第583話 ツンツンツンツンデレ娘
さらに一ヶ月が過ぎる。
お初とお江とラララは昼間は側室面接で忙しい。
桜子や小滝は学校のことがある。
昼間、最近お世話係となっているアセナ。
最近、口数が少ない。元気がないのか?
そんなアセナは、チャイと呼ぶお茶を入れてくれる。
俺は抹茶だけでなく、お茶は全判的になんでも好きなので嬉しい。
香り高いお茶だが飲みやすい。
「美味しいよ」
と、言うと、
「私が入れてあげたんだから当たり前でしょ」
と、返事が返ってきた。
やはりツン娘でデレがないじゃん。
出会った当初の、お初よりツンツンしているよ。
乱雑にした書き損じの書類などを片付けてくれているアセナの背中が少し元気がない様子。
「国から出て疲れてきたか?なんなら、その16歳まで国で過ごしても良いのだぞ」
と、声をかけてやる。
と、俺の背中に抱きついてきた。
「おい、俺は16歳以上、しかも体がちゃんとできあがっていないなら子供を生ませるような負担をかけさせたくないから抱かないと決めているんだ」
と、言うと、
「こうするくらい良いでしょ・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・ちがう~~~~」
と、逃げていく。
はあっ???
なんかわかったぞ。「真実は一つ」と、言いながらしてもいない眼鏡を整える仕草をしてしまった。
いずれは他家に嫁がねばならない身。
その中でも今一番勢いがあるのは自分で言うのも変だが俺だ。
そこに嫁ぐのは国の為にもなる。
そして、うちは女性軽視をしない事が有名、条件的には良いはず。
そこに嫁いできて、気丈に振る舞うあまりツンツンしている。
根は甘えたい。
表面的にはお初で、中身はお江と言う事に気が付く。さらに言えば真面目な茶々の性格も入っている。
それをお初とお江に言うと、
「マコの鈍感、今頃気が付いたの?」
「真琴様、本当に鈍感ですね。私達姉妹はすぐに見抜きましたよ」
と言う。
なるほどだから合格なのかと納得する。
「おそらく、以前側室の打診があったときから黒坂家に嫁ぐために教育を詰め込まれたのでしょう。だから、あの歳で素晴らしい踊りを見せるわけです。日本語も堪能なのですから」
「マコ~、アセナちゃんは私達が何か教えるときも真剣に聞くんだよ。なにをしたら喜びますか?って聞いてくるんだよ。だから、「お兄ちゃん」って呼ばれるの好きみたいだよって教えたのに~」
「『お兄ちゃん』って呼んで良いって言ったの梅子にだか、桃子にだかだったくらいなのによく知っているな」
昔々、緊張しながら働いてる桜子三姉妹の妹達にお兄ちゃんだと思って接してくれて良いと言ったのだが、と、言ったことがあるのだが、それは側室の間では有名な話になっていた。
「大丈夫。宗矩に調べさせたけど、暗殺するつもりはないみたいだから。身の回り品は最低限の身を守る物くらいしかないし毒も持ってないよ。チャイもマコに出す前に自分で一口飲んで毒入っていないか確認しているくらいなんだから」
「そうか、アセナは実は真面目娘か」
「だから、合格にしたのですよ」
と、お初は言う。
もう少し優しく接してあげないとな。




