第487話 ジブラルタル城と織田信長
俺を不用意に叩ける人物はそうそういない。
俺には警護は、もちろん付いているのと仲が良い関係でも俺は異質な存在なのだ。
安土幕府に臣下の礼を取っておらず、扱いはこの世界に来たままで『織田信長の客分』なのだ。
少々無理な気もするが、実際がそうなのだから仕方がない。
そんな俺を叩くような人物・・・・・・。
お初か、織田信長くらい。
そして、今回叩いてきたのは織田信長だった。
「あっ、久しぶりですね。相変わらずよく日焼けしてますね」
織田信長はハワイで逗留している事が多くなり、こんがりと日焼けしている。
「なにが久しぶりだ。任せていたらこんな傾いた、いや、萌えた城を作りおって」
「はははは、素晴らしいでしょ」
「ああ、真琴の美的価値観を知らぬ者が見たら腰を抜かすような物であるな。そして、これはなんだ」
と、太陽系オブジェを見ている。
「これは、あそこが地球でこちらが太陽なんですよ。太陽を中心に回る惑星を表している模型なんです」
と、指を指して言う。
「ほほ~う。地球儀は見ていたが太陽の周りをこのように動いているのか?月はどれじゃ?」
「あっ、月忘れてた。月は地球の周りを動いてる星になります。月、作り足さなきゃ馬鹿にされちゃうな」
織田信長の言葉で月を作らなかった失敗に気が付きすぐに追加した。
「南蛮の者どもは地球が中心に他の天体が動いていると言うが、未来の観測ではこのような物だとわかっているのだな」
「はい、しかもこのような太陽系みたいな物は宇宙に無数に存在するのですよ」
「では、他の星の民人と交流したりするのか?」
「ん~俺の時代でも地球から月に行くのも簡単ではないですからね。他の星の生命体とかとの接触は正式にはしていないのでわかりませんが、地球と似たような環境を持つ星があるとは言われているので、俺が育った年よりずっと先には交流するかもしれませんね」
「ははははは、なかなか、面白い未来物語よの~。それで、儂の部屋も萌えているのか?」
織田信長が居住する御殿に案内する。
その部屋はごくごく普通の書院作りにしてある。
襖も欄間も花鳥風月。
「なんだ、面白くない」
と、織田信長は萌えを期待していたのかな?
「え?萌え美少女に改装します?左甚五郎がいるのですぐ出来ますよ」
「いらん。鬱陶しい」
どっちなんだよ。
「美少女ではなく、その宇宙とやらの装飾にせよ」
「あ~なるほど、そういうことですね。わかりました」
襖を宝石を混ぜた絵の具で塗った物に変更して、天井も星座を描いてみた。
欄間は俺が下絵を描いたスペースシャトルやロケット、人工衛星などを彫刻して貰う。
「俺が住んでいた時代はこのような乗り物を作って地球の外に出るんです」
と、説明すると織田信長は嬉しそうに見つめていた。
それは、よくテレビで放送されているような昔の映像のように、初めて月に人類が降り立つ中継を見守っている少年の顔のようだった。
織田信長はロマンチストだ。




