第448話 新戦艦・武甕槌練習航海~樺太その3~
雪降る津軽海峡を抜け、北海道を右手に見ながら北上する。
何度目になるだろうか、同じ景色を望みながら進むが違っているのはいくつもの木造輸送船とすれ違った。
海路が発展している証拠であった。
樺太や北海道で加工された海産物が南に送られ、米など穀物を北の地に運んでいる。
南北は持ちつ持たれつの関係の構築をしている。
しかも、樺太の北条は北条を名乗っているが俺の子供だ。
不公平な取り引きは出来ない。
アイヌ民の長も俺の側室、そうなれば足下につけ込んだ不公平な取り引きをする無謀な勇気を持った者は出ない。
そんな輸送船を見ながらひさびさの樺太島留多加港に入港した。
見たこともない煙を出しながら走る蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦に、守備兵が慌てふためくが俺の家紋の旗を見ると何か納得しているようだった。
ひさびさの地に足を下ろす。
港は大小さまざまなドーム型の家々が無数に作られ、大きく繁栄しているのが見て取れた。
日本でありながら日本ではない景色だ。
サラサラとした雪に足跡を付けながら進むと、守備兵の出迎えがあった。
「右府様、右府様だ~、右府様、御自らのお出ましだ~」
と、言うと守備兵が集まり雪が積もっているというのに片膝を着く兵士達。
「皆、出迎えご苦労、今回は息子達の様子を見に来ただけだ、案内頼む」
「はっ、すぐに馬引きの艝を用意します」
と、俺が常陸国で使っている馬車の艝バージョンが用意された。
鶴美が作らせたのだろう。
二頭引きの5人が座れる艝に乗る。
足が太く体のでかい馬が白い鼻息を荒々しく出しながらゆっくりゆっくりと進む。
熊除けの鈴をチャリンコリンと鳴らしながら。
樺太城に入城をした。




