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第176話 狩野永徳と萌え



 梅の花が咲き誇り良い季節になり出したころ、部長と表現したくなるくらいの40代後半くらいの熟年のおじさんが城に尋ねてきた。


力丸が、広間に待たせてあると言うので、会いに行くと10名ほどが座って頭を下げていた。


「黒坂常陸であるが、何ようかな?」


「お初にお目にかかります。絵師、狩野永徳と申します。後ろにいますは我が門下の絵師にございます」


「おっおぉ、聞いたことありますよ、確か、洛中洛外屏風絵図が有名な絵師ですよね」


洛中洛外屏風図は織田信長が、上杉謙信に送ったプレゼントで、史実歴史の平成では国宝、山形の米沢の博物館で公開されたりしている。


一度、現物を見たことがあるが金の雲がかかる京都の町の中を、細かい人々が描かれ、当時の生活を窺える資料としても一級品の芸術作品。


その人々を注意深く、よくよく見ていると時間を忘れそうなくらいになる。


狩野永徳はその他にも、唐獅子図屏風なども有名で、安土城、聚楽第、大坂城などの襖絵・障壁画を製作している。


この時代の名画家だ。


「上様の命により、城の襖絵を書いてこいと命じられましてございます」


「あぁ、なるほど」


織田信長、俺の待遇良すぎ。


これはもう絶対に裏切らせないようにしている気がする。


まぁ、謀反など起こすつもりは微塵もないが。


「襖絵、何を描きましょう?ご希望がなければ中国の古事から絵を描き致しますが」


「ごめんなさい、中国の古事とかまったくもって興味なくて、できれば美少女を描いて欲しいのだけど」


「はっ、はい?美?美少女?え?」


そりゃ戸惑うよね。


狩野派の絵図でそんな物残っているの見たこともないし、大概、中国の仙人だか、名軍師だかのおっさんや、唐獅子などの想像の生き物、孔雀などの鳥、煌びやかな花が描かれているのだから。


「そうだね、四季の花々と一緒に天女を描くと言えばわかるかな?」


「天女、三保の松原とかを描けばよろしいわけですね」


「あぁ、良いね、海と羽衣と松と美少女、良いねー」


「わかりました。期待にこたえられるかわかりませんが、一所懸命描かせていただきます」


「茶々達に見つからないように注意してね」


「え?」


「茶々達に見つかったら間違いなく反対されるから、工房は、左甚五郎がいる廓の隣に用意させるから」


「なんとも密命のような注文で」


「密命と言うほど、大げさな物ではないけど、俺の趣味を理解はしてはくれないと思うから、で、茶々達が使う部屋はごくごく普通の花鳥風月でよろしくお願いします」


「はい、常陸大納言様が使う部屋や広間などには天女を描き、お方様方が使う部屋は花鳥風月、わかりました」


「天女は出来るだけ、のっぺりとした顔ではなく、凹凸のある異国の少女のように描いて欲しいのだけど」


「これはまた難しき注文、絵師として腕が鳴りますが、南蛮の女でございますか」


そう注文しとかないと、壁一面、能面のような顔の女がいっぱいになってしまいそうで、そうなれば夜はホラー。


萌えとは程遠くなる。


自分で発注しておいてなんだが、大丈夫なのか?うちの城?


やりすぎたか?


いや、平成の美少女フィギアいっぱい、美少女ポスター、タペストリーいっぱいの俺の部屋の城バージョン。


せっかくなんだから作ってしまおう。


萌え文化の聖地にしてくれる。




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― 新着の感想 ―
[一言] あんた、狩野永徳一門に何を書かせるつもりだぁーーーーー。 ナイスです。
[一言] じいちゃん泣くぞ
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