表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/1172

第35話 ジャンクフード

 俺は無性にある物が食べたい。


マヨネーズではない。


マヨネーズを今語ったら、赤鬼と青鬼の双子の鬼の界隈の信者に怒られそうな気がする。


俺が食べたいのは唐揚げ、フライドチキンでもいい。


白い顎鬚の紳士が作ったフライドチキンなどとは贅沢は言わない。


シンプルで良い、唐揚げを食べたい。


安土桃山時代に来て半年、これほど唐揚げを食べてないのは俺の人生で最長だ。

最長記録更新中だよ。


コンビニに行ったら毎回レジの脇の串に刺してあるやつ、紙パックに入ってるやつを買っていた俺なのに。


もう食べたくて、食べたくて、どうしようもない。


禁断症状が出て鳥肌になりそう。


「よし、作ろう」


そう思い、下働きをしている住み込みの桜子に遣いを頼んだ。


鶏、ニンニク、ショウガ、胡椒、酒、油。


この中で一番高いのは何でしょうか?


知らなかった。


平成では100均ですら大瓶で存在するのに、胡椒がそれくらいの量で恐ろしい値段がするとは。


リバーシーの売り上げの半分くらい使ったらしい。


家建てられるとか、どんだけ高い調味料なんだよ。


今井宗久、口利きで手に入れてきたらしく芸術品と言えるようなビードロの瓶に入っていた。


と、鶏は?


・・・・・・庭に二羽の鶏が歩いていた。


生きているのね。


これ俺がさばくの?


と、思っていると、梅子が捕まえて、薪を割る台の上で勢いよく振り上げた出刃包丁で鶏の首を斬った。


家の食卓に出てきた鳥って毎回そうしていたの?


逆さにして血抜きをしたあと毛をむしり出す。


唐揚げ作るのをやめたくなってしまったが、とにもかくにも唐揚げが食べたい。


ここは欲求に忠実に生きようと、心に決め見ないことにした。


しばらくすると庭を歩いていた二羽の鶏は、肉の塊となって台所に持ってこられた。


「さて、これをいかがしますか?」


と、桜子、梅子、桃子が指示を待っていた。


あくまでも俺には、調理をさせないらしい。


それは家で働く下働きの者としてのプライドなのだろうか?


「じゃ~とりあえず鶏肉はぶつ切りで良いかな」


と、言うと手早く解体が始まる。


桃子には別の指示を与えた。


「酒に塩と摺り下ろしたニンニク、ショウガ、胡椒、を入れて適当に混ぜて」


と、漬けダレを作ってもらう。


醤油がまだないらしいので今日は塩唐揚げでいこう。


ぶつ切りになった鶏肉にその合わさったタレに入れてもらい、軽くコネコネと練ってもらい、しばらく漬け込むことにした。


約4時間漬け込んだのちに、そこに石臼で粉にしてもらった小麦粉を投入、さらにサクサク感が欲しいので、片栗粉も投入してもらった。


だんだん形になる唐揚げ。


最後は揚げの行程だ。


竈で揚げ物とは難しそうで火鉢に並々に菜種油が注がれた鍋をセットしてもらい、そこで揚げる。


油が程よい温度になったか衣をつけた箸を入れてもらうとプクプクと泡が出てきた。


「じゃ~、その肉を少しずつ投入して」


と、言うと五切れほど投入される。


ジュワ~~~~~と、油の泡が立ち上がると、香ばしく良い匂いが広がる。


これだよこれ、この匂いだよ。


よだれが口の中に溢れ出す。


鶏肉は少しずつ狐色にこんがりと化粧されていく。


美味そう。


泡が静かになったころ合いに出してもらった。


味見と称して一つ皿に乗っけてもらう。


我慢できない。


勢いよくかぶりつく。


「あち~~~ほふほふほふほふ」


美味い。そりゃ~平成の唐揚げのようにまではいかないけど、美味い。


間違いなく唐揚げと呼んでいいレベルの物が完成した。


熱々をむしゃぶりつく俺を見つめる、桜子、梅子、桃子にも食べるように命じると、揚げたてを少し口に運んだ。


「旦那様、大変美味にございます」


「旦那様、これはなんですか?」


「旦那様、このカリカリした食感が美味しいです」


と、喜ぶ三人。


残りの鶏肉も全部揚げてもらった。


四人で全部食べつくす。


「ふぅ~美味かった、これは唐揚げって食べ物なんだよ」


と、教えた。


「唐揚げ、至極の一品にございました」


そう言う、桜子、梅子、桃子の唇は油でテカテカしておりグロスを塗ったかのようで美味しそうだった。


この日から唐揚げは度々作られるようになる。


ただ、胡椒は家の家計をひっ迫させそうということなので山椒に変えてみたが、それはそれでさっぱりとしたピリリ感があり美味かった。






原作11巻5月25日発売

発売初週売り上げオリコン☆9位☆

オーバーラップ文庫

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

電撃コミックスNEXT

5巻4月26日発売

挿絵(By みてみん)

電撃コミックスNEXT


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i621522 【書籍版案内】 最新情報オーバーラップ文庫公式サイトへは画像をクリック i533211 533215 i533212 i533203 i533574 i570008 i610851 i658737 i712963 本能寺から始める信長との天下統一コミカライズ版☆最新情報☆電撃大王公式サイト i533528 i533539 i534334 i541473 コミカライズ版無料サイトニコニコ漫画
― 新着の感想 ―
[一言] この時代の胡椒とかスパイス類はな…それこそヨーロッパでは貨幣の代わりになる程の価値があったし、それくらい貴重な品なんだよね。 あと唐揚げのお肉はぶつ切りではなく一口大の大きさに切った方が火が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ