第566話 ブラック・スワン号・艦長・黒肌弥助
上様は無茶な事を言われる。
こんな広い所から黒坂常陸様を探せと言うのだから。
しかも誰にも悟られずにって難しい。
ジブラルタル港から先ずはマイアミ城に向かうと、黒坂家家臣の佐々木小次郎が海岸沿いでやたらと長い太刀で素振りをしていた。
柳生宗矩が経由しているはず。
「自らの大将が大変なことになっているのになにをしていますか?」
「これは弥助殿、ようこそおいでくださいました。良かったら黒坂家自慢の唐揚げでも」
「俺はそんなもてなしを受けに来たのではない。これから今まで行ったことがない地に向かって船を進めるのに当たって情報を聞こうと思っていたのに、あなたの大将が大変な事になっているというのに」
俺が怒って言うと佐々木小次郎は澄まし顔で、
「だからこそ、ここで守りを固めているのですが。それが、御大将よりここの留守居役を任されたそれがしの役目」
・・・・・・。
そうか、もし異国にこの子細がわかってしまえば再びこの大陸に目指そう、侵攻しようとする者が必ず出てくる。
だから、上様はジブラルタル海峡を封鎖したのか。
それだけでは不十分、黒坂常陸様の地図を見れば北海からも船は出せる。
だからこそ動けない。
動きたくても動けない悔しさを素振りで晴らしていたわけだったのか。
「申し訳ない」
俺は一言謝ると、佐々木小次郎は飛んでいた海鳥を一撃で仕留め、
「さぁ唐揚げにしましょう」
と、笑っていた。
俺は次の日、マイアミ城で補給を済ませ、南アメリカ大陸に船を出航させた。
どこにいるのだろうか、黒坂常陸守真琴。




