第379話 茶々と湯治・袋田の温泉
紅葉は過ぎ去り少し時季はずれ、そんな領地の常陸国内には意外にも古くからの温泉がある。
それは日本三大瀑布がある袋田の滝の近くにある温泉、袋田温泉だ。
そこにいつも留守番ばかりで俺の代わりを勤めてくれて忙しい茶々を連れ湯治に行く。
側室たちもそれは理解してくれ、変わりにお初が代理の代表となり、
「仕事は任せて」
と、見送ってくれた。
武丸を連れて行こうとすると、動物達が心配だからと言う。
ん?小さいながら遠慮するのか?
常陸国内は山内一豊の街道整備が続き、山間部の袋田温泉も水戸城、もしくは笠間城で一泊するくらいで行けるようになっている。
霊柩車みたいな馬車に揺られ、10人ほどの護衛の兵だけで行く。
馬車の中にはこたつを設置して温かい。
領内は、産業発展で下々の民まで毎日三食食べられるくらいに裕福になったせいか、敵対心など持つ者はおらず、
「次の城下まで御守りしますべ、ごじゃっぺなことするやからなんか、俺達がくらつけてあおなじみだらけにしてやっから」
(くだらない狼藉する者あれば俺達がぼこぼこにして打ち身だらけにしてやる(茨城弁))
などと農民が護衛になってくれるくらいだった。
自分の政策が成功していると感じる瞬間だ、素直に嬉しい。
水戸城に泊まると、やはり火が通された魚料理だ。
常磐物の魚も近くの大洗から容易に手にはいるはずなのに残念。
山内一豊夫妻、ん~山にやはり移そうかな。
次の日には袋田温泉に到着する。
夕方なので流石に袋田の滝は見には行かない。
この時代、袋田の滝を見るための観光トンネルはなく、山道。
天気の良い昼間に行かなければならない。
その日は、袋田の滝から流れ出る音を遠くに聞きながら茶々と川縁の温泉に浸かる。
「いつもすまないな」
「えぇ、本当に大変ですよ」
「ははは、ごめんなさい」
「でも、楽しいです。それに」
「それに?」
「あの猿顔と結婚する未来があったかと思うと今の苦労など笑える楽しさですよ」
「え?知っていたの?」
「はい、部屋を片付けいた際、『ららぶ』なる真琴様の書物を読みまして、書いてありました。淀城跡地など書かれた所に書いてありましたから」
『ららぶ』は、俺がこの時代に持ってきた旅行雑誌だ。
「なるほどね、見たのか。だが、もうあの書かれたような未来は来ないさ。あれは俺がこの時代にいない場合の未来。今は俺が変えに変えてしまっている」
「はい、わかっております。良い未来が作れるように私達は協力しますよ」
「ありがとう」
と、頭を下げるとぴったりくっついてくる茶々。
久々に甘えて来た茶々としっぽり・・・・・・。




