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第20話 苦闘

 いつものように迎えた朝、夏の日差しが強く強く入ってくる。


不思議と何時もよりやたら眩しく感じた。


暑いが布団にくるまり、汗を流しながら震えていた。


手や体には返り血などは着いていないが両手を布団の隙間から入ってくる日差しで見つめていた。


そして、ガタガタと震える。


人を斬った感触、皮膚を脂肪を肉を骨を斬った感触が染み付いているように思えた。


斬った、殺してしまった。


もちろん、あの子達や力丸を助けるための正当な防衛手段なのはわかっている。


平成の価値観ではダメな事だって。


でも、恐かった。いや、恐ろしくなった。


自分が。


す~~~


っと、襖の開く音が聞こえた。


お江か?お初か?


小さな手が俺の背中を優しく触っているのがわかった。


「舐め舐めお化け、具合い悪い?」


「お江、今日はそっとしといてあげましょ」


「はい、初姉様、また、あしょぼうね、舐め舐めお化け」


いつもと変わらない幼女二人に俺は驚いた。


昨日、あんな目にあったのに平気なのか?と。


彼女達にはこれが日常?


すると、また襖の開く音が聞こえた。


小さな足音が聞こえている。


戻ってきたのか?


と、足が俺の顔近くに入ってきた。


いつもより少しだけ大きな足。


「黒坂様は足を舐めるのがお好きだと聞いたので不本意ながら舐めさせてあげます」


いやいや好きなわけではなくてイタズラだから。


布団から顔を出すと茶々だった。


「舐めないのですか?」


舐めないのも癪だから舐めてみた。


いや、ベロベロドロドロに舐め回した。


くつぐったそうに身悶えする茶々が、


「妹達を助けてくれてありがとう御座いました」


そう言って、足を引っ込めそそくさと部屋を出ていった。


振り向き様の綺麗な恥じらいの赤くなった顔に少しだけ見とれてしまった。


俺は活動停止、フリーズしていると、昨日、火縄銃を二発撃っていた女性が入ってくる。


「失礼します、黒坂様」


布団から飛び起きた俺。


歳上の女性が入ってくるのに布団にくるまったままでは失礼だと思った。


「あ、お気になさらずにそのままで」


と、言いながら布団の近くに座る女性。


「織田信長が妹、お市と申します。茶々達の母親です。昨日は本当にありがとう御座いました」


そう言って三指を畳みにつけてお辞儀を深々としていた。


「頭をあげてください」


そう俺が言うと頭をあげた。


「あの~力丸は?」


気になっていた。力丸の安否が。


「幸い傷は浅かったので大丈夫です。薬師が言うには一月程でもとの生活に戻れるとの事です」


「そりゃ~良かった、で、昨日のあのもの達は?」


「黒坂様が斬った二人は即死、私が撃ったのが一人即死、残った二人は火炙りにいたしました」


火炙り・・・・・・。


驚いた。


本当にあるんだ、いや、ヤるんだと。


そして、再び自分の手を見つめてしまっていた。


俺、二人斬り殺したんだなと。


すると、お市様が俺の手を握った。


「人を斬ったのは初めてですか?」


「はい」


「そうですか、あなた様は今、気を病んでおりますね?それは人として正常だと思います。私達、戦に携わった者は当たり前になってしまいましたが」


「お市様も斬った事が?」


「あります、小谷城で身を守るのに斬りました。無我夢中、ですがこれが戦国の世に生まれた定め、敵は斬らねば自分が斬られます」


改めて戦国の世の価値観を聞かされた。


「黒坂様、人を斬ることが当たり前になってはいけません。ですが、自分を人を守るときは躊躇していては黒坂様が斬られます。昨日は黒坂様のおかげで娘達や力丸は助かった、どうかその事だけはわかってください」


そう言って再び深々とお辞儀をして出ていった。


俺は祖父の言葉を思い出していた。


「真琴、剣は凶器、剣術は人を殺す技、しかし、その剣が盾となり、その剣術が人を守る技にもなる、忘れるな、人を守るときは躊躇するな、斬りかかってきた者は人と思うな邪鬼と思え、わしはそうやって戦争を生き抜いた」


平成で人を斬ることはないだろうと思っていたが、まさかタイムスリップをして斬ることになるとはと思った。


俺は立ち上り、庭に出て登った太陽を拝んだ。


斬った者への供養を込めて。


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― 新着の感想 ―
久々に読み返していますが、宣伝が多くて読みづらいです。 テンポよく読めないので途中で読むのやめてしまいました。
[一言] 所詮は刀も剣術も、人を殺める為の手段でしかない。 だが手段ゆえに使い方によっては、人を殺す「殺人剣」ではなく人を活かす「活人剣」にもなる。 何の為に剣を振るうかはソイツの心次第よ。
[一言] なめなめお化けはともかく、厳しくて悲しい時代ですね。
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