第150話 常陸決戦前編
1586年8月14日
北の幕府方が坂東平野の北端に布陣を完成させていた。
久慈川北側、川岸に伊達政宗重臣・伊達成実が8000の兵を率いて布陣。
海岸に近い村松山虚空蔵堂に相馬義胤が8000の兵で布陣。
少し北側の小高い山の大甕神社付近に本陣の伊達政宗隊16000が布陣している。
数の上では100000の軍勢を集めている佐竹に対して不利な状況ではあるが、海上にはおおよそ200年先に登場するような兵器の南蛮型鉄甲船30隻が待ち構えている。
南蛮型鉄甲船に大量に積まれている大砲を40門を降ろして伊達・相馬の陣配備を進めた。
この戦いは今までの戦国の合戦とはまったく違う戦い。
織田信長自身がそれを望んでいる。
この戦いで最後にしたいのだろう。
強大な軍事力を見せつけて大軍を小軍で蹴散らしたいのだ。
それは奇襲や夜襲などというものではなく、陣を張って真正面に衝突する戦いだからこそ意味がある。
俺はそれに少しでも助力しようと伊達政宗本陣に行くと信長に進言した。
「ならん、常陸、貴様は戦を間近で見るな、血生臭く怨念飛び交う戦場など、貴様が見る物ではない。貴様のその力と未来の価値観、間違いなく心が病む。力丸、常陸を縛り上げろ」
怒っているわけではない信長、しかし、しっかり目を見て俺に訴えてくる。
その目はたまに見せる父親が子供に言い聞かせるような目であった。
「御大将、御免」
と、言われ俺は縛られキング・オブ・ジパング号の信長の居室に監禁された。
外の様子などが見えないよう陸側の戸は閉められていた。
「覚悟は決めていたんだけどな・・・・・・」
 




