第160話 武田流築城術
「幸村はいるか?」
と、部屋の外で待機している政道に声をかけると、
「真田殿は畑に出ておりますが」
「急ぎの仕事でなかったら城に戻るように伝えて、くれぐれも自分の仕事優先で良いから」
と、政道に頼んで城に戻ってくるように伝える。
真田幸村、現在、うちの農政奉行を任せている。
真田幸村本人は史実では築城はしていないが、大坂城の欠点を補うため、出城である真田丸を作って徳川方の攻撃を防いでいたり、武田流築城術を活用しているところがある。
幸村になら築城の知恵はあるはず。
しばらくすると、泥だらけになりながら里芋を笊に一杯に入れて帰ってきた。
「御大将、今年の里芋の最後の収穫です。どうです、良い出来でしょう」
「おお、なかなか良い里芋、夕飯に茹でた里芋に味噌と細かくした鶏肉のタレをかけて食べたい、台所に運んでくれ」
「はい、わかりました。そうそう御大将、御用とか、ついでに行水してきますのでしばらくお待ちください」
と言って、幸村は里芋を台所に持って行ったあと行水をして着替えて、俺の部屋に来た。
「何でございましょう、尻は念入りに洗ってきました」
「うっ、尻うんぬんは必要ないから」
なにを言い出すのか幸村、BLルートは俺にはないぞ。
「城を常陸に建てたいのだが、真田の、いや、武田の築城術を活用したいと思ったのだ」
「なるほど、私よりも父・昌幸のほうが詳しいです。私はあまり、真田家も先の戦いの功績で上野一国をいただくこととになりました。すぐ常陸国の隣、手伝いを依頼することもできますが、御大将、武田流築城術など過去の物でしかありません」
「過去の物?」
「はい、御大将は戦の在り方を大きく変えられました、その変えてしまったものは、あの圧倒的火力。武田流築城術は足軽、騎馬武者との合戦を想定した物。戦い方が違いすぎてお役には立たないかと思います。一応、父には連絡はしておきますので」
と、退室していった。
なるほど、過去の築城術ではこれからの戦い方では役には立たない?
でも、圧倒的火力との戦いとなる戊辰戦争で会津若松城は一か月間耐えたんだよな。
天守は砲弾で穴だらけになるけど・・・・・・。戊辰戦争・・・・・・火器での戦を想定した城。
あっ!
俺はある形の城を思い出した。
それを絵図面に書きだす。
火器戦を想定した城の作りで有名な城がある。
これを作ろう。
 




