~特になにもなく、猿との夜の営みを見ちゃっただけ」
と、お江は苦笑いをしている。
異国の魑魅魍魎?噂に聞く魔女と言う者なのかしら?真琴様の陰陽師の力は異国の妖怪には聞かないという事なのかしら?
まだ大きな問題は起きてはいない、なら様子を見るしかないという事?
「また行ってきても良いけど、忍び込んだのわかっちゃったみたいでバートリちゃんの手下が厳重に見張っているんだよ、だから、行くなら何人か始末しないとならないけど~」
「お江、今のは忘れていいわ、何も罪ない人を始末するなど真琴様が聞いたらどう思うか・・・・・・」
「うん、私もそう思うから二度目はやめたの~」
「その陰湿な部屋と言うだけで特に変わったことはないのですね?」
「うん、このジブラルタルの屋敷ではね。本国に城持ちらしいですよ、バートリちゃんは」
「そう、有力な領主の夫人だったらしいですからね。まあ良いでしょう。前田の松とバートリ・エルジェーベトは少し険悪になりかけています。お江も学校では気にするように」
「は~い、初姉上様」
しばらくは様子を見ましょう。
異国の地で異国の文化を教える女性教師は必要な存在。
問題が起きていない以上は様子見です。




