第273話 試作耐熱煉瓦
陶器を作る職人達に任せてある耐熱煉瓦の試作品が届いた。
それを組み上げ試作となる小さな新踏鞴を茨城城の城下の開けた水辺で制作する。
燃料となる石炭は俺が石炭炭鉱開発を勧めた伊達政宗が大人員で採掘を開始し、早々に掘り当てた。
常磐炭鉱だ。
その石炭が、見聞してくれと届いたのでそれを利用する。
新踏鞴の形はひたちなか市で平成時代に見た物を再現。
幕末期に作られた反射炉だ。
それのミニバージョンで高さは2メートルほど。
組み上げて完成した試作反射炉に責任者である国友茂光が火入れをし、どんどんと石炭をくべ火力を上げていく。
真っ黒い煙をもくもくと上げながら、炎は燃え上がると
「まさか、石ころが燃えるとは」
と、驚きの声が職人達から上がった。
「この黒い石は石炭という。太古の昔、植物だった物が地中に埋もれ長い年月をかけて、このように変化した物だ」
と、俺が説明すると家臣達は不思議な物だと、手に取り石炭の黒く鈍く光る輝きを見ていた。
火力はどんどんと上げられ鞴で風が送られる。
成功に思えた瞬間、
ドドドドドドドッ
と、もろくも崩れ落ち、あたりは一面熱気と煙に包まれた。
家臣達は慌てている。
俺は力丸が近づくことを許さなかったため少し離れた場所から見ていたので、
「逃げろ、とにかく逃げろ、消火など後回しだ、逃げろ」
と、声をありったけ出す。
2時間した後、遠くから盥リレーで消火をすると、崩れ落ちた試作反射炉が見えた。
「けが人はいないか?死人は出ていないか?」
と、かすれる声で周りに聞くと、皆は全身を真っ黒にしながらも立っていた。
「御大将、軽傷の火傷の者はおりますが、大事ありません」
と、力丸が言う。
当たりは静まり黒い顔がさらに暗くなっている空気を感じた俺は、
「ははははは、そうか、大事ないか。一回で上手くいくなど思っていなかった、皆、大事ないことを喜べ、失敗は成功の元、この度のことで誰かが責任をとって腹を斬るなど許さぬからな」
と、俺が言うと
「次こそは必ずや成功させて見せます」
と、国友茂光。
「いや、次などとは期限は設けない。安全を確保しつつ試作を続けてくれ」
「なんとも慈悲深きお言葉で」
と、真っ黒い顔を袖で拭う茂光。
「しかし、この煉瓦、もったいない」
と、積み残っていた試作耐熱煉瓦を見る力丸。
「いや、使い道はある。城に運んで組み上げてくれ」
「御大将、何に使われるのですか?」
「料理に使える、そのくらいの火力までなら耐えていた様子だし」
「え?これで竈ですか?」
「まあ、良い物が作れるから」
俺は燃え上がる炎を見ながらある物が食べたくなっていた。
俺は食欲がほかの欲よりも勝っているようだ。




