第586話 黒坂真琴は笑い者?
『石けんの製造に使える重曹を大量に作れる製造方法をあみ出した者に、一両小判1000枚(100000000円)を与える。日本国・右大臣黒坂常陸守真琴』
『微弱な雷を人工的に連続的に発生させる装置をあみ出した者に、一両小判1000枚(100000000円)を与える。日本国・右大臣黒坂常陸守真琴』
日本国の支配下や友好国、また、貿易相手国の港に出された高札。
重曹は理解できるらしく、科学的知識を持つ者は研究を始めたと噂を耳にするが、二枚目の高札で俺は世界中の者の笑い者になっているとも噂が耳に入る。
俺の秘密を公式に知る側室達や、織田信長、森三兄弟、そして、非公式に知る家臣達だけは笑う事はないのだが、
「世界の笑い者か・・・・・・」
と、天守の最上階から海を見ながらつぶやくと、
「真琴様、私達は知っているからこそ笑えませんが、今の時代でそれを理解する者は少ないと思います」
と、お初が慰めてくれた。
「未来だと、電気って普通に作れて世界中で使われているんだよ。それこそ電気がないと生活出来ないくらいに」
と、言うとお初は、
「そんなに重要な物なのですか?今はなくても、こうして人々は生きていられるのに」
と、言う。
確かに不思議な物と言える。
水や食料、薬などとちがく、なくても死ぬ訳ではない。
だが、俺が生まれ育った21世紀では間違いなくないと生死に関わるくらいな物になる。
311で実感した。
長期間の停電で、食べ物の保存に困り、移動手段もなくなり、連絡手段もなくなり、水も浄水できなくなり水道は止まった。
そして、機械がないと生きられない人は・・・・・・。
「確かに電気がなくても人は生きられるけど、便利に慣れてしまうと言うか、生活に使う器具がそれに合わせて発展してしまっているから、家の中で火を使えなかったり、電気が止まると水が使えなかったりするんだよ。病気や年齢で衰えたりした肉体を電気で動かす機械で補助したりしていたし」
「火が焚けない?囲炉裏、火鉢、竈、真琴様が作られたあの鉄製のストーブもないのですか?」
「普通の家にはなかったね。ストーブは一部の愛好家や木材を扱う仕事をしていたり、寒い土地で住む人は使っていたけど、火鉢、竈、囲炉裏はまず見ないよ」
「未来の生活がますますわからなくなりました」
「はははっ、だよね。電気で風呂も沸くしね」
「謀ってないのは、わかるのですが不思議です」
と、お初は考え込んでしまった。
電気、おおよその発電の知識はある。
銅線と磁石があれば作れたはず。
電気は自分で開発する道のが近いだろう。よし。
「常陸から国友茂光と左甚五郎を呼び寄せてくれ」
と、言うとお初は渋い顔をする。
「左甚五郎・・・・・・」
「美少女彫刻ではないから、発電機作るのには歯車とか必要だから」
「本当ですか?」
「本当だから」
「はい、わかりました。手配致します」
どうも、お初は左甚五郎?美少女彫刻アレルギーが治まらないようだ。
そろそろ諦めてくれないかな・・・・・・。




