第452話 1600年元日
俺は珍しく犬吠埼で初日の出を拝んでいる。
太平洋に突き出た切り立った岬には、海洋国家を目指す俺の政策で灯台がある。
ミニ天守みたいな灯台の上から180度に広がる太平洋を望ながら水平線から上がる一筋の明かりを見つめ、夕闇が朝日に輝く瞬間に祈りを込め拝んだ。
「祓いたまへ清めたまへ守りたまへ幸与えたまへ」
深く深く頭を下げ祈りを捧げる。
初日の出のあと、鹿島神宮・香取神宮・息栖神社三社初詣を身分を隠してお忍びで参拝する。
三社は大変賑わい、露天商も出ており達磨などが並んでいた。
最後に寄った息栖神社の露天で達磨を買う。
「へい、お客さん、名前入れるんで教えてくんね~」
と、露天商のオヤジ。
縁起物に偽名もいやなので、
「黒坂真琴だ」
「へい、へい、黒坂と、まことはどう書くねぇ~、右大臣様と同じ名前って右大臣様の出世にあやかってかい?」
「ははははは、そうだな、出世したいな。名前は右大臣様といっしょだ」
「そうかい、いっしょかい、きっと出世するだろうよ。ほら出来上がった。右大臣様のおかげで安心して商売出来るようになったんだから、良い世の中だよな。お客さんも黒坂様に仕えると良いよ。働き手求めてるらしいからね」
「そうかい、考えてみるよ。ありがとうね」
後ろで護衛の忍びが笑いを堪えていた。
まぁ仕方がないが、神社の参堂の賑わいと町民の生の声が聞けて満足の初詣になった。
この繁栄をいつまでも続くように俺は働かねばなと改めて心に決める幕開け。




