第282話 樺太へ出港
北条氏規は水先案内人になる者を二人、鹿島港に残して先に帰って行った。
俺は準備をすると共に伊達政宗に『同行しないか?』と、誘いの手紙を書き義康に届けさせる。
お江が、
「私も付いていくからね」
と、準備をしている俺に言う。その後ろには小糸と小滝とラララとリリリもいる。
「お初に言われたか?まぁ、戦に行くわけではないから連れて行っても良いが、ラララとリリリは残れ、冬まで逗留する事になったら常陸の国の冬より厳しい地になり大事になりかねないからな」
「そんな事ないですです」
「そんな事ないっぺ」
と、返事をするがこれは毅然とした態度で断った。
後々、茶々が言いくるめてくれたようだ。
一週間ほどで伊達政宗から、
『海の外を一度見てみたいと思っておりました。是非とも同行させて下さい』
と、返事が来たので仙台の港で待つように早馬で知らせを走らせた。
俺が所有する南蛮型鉄甲船三隻に、じゃが芋、蕎麦、小麦、大麦、粟、稗、とうもろこし、小豆、大豆などを出来る限り載せさせる手配もする。
そうやって準備をしていると、左甚五郎も大工達を集めて集結する。
準備が整った所で、茶々達を広間に改めて集める。
「茶々、また留守を頼むことになるがよろしく頼んだぞ」
「このような事が真琴様の御役目なのはわかっております。北の地に富国強国になる基盤作り、存分にしてきて下さい」
と、茶々。
「皆、留守を頼む」
「ちゃんと帰ってきなさいよね。それまで城守っているんだからね」
と、お初。
一児の母になってもツンデレは抜けないのね。
俺は子供達を順番に抱きしめる、すると今まで言葉をほとんど発しない武丸が、
「ちっち、ちっち、ちっち、うえ」
と、初めて父と呼んでくれる。
「武丸、お仕事行ってくるからなあ」
彩華は言葉が上手、
「ちちうえ、かえってきて」
と、言ってくれる。
「帰ってくるから母上達の言うこと聞くんだぞ」
仁保も言葉が上手、
「ちちうえ、きをつけて」
「はいよ、仁保も風邪ひくなよ」
那岐と那美はすやすやと寝ていた。
「では、行ってくる。皆、頼んだぞ」
と、俺は茨城城から出立して鹿島城から船に乗船し出港した。




