第286話 留多加港
次の日の朝、船を下りると留多加港を見て回ることにした。
宗矩がまだ戻ってきていないので内陸に入るのは遠慮してくれと、護衛の佐々木小次郎が言うので従う。
留多加港は丸太で作られた物見櫓と、板張りの簡素なと言うか見窄らしい板張りの小屋が並んだ小さな町だった。
小屋も内見すると、隙間から日が差し込んで来ているのがわかるほどの小屋。
小屋の真ん中では囲炉裏があり、それでひたすら冬場を凌ぐという。
こういう事を想定して、黒坂家自慢の左甚五郎率いる大工集団を連れてきた。
「甚五郎、すぐにパネル工法型住宅を建てる準備に取り掛かってくれ、幸い木材は豊富なようだからな、北条の者はすぐに人手を集めよ、冬風が吹く前に何軒か完成させたい」
「殿様、もちろん殿様が考えたパネル工法は隙間風も少なく、工期も短くて出来るのですが、ここ、風強そうですよね。冬はもっと過酷な風が吹くのでは?雪も多そうで重みに耐えられる物が出来るかどうか」
と、言う。
「今までの一般的な家だと、耐えられぬか?」
「飛ばされるかもしれねえと、思います」
「よし、三角形のパネルを大量に作ってくれ」
「はぁ!殿様、なぜに三角形なんですか?」
と、不思議がる左甚五郎に絵を書いて見せる。
「こっこれは、画期的すぎる!こんな家考えもつかなかった、流石に織田家の鬼才の軍師の二つ名を持つ殿様だ」
「この形状なら、雪や風にも強い、すぐに始めてくれ」
そう、指示を出すと左甚五郎は北条の大工の工房で既に伐採され乾燥させている木材を使い、三角形パネルを作り始めた。
俺が作る新たなる家の工法は、この時代の常識を逸脱している物だ。
平成時代歴史線でもなかなか見ない工法だが、311後災害に強く比較的安価で短期に作れるこの工法は注目されだしているものだ。
それを俺はこの北の大地の基本的工法建造物にしようと、船中で考えていた。




