第560話 インカ帝国からの旅立ち
インカ帝国、ことさらこの太平洋沿岸地域、平成で言うペルー周辺には見たい遺跡は多い。
ゆっくりと滞在して、すべてを巡りたいところなのだ。
チャビオの考古遺跡、聖都カラル・スーペ遺跡、チャンチャン遺跡、チチカカ湖、太陽の門・・・・・・。
しかし、その滞在を許さない知らせが届いた。
「常陸、そろそろ戻ってこい」
織田信長の手紙だ。
急を要することではないらしく、使者も年内をめどにジブラルタル城に入城して欲しいと言う。
急用なら陸路で大西洋に出て高速連絡船に乗る事も可能なのだが、今回の旅の目的の新航路開拓もあるので、その道は使わず、蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦・武甕槌で太平洋を南下する。
ファナと須佐とはしばしの別れだが、世界を飛び回ることを理解している二人は涙を見せずに見送ってくれた。
大西洋側の国々には、陸路で早馬を出し俺が寄港する可能性があるから港で敵対するような勘違いをしないようにと使者を走らせてくれるそうだ。
寄港する度に一悶着起きるのも困るので助かる。
目印は俺が使用している旗、織田木瓜の家紋とその下に描かれた抱き沢瀉の家紋が目印の旗となる。
・・・・・・このままでは国旗が家紋になってしまう。
案はすでに出来ているが、織田信長の許しなしで使用するわけにも行かない。
家臣ではないというのがそろそろ言い訳としては苦しくなってきている立場ではあるが、それでも織田信長を立てなければあの男は必ず怒る。
もう長い付き合いなのでそのくらいの事はわかっている。
ホウレンソウ。
報告・連絡・相談が出来ていれば、怒られはしない。
先に陸路で大西洋に出てジブラルタルに戻ると言う使者に、国旗の案として作った旗を渡す。
『日本国旗として、使用したいので許可してはいただけませんか?このままでは家紋が国旗として使われるようになってしまうので』
と、手紙を添えて。
俺が考えた国旗。
勿論、日の丸の採用も考えたが、あの旗は由来が帝の軍である『錦の御旗』に由来すると一説あり、朝廷の下から逸脱した今となっては採用したくはない。
そして、色合い的にも地味で目立ちにくいのが残念な日の丸。
シンプルでわかりやすいし、書きやすいと言えば使い勝手も悪くはないのだが、ここはもっとかっこよくしたい。
俺のセンスなので「格好いいか?」って批判されそうだが。
新しい図案を描いた。
もちろん、そのような物に厳しく目を光らせているお初も了承済みの旗だ、萌え萌えはしていない。
図案の発表は、もう少し後にしよう。
誰にお披露目?
気にするな。
織田信長と再会するときに皆に披露するつもりだ。
船は荒々しく波立つ海域に入っていた。
「みんな、ここからは波が荒いのが有名だ。心して船を進めよ。それと物見を交代で前後左右すべてに注意させよ。氷の塊などが浮遊する海域だ。ぶつかる事がないように注意を最大限はらってくれ」
進む海域は南アメリカ大陸と南極大陸の間のドレーク海峡と呼ばれる地。
氷山とぶつかればタイタニックになってしまう。
慎重に船を進める。




