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第21話 曜変天目茶碗

 俺は人を斬ったあの日から昼間は、護衛の兵を相手に剣術を殺人術に高めるために稽古をしていた。


剣術としての基礎はできていたためそれほどの苦労はなかった。


俺が稽古を受ける立場から俺が稽古をする立場になるにはそうは時間を必要とせず、実家の道場で師範代だった経験が役に立った。


ヘトヘトにはなるが、人を斬った苦悩をまぎらわせるのにはちょうど良かった。


お江、お初は相変わらず遊びに来る。


茶々はそれに付いて来ては、少し離れた所で見守っていた。


8月になって一段落した織田信長が帰ってきて、俺は茶室に呼ばれた。


「聞いたぞ、お市の娘達を助けてくれたそうだな、わしからも礼を言う」


そう言って、茶を点てた。


織田信長が点てたお茶が俺の前に出される。


一般的な作法しか知らず少したじろんだが、織田信長がそれを気付いたのか、


「貴様に礼儀作法など求めん、好きに飲め」


と、言うので口に運んだ。


抹茶の良い香りが口に広がる。


クリーミーな泡が喉ごしが良くすんなりと喉を通り、抹茶だと言うのに甘味のあるお茶だ。


「美味い」


思わず口に出してしまった。


「ハハハハハ、そうか美味いか!正直で良いな、みんな難しい顔をして「結構なお手前で」ばかりでつまらん」


そう言って、二杯目の茶をたてる。


「顔が変わったな、いや、目が変わったな」


その言葉にドキリとした。


「人を初めて斬りました。殺しました」


「そうか、貴様の時代では人は斬らぬか?」


「はい、帯刀その物が禁止されていますから、身分関係なく」


「平和な世なのだな」


「はい、日本に関して言えば世界でも有数な平和な国です」


そう言うと、織田信長は二杯目の茶を出した。


量は先程より少なく、濃い茶、しかも熱い。


ゆっくりと飲む。


「わしはそんな国をつくりたいのだがな、協力してくれぬか?」


ごくりとお茶を飲み干すと、俺は静かに首をたてに振った。


「人斬りが、戦が必要にならない国をつくるなら」


俺の決意の目を織田信長はマジマジと見ていた。


「武将になったな」


そう言って、先程より使っている茶碗をゆすいで空になった茶碗を俺に差し出した。


それには何がなんだかわからなく首を横に傾げると、


「褒美じゃ、名物『曜変天目茶碗』、お市の娘達を助けた礼だ」


茶碗の良し悪しはわからない。


だが、名前くらいは知っていた。


確か国宝だったのでは?


俺はそんな茶碗でお茶を飲んでいたのか?


割ったら大変な事になるのでは?


「信長様、猫に小判、豚に真珠でございます」


「猫に?豚?」


「この茶碗は未来では国の宝になっていますが私には価値がわかりません、どうかこの茶碗は価値のわかる者におあげください」


機嫌を損ねるかとひやひやしながら言った。


だって、俺が受けとってこのあと割ったりしたら国宝なくなっちゃうじゃん。


「ハハハハハ、そうかそうか、この茶碗と城、国を同価値と見るものが多いのにな、貴様には極々ありふれたものにでも見えるか?まぁ良い、持っておれ、貴様が誰かに渡す使い方もあるからな」


「ですが、割ったりしたら」


「もはや貴様のだ、受け取らぬならこの場で割る」


そう言って、腰の鉄で出来た扇子を手にした。


「あ~わかりました、貰いますから割らないで下さい」


「ふっ、そうか」


と、言って扇子をしまった。


気短と言うのか気難しいと言うのか、織田信長、困った人だな。




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